◎教育費の父母負担軽減・学校での事故への給付などの制度 −最新情報−
−最新情報− * ◎教育費の父母負担軽減・学校での事故への給付などの制度
<高等教育>無償化は時代の要請
逆行する日本の教育行政
「日曜ワイド」(しんぶん赤旗 98年 3月 8日付)
千葉大学 教 授
三輪定宣さんの講演から
<「無償の教育」は人権>
いま教育を最重要課題と位置づけ、教育の無償化を求める国民の声が国際的に大きくなっています。その背景には人権思想の高揚がああります。
一九六六年に国連で採択された国際人権規約は、高等教育(大学)までの無償化、適当な奨学金制度の確立、教育職員の物質的条件の改善を定めました。
「あらゆる教育の無償化」が国際合意となりました。
八九年に国連で採択された子どもの権利条約でも、中等教育の無償制や「すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられる」(28条)ことが定められています。また、「子どもの最善の利益」優先の原則(3条)を国際社会にアピールしました。
<欧米で教育最優先の流れ)
実際の動きとしても、EU(欧州連合)諸国で公教育重視の政権が生まれています。
フランスでは、左派政権が、教育を「最優先課題」(教育基本法)とし、パカロレア(大学入学資格)取得者を八割に引き上げることをめざし、奨学金(給与制)を大幅増萌する行動計画などを発表して
います。
イギリスでも、労働党政権が生まれ、教育最優先の戦略を打ち出しています。
フレア首相は労働党党首として選挙で、「イギリスの最優先課題は三つある。教育、教育、教育だ」と演説しました。
アメリカでもクリントン大統領が昨年二月の一般教書演説で「次の四年間の最優先課題は、すべての米国人に、世界で最良の教育を受けられるように保証することである」とのべ、高等教育を受けられるよう奨学金制度の充実、授業料の実質無償制にとりくんでいます。さらに今年の一般教書演説では、小学校一〜三年生の一学級平均十八人、十万人の教員採用増を提案しました。
<憲法にも反する日本の教育行政>
日本では、世界の流れとはまったく逆の事態、日本国憲法や教育基本法にも反するクーデター的な「行政改革」が進んでいます。
「受益者負担の徹底」で、国立大学授業料の値上げとスライド制の導入、私学助成の抑制。奨学金も他国の多くが給与制なのに日本は貸与制(しかも一部は三%の有利子制度)、教職に就いた者への返済免除さえやめようとしています。
数字を比べると、日本と他の国との逢いはいっそう明らかです。「教育支出総額」の対GDP(国内総生産)比の伸びでは、日本は六〇〜九一年の約三十年間に四・九%から五%とほとんど伸びていません。OECD(経済協力開発機構)平均は四・四%から六・○%へ一・五倍、北米は五・二%から七%に増えています。高等教育費の財政支出のGDP比では、日本は○・八%、OECD平均は一・七%(国連統計)です。
「大矢業の時代」といわれるときだからこそ、学費を抑え、奨学金を改善するこそが政府のとるべき本来の施策です。改めて憲法がなにを定めているかを確認する必要があります。
憲法第二六条はすべての国民の「教育を受ける権利」を定めています。教育基本法前文では「民主的で文化的な国家の建設」という憲法の理想実現は、「根本において教育の力に待つべきものである」とし、「教育の機会均等」を定めた第三条では、「経済的地位」によって差別されないこと、「経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない」としています。
「教育の無償化」というとまったく夢のような話に思えるかもしれませんが、日本の公教育責のGDP比率四・八%を五・四%程度(約三兆円増)にすれば、私の試算では大学までの授業料の完全無償化とその他の条件整備が可能です。
銀行救済に「公的資金」三十兆円を投入するより、日本の未来の発展にはるかに役立つでしょう。
日本国憲法は人類史的悲願の結晶といえます。二十世紀が、主要国がすべての人に中等教育を保障する課題をほぼはたした世紀とすれば、二十一世紀は、すべての人に高等教育を実現する時代であろうと、私は思います。