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子どもと婦人の福祉制度  −1−




1 出産前後の健康と医療

(1)妊娠がわかったら母子健康手帳の申請を
(2)今年から母子保健事業の実施機関が変わります…実態と要求にそった実施を
(3)「少子社会に対応した総合母子保健対策」も活用して
(4)妊産婦と乳幼児の健康診査は無料
(5)新生児・妊産婦・低体重児は訪問指導を
(6)妊産婦や乳幼児の保護者にたいする保健指導
(7)妊娠中毒症や糖尿病、心臓疾患、重い貧血・出血などの妊産婦への援護費(治療費)
(8)乳幼児発達相談指導事業
(9)子どもの心の健康づくり対策事業を新設
(10)母子保健強化堆進特別事業
(11)子どもにやさしい街づくり事業
(12)母子の状況に応じて実施する母子保健相談事業
(13)出産前の小児保健指導事業(プレネイタルビジツト)
(14)育児不安の解消や子どもの発達のための相談指導事業
(15)所得税のかからない家庭の母子には栄養食品を支給
(16)身近に家事や育児の世話をする人がいないときの産後ケア事業
(17)働く女性が出産時に活用できる母性保護の法律



1 出産前後の健康と医療

(1)妊娠がわかったら母子健康手帳の申請を 頁・目次へ

 母子健康手帳は、妊娠前の健康状態から出産の経過や予防接種、子どもが就学するまでの発育状況が記録できるようになっています。
 手帳は、各種制度を利用するときや予防接種を受けるときの手続きに必要ですから妊娠したらかならず交付してもらいましょう。
 手帳には、妊娠から育児についての注意点や利用できる制度、相談の窓口が紹介されていますので、手帳をもらったら、まず全部読むようにしましょう。
 九一年五月の母子保健法改定で、九二年から母子健康手帳の交付義務が都道府県から市区町村に移りました。このことにともなって手帳の記載内容も市区町村が創意工夫をし、独自に情報を載せることができるようになりました。より役立つ内容にするよう市区町村に働きかけていきましょう。
 (手続き)妊娠届を保健所か、市区町村に提出すると交付されます。役所は妊娠届を受け付けたときから手帳の交付をはじめとする各種制度のサービスを開始しますから、妊娠がわかったらできるだけ早く手続きをしましょう。
 妊娠中に手続きができず、手帳の交付を受けなかったときは出産後に、また、棄児などのため出生届が出ていないときは戸籍の手続きが終わったあとに交付を受けられます。
 (再交付)紛失、破損の場合は再交付を受けることができます。
 二人目、三人目の子どもを妊娠したときはそのつど、保健所か役所に届け出て交付を受けます。また、双子や三つ子などが生まれたときは、届け出て子どもの人数に応じて追加交付を受けることができます。
 (根拠)母子保健法第十六条

(2)今年から母子保健事業の実施機関が変わります・・・実壕と要求にそった実施を 頁・目次へ

 九四年に保健所法が廃止され保健所の整理・縮小をねらった「地域保健法」が成立しました。この法律では母子保健事業などの実施機関が保健所から市区町村(保健センターなど)に移ることになっています。政府は各自治体に一九九七年四月から全面的に移行するように促進しています。どの事業が移行するかは図表@のとおりです。市区町村の担当窓口に移行の状況を問い合わせ、母子保健サービスが低下しないよう保健所の廃止・縮小反対と合わせてとりくみましょう。
 なお、地域保健法の内容や問題点は「健康と医療保障制度」の保健所の項を参照してください。



	図表@ 母子保健事業関係の市町村への移行

97年4月まで

      --------都道府県(保健所)---------------  -----------市 町 村--------------
      |                    |   |                 |
      | ○健康診査              |   | ○母子健康手帳の交付      |
      |  @3歳児 A妊産婦 B乳幼児    |   |                 |
      | ○訪問指導              |   |    |---------------------- |
      |  @妊産婦 A新生児 B未熟児    |   |    |○1歳6か月児健康審査 |
      | ○養育医療(未熟児の入院医療費の給付)|   |    | (予算事業)     |
      | ○障害児の療育指導(児童福祉法)   |   |    |            |
      |-------------------------------------|	|--------|----------------------|

