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「新・くらしと健康の権利宣言」全生連創立40周年記念「権利手帳」(憲法をくらしに)より全国生活と健康を守る会連合会



1 はじめに

 全国生活と健康を守る会連合会は、1994年11月20日、
創立40周年を迎えました。この間、人間らしい生活=生存
権要求をかかげて国や自治体に、くらしに必要なたくさん
の制度を実施・改善させてきました。
 全生連・生活と健康を守る会は、最近でも、92年4月に
は白内障・眼内レンズヘの保険適用を実現させたり、国民
健康保険料(税)を各地で引き下げてきています。秋田の
加藤さんと京都の柳園さんの生活保護人権裁判では93年に
全面的に勝利しました。そして94年9月には、国に生活保
護でのクーラー(ルームエアコン)保有を認めさせまし
た。全生連は、きびしい攻撃のもとでも草の根からの全国
的な運動によってこのように歴史を切り開く画期的な成果
をあげてきました。
 私たちは、1976年7月、「くらしと健康の権利宣言」
を発表しました。その後、長年にわたる生存権保障の運動
の実績や教訓にもとづき「新・くらしと健康の権利宣言」
をここに発表します。そして、21世紀にむけ、“人間が人
間らしく生きることのできる社会”をめざして、「新・権
利宣言」を高くかかげて、あらたな前進へと奮闘するもの
です。


2「権利宣言」の大事さを
  しめす状況

 昔は「ケガと弁当は手前持ち」と、貧乏は本人の責任と
言われました。しかし国民はだれ一人として、自分から好
んで失業・倒産したり、病気やケガをする人はいません。
いずれも直接・間接を問わず社会的・政治的な原因によるも
のです。
 国連の「世界人権宣言」(1948年)でも「すべて人間
は、生まれながら自由で尊厳と権利について平等である」
「すべての人は社会保障を受ける権利を有する」「何人
も、生存、自由、および身体の安全を享有する権利を有す
る」とのべているように、生存権をはじめとする基本的人
権は、国や大企業の責任と負担において社会的に保障すべ
きことを明らかにしています。
「世界一の金持ち国」と言われているこの日本で健康保険
証の未交付・取り上げによって病気になっても、医者にか
かれなかったり、生活費がなくなって、福祉事務所を訪ね
ても申請用紙すら渡されないことが、日常的・一般的にな
っています。
 また「過労死」や大企業の海外進出(産業空洞化)や企
業合理化による失業の増加、行政しめつけによる人権侵害
死・孤独死、自殺や一家離散など深刻な事態が広がってい
ます。
 それは80年代いごの自民党政治と、それを引きつぐ連立
内閣が強行する臨調(臨時行政調査会)「行革」路線によ
る軍備拡張、アメリカと大企業中心の政策のためです。こ
うして、福祉・教育が切りすてられ、くらしに困り人間と
して生きる権利の侵害に苦しむ人びとはふえつづけ、貧富
の差が広がってきています。
 歴代の政府は、国のやることは外交と軍事であって、国
民には国の責任をなげすてて、自分のことは自分でせよ、
国や行政にたよるなと「自立=自助」「相互扶助」をおし
つけています。
 自民党政治を継承し、おしすすめる連発内閣は憲法25条
を全面的にふみにじる「21世紀ビジョン」や「社会保障将
来像」を打ちだしています。このなかで自分のことは自
分・家族でやり、国民どうしの負担によって支えあうとい
う「相互扶助」を“社会保障の心”とする考えや思想を国
民のなかに強くうえつけようとしています。
 そのために、次からつぎへと各制度を改悪し、生活保護
や国民健康保険、就学援助などのしめつけをいっそう強め
ながら、年金や医療保険では、ポーナスや生活用資産にも
保険料(税)をかけ、入院給食費や薬代などを患者負担と
したり、介護も国民が負担する介護保険にすべきだとして
いるのです。



3 くらしと健康を守る
  5つの原理と
  権利要求の10原則

 日本国憲法や世界人権宣言にあるように、動物とちがう
人間は、自由で独立した人格の担い手であり、人間として
の権利(人権)を平等に持っています。
 しかし、現実の社会では、貧富や性別、年齢、健康、環
境などがちがい、自由や人権が保障されても、それを使う
ことのできない人びとがたくさん生まれます。
 生存権とは、人間としての権利や尊厳を差別なく、平等
に保障し、人間らしく生活のできるようにする権利で、あ
らゆる人権の要(かなめ)です。憲法では、第25条をはじ
め、教育権(第26条)、労働権(第27条、28条)、幸福追
求権(第13条)などで生存権を保障しているのです。
 私たちは「一人の生命は全地球より重い」と最高裁判所
でも判決したように、すべて国民が人間としての尊厳が守
られることを一貫して追求してきた全生連・生活と健康を
守る会運動に誇りと確信をもち、次の5つの原理と権利要
求の10の原則を高くかかげて社会的役割をいっそう積極的
に果たすものです。




