将来の介護費用のためにと、少ない生活保護費から、食費を極端にきりつめて蓄えた貯蓄を国に取り上げられ、違法と訴えた生活保護の「加藤人権裁判」(九三年全面勝訴)の元原告・加藤鉄男さん(73)が8月29日に入院していた秋田県・公立角館病院で亡くなりました。
関節リウマチ等で、裁判中も入退院をくり返していた加藤きんは、秋田地裁の勝利判決後、まもなく持病の悪化で入院し、長期の闘病生活を続けていました。
遺体は本人の遺志で秋田大学医学部に献体されました。
戦争による惨禍と、戦後復興のために社会の底辺で汗と泥にまみれ働いてきた加藤さんが、やがて働けなくなった時に出会ったのは、介護に備えて切りつめた保護費の預金さえとりあげる冷たい社会保障の現実でした。
重度障害と貧困の中で人間らしく生きるために「泣き寝入りしない」とたたかう姿にかつてない多くの人びとの共感が寄せられましたが、加藤裁判は、生活と健康を守る会運動の正義の旗印でした。
加藤さんのたたかいは、その後の県の「公金不正支出」追及等の社会正義をめざす運動に引き魅がれています。
加藤さんに心からの哀悼の気持ちを表するとともに、長い間介護に献身してきたキエさんに感謝したいと思います。
1998年8月30日