                  ↓                     ↓


	    都道府県(保健所)             市 町 村

	○技術的・広域的機能の強化          ○基本的母子保健サービス
	 @市町村職月の研修・技術的援助        ア.母子健康手帳の交付
	 A市町村相互間の連絡調整           イ.健康診査
	 B地域の健康問題に関する調査・研究       @妊産婦 A乳幼児 B3歳児
                            ----------------------------
97年	 C小規模市町村への人材確保支援計画の      C1歳6か月児(法定化)
4月以	  策定                    ゥ.訪問指導
降	○専門的母子保健サービス              @妊産婦 A新生児
	 ア.未熟児訪問指導                ------------------
	 イ.養育医療
	 ウ.障害児の療育指導
	 エ.慢性疾患児の保健指導

	(注)下線は実施主体が都道府県から市町村になる事業。



(3)「少子社会に対応した総合母子保健対策」も活用して 頁・目次へ

 政府は九六年から、少子社会に対応した保健対策として、あとの項で紹介している「乳幼児発達相談事業」の他に次の三事業を実施していますので、役所に問い合わせて活用しましょう。

 @不妊専門相談センター事業
 健康的な妊娠を支援するための事業です。不妊などに悩む夫婦などの相談に対応し、必要な指導を受けられます。都道府県知事や指定都市・中核都市の市長が指定した医療施設で、健康状態に応した相談・指導を受けます。

 A周産期医療対策整備事業
 安心できる出産を支援するための事業です。周産期(出産の前後の時期)の妊婦でとくに危険度の高い人が対象となります。地域の周産期母子医療センターなどで出産前後の母胎と胎児、新生児の一貫した医療管理をおこないます。
 都道府県が総合周産期母子医療センターを整備し、それを核とした地域周産期母子医療センターを数カ所整備したときに、医療機関に国が三分の一の補助をする制度です。医療センターでは他の医療機関への情報提供や相談、医療従事者の研修・調査研究など周産期医療ネットワーク事業をおこないます。

 B女性の健康相談事業
 妊娠や出産など女性固有の機能や女性特有の身体的特徴によるさまざまな支障や心身の悩みにたいする、生涯を通じた女性の健康を支援するための制度で国から費用の二分の一が補助されます。思春期から更年期にいたる女性を対象として健康教育事業、女性の健康相談事業をおこないます。
 健康教育事業は女性が健康状態に応じ的確に自己管理できるように健康教室の定期開催や講演会の開催、ライフステージごと(高校入学、成人式または母子健康手帳の交付時、老人健康診査時などの節目)にたいする小冊子の配布などをします。
 女性の健康相談事業は医師・保健婦(士)、助産婦などによる身体的、精神的な悩みへの相談指導(女性健康支援センター事業)と不妊治療に関する専門的知識のある医師や社会福祉、心理に関する知識のある専門職による不妊に関する相談指導(不妊専門相談センター事業)をおこないます。
 三事業とも制度発足まもないこともあり、全国で十〜十二か所分の予算しか組んでいません。周産期にかかわる実態と要求にもとづいて実施をさせるようにしましょう。

 <根拠>厚生省通知・・周産期医療対策整備事業の実施について(平成8・5・10児発第四百八十八号)、生涯を通じた女性の健康支援事業の実施について(平成8・5・10児発第四百八十三号)

(4)妊産婦と乳幼児の健康診査は無料 頁・目次へ

 母子保健事業の市区町村への移行で、妊産婦健康診査費が補助金から一般財源化されました。厚生省の理由は「地方の自主性、自律性の尊重」「独自性を生かしたサービス」のためとしています。サービスの低下にならないように監視しましょう。また、一般財源化にあたっては自治体の負担が急に増えないよう経過措置がとられています(図表A)。
 妊産婦と乳幼児は無料で健康診査を受診できます。健診は保健所が委託した医療機関や保健所が期間を決めておこなう集団健診で受けます。保健所を利用する方法もあります。
 九六年度から健診項目に、出産予定日が三十五歳以上である妊婦にたいし、新たに超音波検査(エコー検査)が加わりました。
 具体的な健康診査の項目は自治体によって違います。東京都では次のようになっています。

 妊産婦は、@診察、A尿検査(糖、蛋白)、
B貧血検査、C血圧測定、D保健指導、E梅毒血清反応検査、FB型肝炎検査、G超音波検査など、乳幼児は、正常か先天性異常の有無など発育・発達をみる検査です。

