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(99年 4月 1日付「民医連新聞」)


相談室日誌 連載31

生活保護行政のあり方に憤り

西川 優(徳島健生病院)




 外来から、「行き倒れの人が運ばれてきた。 名前以外詳しいことがわからない」との連絡 がありました。Kさん(六一歳)は、公園で 倒れていたところを警察に発見され、救急車 で搬送されてきました。
 以前は和歌山で土木関係の仕事をしていた が半年前より仕事が無く、徳島に帰ってきて この一カ月ほどは何も食べていないとのこと でした。本人は徳島で生活することを希望し ました。老人であれば老人ホームヘの入所も 考えられますが、年齢が若いため申請も無理 なので、今後の生活について徳島市の福祉事 務所へいっしょに相談に行きました。所持金 も無く健康保険にも加入していないため、生 活保護を申請することにしました。生活保護 担当者は事務的に、「住所不定のためどこか に住所が必要。入院してその間に保護を申請 しては」と話しました。医師と相談し、呼吸 苦もあり状態もあまりよくないようで、生活 保護が通るのであればということで検査入院 となりました。
 入院より一週間、検査の結果結核がみつか り、専門の病棟を持たない当院では対応でき ないため転医されました。
 二週間後、生活保護の担当者からKさんが 亡くなったとの連絡がありました。「結核が かなりすすんでいたようだった」とのことで した。調査の過程で別れた奥さんを探し出し、 葬儀をしてもらったとのことでした。
 相談業務に携わるようになって六カ月が過 ぎ、何もわからずにこの件に関わりました。 実際にKさんに関わったのはわずかな期間し かありませんでしたが、この仕事の大変さ、 現在の制度の矛盾を感じずにはいられませ ん。その人の今の姿だけを見て「浮浪者」と 一言でかたづけてしまい、これまでの生活や くらしを見ずに、単に怠け者であるかのよう な対応をする生活保護担当者の態度に怒りを 感じます。何十年もの間交流もない人に、元 の家族だからと責任を押しつける生活保護の ありかたに憤りを感じます。
 さまざまな制度の間で、どの制度にも該当 しない人たちの援助にどうやって携わってい くか、今回のKさんとの関わりは、自分の課 題やこの仕事にどうやって携わっていくかを 考えさせられることとなりました。


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