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「北陸中日新聞」99年 3月 21日(日)

子どもが忙し過ぎる

知ることより”感じる”力を

 

 紙芝居を始めて5年ほど。子どもがホッとできる、温かい時間をつくり出したい


初めて学校で紙芝居をや ったらすごく受けたので 「こんなに喜ぶのか」と思 い、本格的にやるようにな った。昨年は学校以外に四 十回ぐらい、いろいろな所 へ呼ばれて実演した。初め は「紙芝居?」と思ってい た子どもがだんだん引き込 まれ、登場人物に感情移入 するような気持ちは、昔も 今も変わらないですよ。
 でも、今、学校で見てい ると、低学年では走り回る 子や寝そべる子、どこかに 隠れて出てこない子などが 増えている。テレビゲーム の影響か、パンチやキック に訴える子も増えた。体と 体が触れ合う遊びが少な く、相手の気持ちや痛みが わからない。間違いや失敗 を気に掛ける子も多い。



 家庭で、親が子どもの目を見て話したり聞いたりする時間を、一日五分でも持ってほしい


 親の世代の育ち方が、今 の子どもに反映されてい る。行事で親がおしゃべり していたり、自分の子ども の出番が済んだら帰った り、いろいろな学校で問題 になっている。親に「子育 てでこんなところに気を付 けてください」と言ってい るだけでは解決できない。 学校でも「子どもはじっと 座っているもの」 「教師の 言うことを聞くもの」とい う頭でいる限り、ますます 大変になっていく。
 知識の多い子も増えてい るが、自分で体を動かして 何かするのは苦手。知るこ とよりも先に感じる力を育 てたいが、教えることが多 くて学校が忙しすぎる。教 科の学習も遅れないように 気を使う。
 紙芝居は国語や生活、道 徳の時間などでやってい る。今は人の話を聞けない 子が多いので、紙芝居や絵 本、童話などを読んでやる ことで、聞く力を育てるこ とが課題。それにテレビな どの間接体験が多いので、 柔らかいナマの声によるラ イブ感覚を重視している。



 学校完全週五日制に合わせた新しい学習指導要領ではもっと大幅に内容を減らすべきだった


 例えば、漢字は子どもに も教員にもいやな存在で、 千いくつも覚えるのは大 変。算数もかけ算は二年生 二学期で終了とか、今まで 僕らが大変と言ってきたと ころはちっとも変わってい ない。相変わらず覚えなけ ればならないことは多い。 ゆとりゆとりといいなが ら、子どもを追い立ててい るという気がする。
 本当にゆとりを求めるな ら、早急に三十人学級にし てほしい。今の議員さんに は「自分のころは五十人も いたが、問題なかった」と 強調する人もいるけれど、 今の時代はそれでは通用し ない。そんなこと言うなら きちんと学校を見に来てほ しい。
 それに教員の採用人数が 少なくて、若い人がいな い。子どもは先生が若いと いうだけで、すごくうれし いもの。本当に学校現場が 高齢化して、活気がだんだ ん薄れていくのは、将来の 社会を考えると大変な問題 だと思う。
 石川県松任市で、全小中 学校に学校司書を入れたと ころ、図書館に子どもがい っぱい来て、すごく生き生 きしている。公共事業ばか りに力を入れず、人を育て ることに、もっとお金かけ てほしい。「子どもは国の 宝」というが、今の日本で はとてもそう思えない。
(聞き手 報道都・大鹿雅 人)






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