 <受診回数>
 @医療機関を利用するとき・・妊婦・乳児ともに一般健診が年二回、精密検査は妊婦一回、乳児二回です。

 A保健所(保健センター)を利用するとき・・地域保健法では健診など母子の健康管理を奨励しています。これにもとづいて原則としては必要に応じて何回でも受けられますが、常時、保健所などに医師がいないこともありますので、日時を指定したときだけ実施しているところが多いようです。

 B気軽に利用できるように・・現在でも国などの施策によって保健所の体制が不十分なために、必要なときに受けられず、改善が求められています。ところが、政府は「(2)今年から母子保健事業の実施機関が変わります」の項で説明したように、九七年四月からは、保健所でなく市区町村に「保健センター」をつくり、そこで実施するとしています。保健センターは保健所と違って設置義務はなく、国庫補助も費用の一部だけであり、医師など専門職の配置基準はありません。このことから、今以上に妊産婦と乳幼児の健康診査の実施状況の後退が考えられます。「保健所の整理・縮小反対」と結びつけて「必要なときに身近な所で健康診査が受けられるように」の運動が必要です。
 医師の確保など、常時、健康診査を受けられる体制をつくるよう市区町村に働きかけましょう。受診場所が違いなど気軽に利用できないときは、生活と健康を守る会として市区町村と話し合い、集団健診などを計画することもできます(くわしくは「健康と医療保障制度」の「もっと活用できる保健所」の項を参照)。

 必要な場合は精密検査を
 一般健診で医師から精密検査が必要と言われたときは保健所か市区町村に申し出て健康診査受診票をもらい、医療機関で精密検査を受けます。

 <手続きと費用>費用は無料です。手続きは妊婦については母子健康手帳と同時に交付される受診票を持って一般の産婦人科医で受けます。乳児については産後三〜四か月、六〜七か月、九〜十か月をめどに保健所から通知がきますので指定された日時・場所で受診します。産婦については三〜四か月の乳児健診にあわせて受けます。
 なお、指定された日時がつごうの悪いときは、保健所に連絡して後日受診することができます。

 <根拠>母子保健法十三条、厚生省通知…医療機関に委託して行う妊産婦健康診査及び乳児健康診査の実施について(昭和44・6・9児発第百十九・三百八十五号 平成8・5・10児発第四百八十六号)

(5)新生児・妊産婦・低体重児は訪問指導を 頁・目次へ

 保健婦や助産婦、医師などが家庭を訪問し、新生児や妊産婦、低体重児にたいして必要な保健指導をするものです。

 @新生児の場合
 生後二十八日までの新生児(第一子)には、助産婦、保健婦が一〜二回の訪問指導などおこないます。必要なときは二十八日を過ぎても継続しておこないます。

 A妊産婦の場合
 健康診査の結果、必要と認められた初産(とくに高年)、妊娠中毒症や出産に影響のある既往症のある人、未熟児出産や異常出産を経験した人などが対象です。
 妊娠や分娩、産褥(出産時に産婦の用いる寝床のこと。ここでは分娩後に母体が平常の状態に回復するまでの期間)の経過時での異常を早期に発見するための指導や栄養、食事、休養、就労等に関する指導をおこないます。

 B低体重児・未熟児の場合
 生まれたときの体重が二千五百グラム未満だと訪問指導や家庭用簡易保育器の貸し出しなどがおこなわれます。

 <手続き>いずれの場合も妊娠届や健康診査の結果、出生届などにもとづいて保健所から連絡がくることになっています。連絡のない場合や訪問指導を希望する人は保健所に連絡をとって受けることができます。

 <根拠>母子保健法第十一条、第十七条、第十八条、第十九条

(6)妊産婦や乳幼児の保護者にたいする保健指導 頁・目次へ

 妊産婦もしくはその配偶者や乳幼児の保護者は、健康診査や保健上、注意すべきことに関して保健指導が受けられます。
 <対象者>生活保護世帯と市区町村民税非課税世帯で、付近に適当な医痺機関や保健指導を受ける施設がない、施設があっても経済的な理由で指導が受けられない、一般に妊産婦や乳幼児の健康状態がよくない地域に居住している、といった場合に受けられます。

 <手続き>保健所や市区町村に届けて保健指導票をもらい、委託医療機関や保健所、助産婦のところで受けます。費用は無料です。

 <根拠>母子保健法第十条

(7)妊娠中毒症や糖尿病、心臓疾患、重い貧血・出血などの妊産婦への援護責(治療費) 頁・目次へ

 厚生省は、地方自治体の事業として定着したなどの理由で今年から一般財源化にしました。厚生省は今までどおりということで、条件や支給金額などを示していません。自治体にたいして、事業を継続するように要求することが大切です。なお、昨年までの主な内容は以下のとおりです。参考にしてください。

