憲法違反!
国保料裁判に”勝訴”
四月二十一日北海道・旭川地方裁判所で、道北生活と健康を守る会会長の杉尾正明さんが「国民健康保険の料率を条例に明記していないのは違憲」と、一九九四〜九六年度の国保科賦課処分と減免不承認処分の取り消しを求めて訴えていた裁判で、全面的に認める判決が言い渡されました(2面に解説)。
この判決を受け、長野市では四月二十三日、市長が定例記者会見で、料率の明定化にむけ検討していることを明らかにしました。
北海道・旭川の杉尾正明さん(62)道北生活と健康を守る会会長
私が生活と健康を守る会に出会ったのは、一九六六(昭41)年職場の労働争議が一応の終結をみたころです。
私は結核が再発して入院し、妊娠八カ月の妻が生活保護の申請に行くと、「実家に帰ってめんどうをみてもらえ」と、福祉事務所は冷たい対応でした。
退院後生健会の役員となり、生活保護や国民健康保険などの制度の学習にとりくみ、全国で十倍ちかい保険料・税の地域格差、低所得者ほど負担が高いなど、国保制度の矛盾に気づきました。
自ら国保に加入国保裁判を提訴
知れば知るはど憤りを感じ、国保裁判をおこすには自ら国保加入者にならねばと決意し九三年に仕事をやめ国保に加入しました。
収入が年額九十万円になった私の九四年度の国保科は、二万七千三百八十円。減免申請は「規定外」と承認されず、「生活保護を受給するなら免除される」という市の答えでした。
九月に道国保審査会へ審査請求し、翌年二月棄却。四月五日に旭川地裁へ提訴、八二年の秋田・国保税裁判では「国保税で税率などを明示しない条例は達意・無効」との判決が出ており、国保科でも憲法の租税法律主義や条例などでの明示を定めた国保法に違反すると訴えつづけました。
資格証明証は最大の人権侵害
「リンゴに値段をつけずに売るか? 料率のわからない国保科を押しつけるのはそれと同じこと」「そりゃそうだ」という店やのおばちゃんたちに励まされ確信をもちました。
全国の国保加入者の二割は、私と同じ住民税非課税の低所得者です。滞納者への期間を区切った「短期保険証」や医療費が全額自己負担の「資格証明書」の発行は、国民の医療権をうばうものです。これは憲法違反の最大の人権侵害です。
この裁判は、弱者に厳しい国保制度の矛盾を訴える第一歩です。
【判決の骨子】
◇保険料は形式的には租税ではないが、強制加入であり、国民健康保険は保険というより社会保障政策の一環である公的サービスとしての性格が強い。民主的なコントロールの必要性が高い点で担税と同じもの。租税法津(条例)主義の適用がおると解するべき。
◇従って、憲法92条「地方自治の本旨は法律で定める」、同84条「課税変更は、法律の定める条件によることを必要とする」(租税法律主義)に違反しているので、同条例に基づく賦課処分を取り消す。
秋田判決につづ<大きな成果
道生連会長三浦誠一
北海道・旭川市の国保科裁判が事実上勝利しました。秋田・国保税裁判につづく大きな成果です。
これで国保税も国保科もどちらも、租税法律(条例)主義が適用され、条例に税率・料率が明示されていないのは違憲との判例がつくられました。
当然の結果とはいえ、最高に喜ばしい判決です。全生連運動の発展への大きな貢献になります。
旭川市は控訴を決定しました。今後のご支援をよろしくお願いします。
《連絡先》北海道生活と健康を守る会連合会 〒063−0868 札幌市西区八軒8条東5丁目4−18 Tel(011)736-1722
解説
厚生省の憲法違反を裁く
国民健康保険の料率は、市町村の裁量で決めています。
当局が勝手に定めている料率
その決め方は、@まず、医療費や人件費などの支出総額を決め、Aこの支出総額から国の負担金や都道府県の補助金を差し引く。B差し引いて残った額を、保険料の納入率(予定収納率)で割った額が、保険料に賦課するする総額になる。Cこの賦課総額を、応益割(均等割・世帯割)と応能割(所得割・資産割)に案分し、それぞれの料率を算出しています。
つまり、市町村は厚生省の指導のもとに、医療費の見積もりをはじめとする支出総額の決め方や納入率の見方などを、当局の一方的な裁量によって保険料率を自動的に決めているのです。
秋田国保税訴訟で税の所は改善ずみ
「保険料率を、誰もがひとめでわかるように条例で明定しないのは憲法違反だ」、との判決は、二十年も前に出ています。秋田生活と健康を守る会が中心となってたたかった、一九七九年の「国保税訴訟」の一審判決(八二年の二審判決でも)です。
このとき、自治省の指導もあって、国保税のところは、すべて改善されました。
一方、「保険料は税とちがう」と言って今日まで達意をつらぬいてきた厚生省は、今回、「料率を明記しないのは違憲」という裁きを受けたのです。