仕事もお金もない
その日はかんかん照
りの暑い日でした。盛
岡生活と健康を守る会
の事務所に、川辺良子
さん(仮名・54)とい
う女性が入ってきまし
た。その人はバックか
ら糖尿病患者の「証明
手帳」(病名や連絡先
が明記された緊急時用
の手帳)を出して話し
始めました。
「去年九月に離婚し
てから一人ぐらしで
す。職業安定所で仕事
を紹介してもらっても
いつも面接でことわら
れます。今年三月から
一カ月半、ベッドメイ
クの」仕事をしました
が、病気で体に力が入
らず他の人のように働
けないのでクビになり
ました。生活保護の申
請に行ったら『仕事を
みつけて働くように』
と言われました。でも
仕事がありません。こ
れまで缶詰一個を三回
にわけて食べていまし
たが、もうお金もあり
ません。今日は病院に
行く日だったけどお金
がないので行けません。
薬もなくなりました」
と、川辺さんは話
しているうちに泣き出
んてしまいました。
話をきくと、離婚す
るまでは生活保護を受
けていたとのこと。離
婚したあと生活保護を
継続して受けることが
できなかったといいま
す。川辺さんのくらし
ぶりを見かねて、近所
に住む人が「生活と健
康を守る会というとこ
ろで相談してみればど
うか」と教えてくれた
そうです。
「今夜は眠れる」
このような人からの
生活保護の申請を受け
付けないなんて、あま
りにもひどいではあり
ませんか。さっそく川
辺さんといっしよに市
役所に直行しました。
そして「この人に『仕
事をして食え』とは何
事か。何のための生活
保護か」と訴え、その
場で生活保護を申請、
病院に行くためめ「医
療券」・と当座の生活費
を手にいれることがで
きました。
川辺さんは、「これ
からどうやって生きて
いこうかと考えたら真
っ暗な気持ちでした。
今夜は久しぶりに眠れ
ます。本当によかった」
と言って帰っていきま
した。
このことがあってか
ら会では、「このよう
なことがあってはいけ
ない。こんな人権侵害
を受けている人が他に
もいるかもしれない。
会があることをもっと
宣伝して、もっと大き
な会にしなくては」と
話し合いました。
川辺さんはその後、
元気をとりもどしそ会
員としてがんばってい
ます市営住宅に住ん
でいるので、「この団
地にも守る会の班をつ
くっていけるといい
ね」とも話しています。