 ≪くらしと健康を守る権利要求の
10の原則に共通する5つの原理≫

1生存権保障は、国民一人ひとりに受ける権利と請
 求する権利、争う権利を明確に定め簡単な手続きで
 保障されなければなりません。

2 生存権保障の水準は、「健康で文化的な最低生活
 ができる」ものでなければなりません。

3 生存権保障は、すべての人びとにたいし、公正・
 平等に自由と人権を保障するためのものであり、社
 会保障などを受けることによって、自由と人権が差
 別されてはなりません。

4 生存権保障の財源や費用負担は、国と大企業の責
 任で行われなければなりません。

5 生存権保障の制度運営の民主化と資金の民主的な
 管理には、全生連・生活と健康を守る会のような生
 存権運動に関わる国民代表の参加が保障されなけれ
 ばなりません。

 以上の生存権保障の前提となる5つの原理をもとに
して、憲法第25条をはしめとする生存権保障につい
て、少なくとも次の権利要求に欠かせない10の原則が
直ちに実現されなければなりません。




 ≪くらしと健康を守る
  権利要求の10の原則≫


(1)働く権利

 高齢者や障害者、女性、出稼ぎ農民をふくめて誰もが、
希望と条件、体力にあわせて働く権利があります。

1 内職やパートをふくめ、人間らしい生活ができる全
  国一律の最低賃金制や農業、漁業の価格保障制度が確
  立されなければなりません。

2 働く意志のあるすべての人に、所得保障を伴う職業
  訓練の確保、不況などによる大企業の首切りは規制さ
  れ、失業者には、その期間、十分な失業給付が制限な
  しに給付されなければなりません。

3 すべての人びとに、安全で健康に働ける労働条件
  や、育児、介護・看護には賃金・所得保障を伴う休暇が
  保障されなければなりません。


(2)生活費保障の権利

 年金や生活保護、児童手当、児童扶養手当などの家族手
当の所得保障は、冠婚葬祭をはじめ社会的なつきあいや、
家族での文化・レクリエーション・スポーツをふくめ、健康
で文化的な生活がおくれる水準で必要なすべての人びとに
請求する権利と受ける権利があります。

1  各給付額は毎年、物価や賃金の上昇率にスライドし
 て、引き上げられなければなりません。


2 各制度ごとに次の原則を確立すること。


(1)年令は保険料を納められない人を含めて、生活で
 きる最低年金が保障・確立されなければなりません。

(2)生活保護の行政は、自由と人権を保障するように
 行わなければなりません。生活保護は本人の請求に
 もとづき、個人を単位として無差別・平等に保障さ
 れ、調査や指導・指示は本人の同意なしに行っては
 なりません。

(3)児童手当と児童扶着手当は所得制限なしにすべて
 の子に高校卒業まで保障され、プライバシー(個人
 の生活を守る権利)を侵害してはなりません。


(3)健康と医療の権利


 だれもが、いつでも、どこでも、病気やケガから守ら
れ、最高水準の医療と健康を求める権利があります。

1予防・治療・リハビリテーション・介護などの総合的
  な保健・医療制度を確立し、費用負担の心配なく、必
 要で十分な保健・医療を受ける権利が保障されなけれ
  ばなりません。食品の安全や公害対策、流行病の防止
  などが確立されなければなりません。

 2 各制度ごとに、次の原則を確立すること。

(1)高齢者や障害者、子どもの医療と難病、結核・精
 神保健は、医療保険とのセットでなく、全額公費負
 担でなければなりません。

(2)国民健康保険などの医療保険は、無差別・平等に
 保険給付が保障され、保険証の未交付や「資格証明
 書」などは直ちに廃止されなければなりません。最
 低生活費から保険料・税をとってはなりません。

(3)公費負担医療でも医療保険でも、予防・治療、リ
 ハビリが保障され、治療中の生活費も保障されなけ
 ればなりません。

(4)介護の費用は、全額、公費負担で、必要な水準の
 額が、本人に給付されなければなりません。


(4)税金の生活費の非課税と自主申告の権利

 税金は直接税、間接税とも生活費に課税してはなりませ
ん。また、その使い道は福祉など国民生活につかわれなけ
ればなりません。

1低所得者・高齢者ほど負担が重い消費税は廃止され
  なければなりません。

2 所得と税額は自分で決める権利があり、自主申告は
 住民税でも厳守されなければなりません。

3 住民税・所得税や固定資産税などの税金、国民健康
 保険料・税などの社会保険料、保育料などの負払は生
 活費にくいこんで徴収してはならず、また減免制度が
 拡充されなければなりません。

