地方で広がる「30人学級」運動
父母の願いに背景に
村や町が独自に実現
子どもと教育をめぐる問題は深刻です。このなかで、父母などの「三十人学級を」と
いう要求を地方自治体が、みずからの力で実現していこうとするとりくみが少しずつ始
まっています。ここでは、少人数学級の実現をめざして奮闘してきた二つの自治体を紹
介します。
村の費用で
教員を採用
一つは、昨年度の佐賀県東
松浦郡北波多村小学校の例で
す。ここでは、村単独で教員
を採用(一年間限り)し、新
一年生三十七人を実質二クラ
スにわけ、少人数学級を実現
しています。児童減にともな
い、新入生が四十人を割るこ
とがわかったPTAは、前年
どおり二十人程度にしてほし
いと村当局に要求しました。
そのために村に教員を村費で
採用してほしいとの署名を短
期間で集め、村・村教育委員
会を揺り動かしたのです。県
教育委員会から「教員の任命
権は県教委にある」 「国の基
準は四十人学級となってい
る」とストップがかけられま
したが、PTA、教職員など
の運動で実質二クラスが実現
しました。今年度も補正予算
で村費教員を一人継続してい
ます。県全体でも「県予算で
三十五人(以下)学級の実現
を」との運動が組織を超えた
住民運動に発展し、今年度同
郡の他の自治体でも、二つの
小学校で町単独の教員を採用
するという成果が生まれてい
ます。
町職員として
教員を採用
二つめは、長野県南佐久郡
小海町の例です。「四十人学
級」とする国の決まりではき
め細かい教育ができないと、
町内二つの小学校に今年度か
ら四十人以下の学級を実施
し、それぞれ十九人ずつ(二
年生)、十八人ずつ(一年生)
に二学級にわけ「少人数学級」
を実施しようとしました。町
教委は「町が
独自に採用す
ればできる」
として、新年
度予算に二人
の教員の人件
費を盛り込
み、町職員と
して教員を採
用しました。
しかしここで
も、県教委の
ストップがか
かり、妥協案
としてチーム
ティーチング
(複数担任制
など)を示さ
れた町教委は
「県教委にも、
国に働きかけ
るくらいの姿
勢がほしかっ
た」としつつ
も、この案を
受け入れてい
ます。
この二つの
町村の共通点
のひとつは、
少人数学級実
現のために本
来なら県費負
担の教員を、
町村で負担し
ようと独自に判断したところ
です。また、県教委が「国の
基準は四十人学級である」
(「教育の機会均等等、公平
性の観点から是認しがたい」)
などとしてストップをかけ、
妥協案としてチームティーチ
ングの形で教員を配置してい
るところにもう一つの共通点
があります。
しかし、学校設置者の市町
村がみずからの努力で国の標
準を上回った措置をとること
に、県が「待った」をかける
のは「義務教育水準の維持向
上に資することを目的」に制
定された義務教育標準法に照
らしても問題があります。「国
民全体に対し直接に責任を負
って行なわれるべき」とした
教育行政の責務を示した教育
基本法第十条の趣旨にも反す
るのではないでしょうか。
そのほか、兵庫県川西市内
の中学校では「保健室登校」
の生徒の増加にともない、養
護教諭の増員を求め各団体が
長年にわたり運動をしてきた
成果が実り、今年度から市単
独事業で市内七校全校に養護
教諭補助員(身分はアルバイ
ト)を一人ずつ増員すること
になったという例もありま
す。
打開を求める
強い要求が
これらの自治体の努力の背
景には、子どもと教育をめぐ
る危機が進行しているもと
で、その打開を求める住民の
強い要求があります。教育現
場が大変な困難に直面してい
るにもかかわらず、政府はあ
くまで教員数を抑制し、がん
として三十人学級にしようと
しません。いまの政府のもと
では、こうした自治体の動き
は今後ますます増えていくで
しょう。それだけに、地方切
り捨ての政策を転換していく
運動が重要となっています。
(日本共産党文教委員会・
後藤由実)