 <対象者>妊娠中毒症や糖尿病、心疾患合併妊娠にかかっている妊婦と出産後十日までの産婦です。また、貧血や産料出血が一定の基準以上にひどい妊産婦も対象になります。
 前年の所得税が三万円までの人で七日以上入院した場合という制限があります。
 入院助産の給付を受けている人はこの制度の対象にはなっていません。
 健康保険や共済保険、国民健康保険の本人と家族は、保険の自己負担分が後護費の支給対象となります。

 <支給額>所得によって違いがありますが、基準額は五千五百円〜九千百円、入院七日以上の一日あたりの加算は八百円〜一千三百円このほか分娩誘発(三千円)、開腹(八千七百円)の手術を受けたときの特別加算があります。援護費が支給されるのは入院二十一日までです。

 <手続き>保健所か市区町村へ申請します。「妊娠中毒症等療養援護費支給認定申請書」、医師の診断書、世帯調書、母子健康手帳が必要です。
 申請が認められると認定証(ところによっては医療証)が送られてきます。治療終了から三十日以内か入院二十一日の翌日から三十日以内に支給申請書、医師の証明書を添付して保健所か市区町村に申請し、支給を受けます。なお、本人が死亡した場合は配偶者か親族が申請して受けることができます。

 <根拠>母子保健法第十七条

(8)乳幼児発達相談指導事業 頁・目次へ

 九六年度より新設された制度です。心身の発達が正常範囲にない、または将来において精神や運動発達面において障害をもつおそれのある児童を早期に把握し、適切な指導をおこないます。また、慢性疾患にかかっている児童にたいする家庭療育の支援をおこないます。

 <対象者>@乳幼児健康診査などで精神や運動などの発達に問題が発見された児童または、そのおそれのある児量のうち、医師など専門の保健医療従事者による経過観察、発達相談や発達訓練指導などが必要と認められる児童とその保護者。

A慢性疾患にかかっている児童とその保護者(家庭療育支援=ショートステイ事業のみ対象)。

 <事業の内容>次の四つの事業があります。
 @発達相談事業・・診察や日常生活等に関する相談指導と発達訓練指導

 A専門スタッフ派遣事業−発達相談事業の結果によって必要な場合に、家庭に保健婦や理学療法士、作業療法士などを派遣し、個々の発達段階や家庭の療育状態などに応じた訓練指導

 B情報提供事業…療育方法や保健・医療・福祉に関する情報の収集・整理と対象者への情報提供

 C家庭療育支援(ショートステイ)事業…保護者が疾病や事故、冠婚葬祭などの社会的な理由で一時的に療育が困難になった場合や、保護者にたいしその児童への療育の指導が必要な場合、医療機関や児童福祉施設などで一時的な療育・指導をおこなう。実施施設は都道府県知事などにより指定された施設で、利用定員は原則として四人以上、期間は原則として七日以内。ただし、都道府県知事などがやむを得ない事情があると認めた場合は必要最小限の範囲内で延長できる

 以上の事業のなかで、Cは地域の実情に応じて選択して実施するとなっていますので、実態にもとづいて実施させましょう。

 <費用と手続き>家庭療育支援事業の一部負担は、児童分は飲食物相当額が保護者負担となります。保護者本人が事業利用のために入所したときは、かかった費用全額が負担となります。
 手続きは実施施設ごとに必要な登録を事前におこない、必要なときに役所に申し込みます。緊急の場合はとりあえず口頭で申請をし、あとから必要な書類を出すこともできます。
 今年度は十か所分しか予算が組まれていません。各地で自治体独自の施策をとらせながら、全国的に広げる運動が大事です。

 <根拠>厚生省通知・・乳幼児発達相談事業の実施について(平成8・5・10児発第四百九十号、児母第二十六号)

(9)子どもの心の健康づくり対策事業を新設 頁・目次へ

 事業内容は、@心の健康づくり運動の推進、A育児不安対策、B虐待・いしめ対策となっています。事業主体は市区町村(九七年度は七十一か所)、補助率は三分の一です。

(10)母子保健強化推進特別事業 頁・目次へ

 昨年度からの事業で、@妊産婦乳幼児死亡対策、A母子疾病予防対策などで都道府県に補助をおこなってきました。九七年度からは、母子保健連携強化事業を追加し、市区町村も補助対象になりました(図表B)。

