くらしに役立つ制度紹介
「生活保護の車の保有条件が大幅な緩和に」
第1969号
生活と健康を守る新聞
2009年5月3日(日)
くらしに役立つ制度紹介
「生活保護の車の保有条件が大幅な緩和に」
【問】生活保護では「車は売却しないと保護できない」などと言って、車を持っていることを口実に、役所の申請拒否や却下、保護廃止が起きているそうですね。
【答】この間、こうした人権侵害の事態に対して、「車の保有を認めよ」と全国的に運動が広がりました。その結果、昨年、今年と車の保有条件が緩和(かんわ)されてきました。
それ以前は、@事業に必要な自動車、A障害者が自動車で通勤・通院・適所・通学をする場合、B山間へき地などに居住し、通勤する場合に限って認められていました。
−昨年は通勤用自動車の保有条件緩和−
【問】昨年は、通勤用自動車の保有条件が緩和されたと聞きましたが、どういう内容ですか。
【答】「公共交通機関を利用することが著(いちじる)しく困難な地域に住んでいる場合や職場がある場合」と「深夜業務で通勤する場合」には、車の保有が認められました。
また、通勤用自動車を保有している人が、失業や病気で就労を中断し、おおむね6か月以内に就労により保護の脱却をすることが見込まれ、自動車の処分価値が小さいと判断される場合は処分しなくてもよいとしました。
−今年は求職活動にも使用認める−
【問】今年の改定は、どんな内容ですか。
【答】@公共交通機関の利用が苦しく困難な地域に住む人が、通院・適所・通学(以下「通院等」)で自動車を使用する場合について、一定の条件のもとで、保有が認められました。
A保護開始時に失業し、おおむね6か月以内に就労する予定の場合、車の保有は認めるがその間の使用は認めないとしていたのを、求職活動に限って使用を認めました。
B保有が認められている自動車が使用に耐えない状態になった場合は、費用を保護費による預貯金でまかなうことなどができれば、更新することが認められました。
通院等で保有が認められる条件とは
【問】「通院等」で保有が認められる「一定の条件」とは、どんな条件ですか。
【答】「一定の条件」とは、@通院等に定期的に利用されること、A公的な送迎サービスなどがなく、自動車による送迎以外に通院等ができないこと、B自動車の処分価値が小さいこと、C自動車の維持費が他からの援助などでまかなわれること、D運転は本人または生計同一の人などに限定されることです。
【問】だいぶ緩和されたとはいえ、自動車の保有や使用については、まだきびしい条件があるのですね。
【答】そうですね。生活保護実施要領では、上記のように資産の保有を認める基本を示しています。@切実な実態にもとづき、健康で文化的な最低限度の日常生活を送る上で自動車が欠かせないと訴え、A学資保険裁判判決の「自らの生き方や生活を決する権利があり、保護費の使い方は本人の自由」との立場から改善の運動をさらに強めましょう。
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車の保有をふくめた資産の活用についての厚生労働省の基本的考え方
「生活保護実施要領」第3 資産の活用
最低生活の内容としてその所有又は利用を容認するに適しない資産は、次の場合を除き、原則として処分のうえ、最低限度の生活の維持のために活用させること。
なお、資産の活用は売却を原則とするが、これにより難いときは当該資産の貸与によって収益をあげる等活用の方法を考慮すること。
1その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持及び自立の助長に実効があがっているもの
2 現在活用されてはいないが、近い将来において活用されることがほぼ確実であって、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持に実効があがると認められるもの
3 処分することができないか、又は著しく困難なもの
4 売却代金よりも売却に要する経費が高いもの
5 社会通念上処分させることを適当としないもの
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