4 税金は所得の高い人と不労所得に重く、所得の低い
 人や勤労所得には軽くなくてはなりません。

5 税金は、国会・地方議会で決める租税法律(条例)
  主義が厳守され、国民・住民の意思を十分に反映しな
 ければなりません。

6 税務行政では不当な推計課税や事後調査をやめ、収
  支内訳表を廃止するなど人間の尊厳を守るものでなけ
 ればなりません。


(5)子どもの発達する権利

 すべての子どもは、人間として尊ばれ、心身ともにすこ
やかに生まれ、のびのびと成長し、発達する権利がありま
す。安全で健全な環境のなかで育てられ、平和的で民主的
な教育が保障されなければなりません。

1 出産の費用や保育をぶくむ養育の費用は、父母負担
 なしの社会保障制度で完全に保障されなければなりま
 せん。義務教育は、授業料や教科書だけでなく、すべ
 ての費用が親の所得に関係なく、無償でなければなり
  ません。

2 高校は、準義務教育制とし、希望者全員の入学が保
  障されなければなりません。

3 就学援助は予算にかかわりなく、希望者に対して所
  得基準にもとづいて給付されなければなりません。

4 どの子にも基礎的な学力と体力、自立的判断力など
 が身につくように学級人数を少なくし、生活態度まで
 点数化したり、「日の丸」「君が代」を義務づける新
 学習指導要領は廃止されなければなりません。

5 高校・大学には、給付制による奨学金制度を充実・確
 立し、私学の負担は国公立なみに是正されなければな
 りません。


(6)住居と環境の権利

 だれもが、健康的で安い住宅と安全な環境のなかで住み
つづける権利があります。

1 希望者全員が入居できる低家賃で良質の公共住宅が
 保障され、また、減免制度が拡充されなければなりま
  せん。

2 低所得者には、民間家賃補助が保障され、不当な家
 賃値上げや立退きは規制されなければなりません。

3 社会生活に必要な住宅や在宅福祉の施設、医療機関
 や保健所、学校や図書館、遊び場や公園、スポーツ施
  設、広域にわたる交通網などは公的責任で確立され、
  民主的に管理・運営されなければなりません。

4 生活環境は、だれもが安心して住み、生活できるよ
  うに、交通安全対策や自然・環境への保護が十分に保
  障されなければなりません。


(7)文化活動やレクリエーションの権利

 だれもが、健全な文化活動やレクリエーション、スポー
ツをおこない、楽しむ権利があります。

1 自主的で民主的な文化活動やレクリエーション、ス
  ポーツ活動が十分にできるように労働時間の短縮など
  がおこなわなければなりません。

2 だれもが、いつでも、どこでも、無料か、安い料金
 で、利用できる制度や施設などが確立されなければな
  りません。


(8)平和に生きる権利

 日本国憲法は「国民は平和のうちに生存する権利を有す
る」と明記しています。解釈上も条文上も憲法の改悪は許
されません。平和と民主主義をおぴやかし、軍国主義の復
活・強化につながるいっさいの策動は排除されなければな
りません。

1 日米安保条約は廃棄し、米軍基地を撤去、自衛隊は
  解散し、基地による被害は完全に補償されなければな
  りません。

2 核兵器の廃棄は緊急に実現されなければなりませ
  ん。そのために国際協定が結ばれなくてはなりませ
  ん。

3 軍備拡張、自衛隊の海外派兵はいかなる名目でも許
 されず、国際貢献は非軍事的でなければなりません。

4 第二次世界大戦の侵略戦争の責任を明確にし、被爆
 者への補償(被爆者援護法の制定)とアジア諸国・国
 民への十分な補償が国の責任と負担でおこなわれなけ
 ればなりません。


(9)地方自治の権利

 住民には、住民の手による住民のための地方自治を要求
  する権利があり、国はそれを保障する義務があります。

1 生存権保障制度は、実施責任を担(にな)う自治体
 の自らの判断と責任で自主的、民主的に運営されなけ
 ればなりません。

2 地方自治体を国の下請機関にする地方「行革」は、
 中止されなければなりません。

3 住民の権利・利益を守るためには、申請手続きと認
 定基準、不利益処分には具体的な基準が明定されなけ
 ればなりません。


(10)権利行使と運動する権利

すべての人びとが、生存権をはしめとする基本的人権に
もとづく権利を行使することができます。

1  制度制定へのすべての人びとの参加権や受ける権利
 と請求する権利は具体的に明定し、保障されなければ
 なりません。

2 審査請求や異義申し立て、裁判など争う権利には、
 だれもがたやすく行使できるように手続きの簡素化、
  裁判費用の保障を含めて改善されなければなりませ
 ん。
 行政不服審査など審査機関には、生活と健康を守る
  会の代表を含め、行政から独立した第三者機関によっ
 ておこなわれなければなりません。

3  「生活と健康を守る会」など民主団体には労働者の
  労働基本権と同じように団結権や団体行動権ととも
 に、裁判所の判決(1972年8月29日・鳥取地裁)でも
 明らかなように、自治体や国との団体交渉権が完全に
 保障されなければなりません。



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