(11)子どもにやさしい街づくり事業 頁・目次へ

 次の項目以降で紹介する「出産前の小児保健指導事業」や「育児不安解消や子どもの発達のための相談指導事業−乳幼児健全発達支援相談事業」「母子栄養食品の支給」などは、九四年までは「市町村母子保健事業」のメニュー事業やモデル事業としておこなわれていました。
 九五年からは「子どもにやさしい街づくり事業」に組み替えられました。
 子どもにやさしい街づくり事業は母子保健だけでなく児童の健全育成事業なども含めた内容となっています。
 事業内容は基本事業と選択事業、特別事業の三本」立てです。基本事業は全市区町村が実施すべきもので、
@「子どもにやさしい街づくり推進会議」の設置、
A子どもの遊び場の確保、
B健全育成普及啓発活動があります。
選択事業は地域母子保健関係の選択事業(十三事業)と思春期における保健・福祉体験学習事業、健全母性育成事業など十六事業のなかから市区町村が選択をし、都道府県を通して厚生省に申請して実施することになります。
 基本、選択、特別のいずれの事業にたいしても国は予算の寵囲内で一定額を補助します。

 <厚生省の通知を自治体からとりよせ、住民に役立つ実施を要求しましよう>厚生省は事業の組み替えにともなって、九五年四月に実施内容と実施上の留意事項について「子どもにやさしい街づくり事業の実施について(平成7・4・3児発第三百七十六〜一号、平成7・4・3児環発第二十六号)」「地域母子保健事業の実施について(平成7・4・3児母発第十九号)」の通達を出しています。
 また、事業の国の補助についての「交付要綱(平成7・4・3児発第八十九号)」も出しています。
 さらに昨年の五月、基本事業の「母子相談指導事業について(平成8・5・10児発第四百八十二号)」の通達を出し、地域母子保健のいっそうの向上を市町村に要請しました。
 通達では地域母子保健関係の選択事業には、
@自然に恵まれた地域での体験活動事業、
A老人とのふれあいを推進するための地域交流事業、
B親子のふれあいを推進するための事業、
C父親養育研修事業、
Dジュニアボランティア活動育成事業、
E子どもと家庭の相談事業、
F乳幼児健全育成相談事業、
Gその他児童の健康な育成に資する事業、
H地域活動事業、
R母子栄養管理事業、
J乳幼児の育成指導事業、
R出産前小児保健指導事業、
L産後ケア事業の十三の事業をあげています。
市区町村は地域の実情にあわせて、八事業まで実施できます。
 出産前の小児保健指導事業と乳幼児健全発達支援相談事業は従前の母子保健事業ではモデル事業のため、市区町村が実施をする場合は厚生省と協議し、承認を受けなければなりませんでした。九五年からは、子どもにやさしい街づくり事業の選択事業になったため厚生省との協議・承認でなく、申請をすればよいことになりました。
 通達では母子保健に関する講習会や相談活動を積極的におこなうことを指示しています。具体的な内容については、「(12)母子の状況に・・」の項を参照してください。同時に、いままで母子保健事業の基本事業としてきた新婚学級や母親教室、育児教室などの講習会の開催と、妊産婦や乳幼児の保護者への個別相談活動について、厚生省は「全市町村ですすめてほしい」とし、一定額の補助金も予算化しています。このことを活用して、生活と健康を守る会主催の健康相談会に保健婦など専門家に来てもらうこともできます。
 事業の組み替えにともなう通達を役所からとりよせ、住民に役立つ内容で事業を実施するように市区町村に働きかけましょう。

(12)母子の状況に応じて実施する母子保健相談事業 頁・目次へ

 母子保健事業の基本事業で、母子保健に関する各種の保健教育を総合的におこない、また妊娠中や出産後、乳幼児期の個々の問題に対応したきめ細かな保健指導をするものです。

 <対象者>思春期の男女、未婚期・結婚前後の男女、妊産婦、乳幼児とこれらの人の家族です。

 <内容>次のような事業をおこないます。

 @集団指導…思春期学級、未婚女性を対象とした母子保健学級、婚前学級、新婚学級、両(母)親学級、育児学級など講習会を開きます。

 A個別相談事業…対象者のそれぞれの状況やケースに応じて、(イ)思春期の保健、(ロ)妊娠、分娩、産褥、(ハ)妊産婦・乳幼児の健康、栄養、(ニ)育児、(ホ)家族計画、(へ)その他保健衛生に関しての相談事業をおこないます。

