こだわりの課題へ 戻ります



   

  今、「公共事業」を考える
 

今公共事業があちこちで問いなおされています。そこでいくつか調べた中から



「しんぶん赤旗」1998年4月5日(日曜版)」

  「経済これって何?

公共事業「景気回復の効果は」
 

 いま政府は、公共事業で景 気を回復させる−−と宣伝し ています。公共事業の経済効 果をどうみたらいいでしょう か。
 公共事業の経済効果は二つ の点から検討されています。
 一つめは、フロー(お金の 流れ)の効果で、どちらかと いうと短期的な景気対策で す。公共事業をおこなえば、 資材を購入し、新たな雇用が 発生します。たとえば道路工 事をおこなえば、建設業者は セメントや土砂を購入しま す。工事をするために労鋤者 を雇います。雇われた労勧者 は、賃金を得て、消費します。
 この効果は「産業連関表」 をもちいて、比較的簡単に計 算できます。団や自治体は、 不況になると公共事業の経済 効果を宣伝し、不況対策とし て公共事業を拡大しようとし ます。

 しかし、建設省や経済企画 庁の調査を見ても、公共事業 の経済効果は最近減少してい ます。たとえば建設省の計算 によると、一九八〇年から八 九年の問で、約五%低下して います。
 また政策としての是非を判 断するためには、他の政策と の比較が不可欠です。
 公共事業は、高速道路や空 港のような大規模な公共事業 と、生活道路、公園のような 生活関連型の小規模な公共事 業に二分されます。
 一般的には、後者の公共事 業の方が経済効果、雇用効果 が高く、建設省の計算でもそ れが裏付けられています。た とえば五億円以上の公共事業 と、一億円以下の公共事業を 比較しますと、経済効果では 約一割、雇用効果では五割程 度、後者の方が高くなってい ます。
 さらに最近では、公共事業 と医療・福祉施策の経済効果 が比較されていますが、こ れについても後者の方が効 果的だとされています。た とえば総務庁の計算では、 経済効果にかんしてはほぼ 同じ、雇用効果では、後者 の方が五割程度高くなって いるのです。

 二つめは、ストック(経 済的なたくわえ)の効果で、 長期的な経済効果のことで す。たとえば道路をつくる と、今まで二時間かかって いたところが一時間でいけ るようになったりします。 このように完成した公共事 業がもたらす経済効果で す。
 もともと公共事業の性格 から、ストックの効果があ ることは自明とされていま した(しかし、最近ではぼう 大な税金をつぎ込んだにもか かわらず、あまり有効に使わ れていない公共事業が多く紹 介されています。事業をおこ なう前に対費用効果を検討す べきだといわれだしました。  建設省も「投資の妥当性」 を数値で示すとしています。 投資額と比較して、便益額が 大きければ大きいほど、経済 的投資効果が高いというわけ です。
 しかし、公共事業は「公共」 という言葉がつくように、対 費用効果だけではストックの 効果をはかれません。
 また同じような事業の優先 順位を決める一つの目安とし ては使えますが、高速道路か 生活道路か、公共事業か高齢 者施策か、というような異質 な事業の優先順位付けには役 立ちません。何が本当に国民 のためになるのか、よくよく 考えたいものです。
 中山 徹
  (奈良女子大助教授)
 

 

こんな本も出ています
 



あなたのご意見・感想・メッセージの送り先: ksk@po.incl.ne.jp

ホーム hirotaのこだわりの課題

ページ全体のご紹介(初回時必見)