 この制度の費用は補助金でなく、国から自治体への地方交付税交付金の算出基礎のなかに入っています。未実施の自治体では、このことを明らかにして実施を要求しましょう。

 <手続き>役所は広報などで、事業の趣旨や期日または期間、場所その他必要な事項を知らせるようになっています。必要な場合には役所に実施計画を問い合わせます。

 <根拠>厚生省通知=・母子保健相談指導事業の実施について(平成8・5・10児発第四百八十二号)

(13)出産前の小児保健指導事業(フレネイタルビジツト) 頁・目次へ

 母子保健事業のひとつとして九二年に新設された事業です。それまで実施していた母親学級のほかに、妊婦の出産や育児などにたいする不安を解消するために小児料医等による保健指導をするものです。

 <対象者>とくに育児への不妾が高く、医師による保健指導を必要とする妊産婦等です。

 <指導内容>市区町村長が委託した医療機関で、育児の心構えや栄養、保温、皮膚の清潔、沐浴(髪や体を洗うこと)、育児不安でよく訴えられる症状や状態への対応、育児(寝かせ方やおむつの当て方など)などの保健指導がおこなわれます。

 <手続き>初産の妊婦は妊娠届をしたときに役所から出産前小児保健指導受診票が交付されます。それ以外の妊産婦等は母子相談保健指導などで保健指導が必要と認められると受診票が交付されます。
 また、市区町村から委託された医寮機関での妊産婦健診(厚生省は妊娠後期が望ましいとしています)等で必要と認められたときは医師の出産前小児保健指導紹介状が交付されます。
 受診票か紹介状を小児科医等に出して保健指導を受けます。

 実施箇所の拡大を
 制度が姑まって間もないことや厚生省の予算が少ないこともあって、実施自治体は九五年度で十市町村で、未実施の市区町村が大部分です。市区町村の実施状況について問い合わせ、母子の要望にそった内容への改善や実施箇所の拡大を申し入れましょう。
(根拠)厚生省通知…出産前小児保健指導事業の実施について(平成4・5・11児発第四百八十七号)

(14)育児不安の解消や子どもの発達のための相談指導事業 頁・目次へ

 九一年から母子保健事業のひとつとして乳幼児健全発達支援相談指導事業が始まりました。この事業は、一歳半児健康診査、三歳児健康診査、保健指導等の結果、すぐに精密検査や治療訓練等を必要とはしないが、要経過観察とされた児童や育児不安をもっている母親等にたいし、施設で個別的あるいは集団的な指導をおこない、児童の育成発達を助け、育児不安を解消することを目的とした事業です。

 <対象者>要経過観察とされ、保育所等に入所してない児童と育児不安をもっている保護者です。費用は飲食費相当額の負担があります。

 <指導内容>市区町村が指定、委託している保育所や乳児院などの児童福祉施設でおこないます。児童については施設に入っている児童との集団指導をおこないます。
 保護者についてはグループ指導か個別指導がおこなわれます。
 しかしながら、九一年から始まった制度であることや厚生省がわずかな予算しか組んでいないことなどから、実施している自治体は九五年度で百四十五市区町村とまだまだ不十分なのが実態です。

(15)所得税のかからない家庭の母子には栄養食品を支給 頁・目次へ

 母子保健事業のひとつである母子栄養強化事業として実施されている制度です。

 <対象者>生活保護世帯(単給を含む)と前年度の市区町村民税非課税か所得税非課税世帯の妊産婦と乳幼児です。乳幼児については「とくに栄養強化を必要とするもの」という条件がついており、一か月・三か月健診時の体重値や健康診査の結果、医師が栄養強化の必要性を認めた場合に支給されます。なお、ここでいう健康診査は公費によるものとは限られていませんから、公的な健康診査でなくても、医師が必要と認めた場合は請求しましょう。

 <支給内容>九〇年までは、支給品目と量は妊産婦と乳幼児それぞれにたいして一日牛乳一本(二〇〇CC)または粉乳三〇グラムの支給となっていました。
 九一年の通知からは「支給する栄養食品は牛乳等であって医師の意見により市区町村長が認めた品目および量とすること」となっています。このことから、必要な品目と量を支給するように市区町村に要求していきましょう。

 <支給期間>妊婦は申請の翌月初日から出産月の末日まで、産婦は出産の翌月初日から三か月間、乳幼児は生後四か月日の初日から九か月間支給されます。

 <手続き>市区町村で受け付けます。栄養食品申請書、母子健康手帳、生活保護世帯であることの証明や源泉徴収票、住民税納付通知書が必要です。
 妊産婦が受給していた場合、乳幼児の申請手続きは母子健康手帳を提示するだけでよいことになっています。・・・

 <根拠>厚生省通知…市町村母子保健事業の実施について(平成3・5・20児発第四百三十六号)(平成3・5・20児母衛発第二十号)

(16)身近に家事や育児の世話をする人がいないときの産後ケア事業 頁・目次へ

 子どもにやさしい街づくり事業のひとつとして九五年に新設された制度です。
 核家族化や都市化がすすむなかで、出産後身近に家事や育児の世話をする人がいないために、日常生活に一時的な支障をきたしたり、育児ノイローゼなどになる産婦がたくさんいるために設けられました。
 <対象者>実家の両親など身近に家事や育児の世話をする人がいない出産直後の産婦で、育児不安が強く、保健指導を必要とする初産婦などです。
 <ケア内容>助産所に入所し、次のケアをします。
 @産婦の母体管理および生活面の指導、A乳房管理、B沐浴(髪や体を洗うこと)や哺乳等育児指導、Cその他育児相談をおこないます。
 入所期間は原則として七日間ですが、必要性が認められたときは期間延長もできます。
 <手続き>利用申込書を市区町村に提出します。費用は市区町村によって違います。九五年度には四市町しか実施していません。市区町村が実施をしたときに国が予算を補助するしくみですから、実施させるとりくみが大事です。

(17)働く女性が出産時に活用できる母性保護の法律 頁・目次へ

 労働基準法などで働く女性の出産にともなう母性保護が次のように決められていますので積極的に活用しましょう。

 @労働基準法で決められているもの
 (一)産前産後の休暇(六十五条)
 本人が請求すれば、出産予定日の六週間前(多胎妊娠は十四週間前)から産前休暇がとれます。産後の休暇は本人からの請求がなくとも、事業主は八週間は保障をすることになっています。
 (二)育児時間(六十条)
 子どもが生後一年未満のときは、少なくとも一日二回、各三十分の育児時間がとれます。
 (三)軽易な仕事に移る請求(六十五条)
 事業主は、妊婦から「軽易な仕事へ転換させてほしい」と請求があれば、これにこたえることが義務づけられています。
 (四)産前産後の解雇制限(十九条)
 事業主は、産前産後の出産休暇をとっている期間と、その後三十日の間は女性を勝手に解雇することはできません。
 (五)休日や深夜の労働、残業の拒否(六十六条)
 妊産婦は、残業や休日労働、深夜労働を拒否することができます。また、変形労働時間制度についても通用から除外するように請求できます。

 A男女雇用機会均等法で定められているもの
 男女雇用機会均等法は、十一条で妊娠・出産を理由とした退職制度を設けることや妊娠・出産を理由とした解雇の禁止のほかに次のようなことを定めています。
 (一)健康診査などのための通院休暇(二十六条)
 妊娠中から出産後一年未満の妊産婦が保険指導や健康診査を受けたり、乳幼児の健康診査を受けるために通院時間が必要なときは、事業主はその時間を保障しなければならないとしています。
 (二)健康診査などの結果、つわり休暇や時差出勤、勤務時間の変更、短縮が必要なときの保障(二十七条)
 妊産婦が保健指導や健康診査によって医師から指導されたことを守るために、勤務時間を変えたり、短くすることが必要であり、かつ本人が希望するときは、事業主はこれを保障しなければなりません。

 Bみんなで団結して権利行使と改義を

 以上のような母性保護鋭定の通用状況は職場によって大きく異なります。また、産前産後の休暇などは、その間の賃金の支払いを事業主に義務づけていませんので、賃金を差し引くところもあります。
 実際にどうなっているか、各職場の就業規則を調べてみましょう。そして、就業規則に定められていることは職場の仲間の協力を得て積極的に活用し、不十分な点は話し合い、改善するように事業主に要求しましょう。
 なお、パート労働者を含めて、労働者の権利にかかわる内容については、「働く権利の保障・失業したときやパートの人が活用できる制度」の項に紹介しています。




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