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    新日本婦人の会発行
「新婦人しんぶん」98年4月30日(木)発行

大好きな”所高”(所沢高校)だから

ー守りたい”自由・自主・自立ー



 子どもの”荒れ”が社 会問題になっているな か、埼玉・所沢高校の生 徒たちが、みずからの力 で感動的な「卒業記念祭」 「入学を祝う会」を成功 させたニュースは、全国 の人びとを驚かせまし た。生徒たちが「卒業記 念祭」「入学を祝う会」 をとおして何を考えた か、卒業生、在校生、お 母さんに聞きました。(名 前はすべて仮名です)



 優しさがんばり

 「半年もかけて準備した 『入学を祝う会』が大成功 に終わって、”一段落つい たね”という人がいたけど、 一段落をつけてはいけない と思うんです。あの『会』 は一朝一夕でできるもので はなく、先輩たちと先生た ちが長い期間をかけて自由 ・自主・自立の伝統を築い てきてくれたからこそ。在 校生の私たちは、今度はそ れを下級生に伝えていかな くちゃと思うんです」と、 三年生になったばかりの横 井めぐみさん。
 卒業生の原幸枝さんはい います。「在校生ってすご く優しくて、りっぱ。ある 新聞に、”生徒側も校長側も どっちもどっち。新入生の ことまったく考えていな い”と書いてあったけど、 事実とかけ離れています。 入学式に出た子が、”あの子 出たんだ”と見られないよ うに配慮したり、”出る、出 ない”は、自分で考えて選 択しての行動だから、これ からいっしよにやっていく ”所高生として、仲良くし ようね”ってことばが、自然 に口をついて出るんです。 後輩ながら、すごいなって 素直に感動しています」と。 お互いの行動に感激し合 い、ほめ合う子どもたち。



 システムを  崩したのは

 そもそも所沢高松は、「自 由・自主・自立」の伝統を 大切にしている学校です。 一九九〇年には、賛成・反 対の意見が分かれる「日の 丸・君が代」を、校内で強 制することに反対する「日 の丸・君が代に関する決議 文」と、自由な高校生活と 自治をうたう「生徒会権利 章典」を臨時生徒会総会で 採決し、問題があれば、教 職員と生徒で、話し合いを つくしてきめるというルー ルを確立してきました。
 ところが、教育行政の反 動化がつよまるなかで、昨 年四月赴任した校長先生 が、入学式でいきなり卓上 日の丸を出して演卓にの せ、ラジカセで「君が代」 を流したのです。理由は、 文部省の「学習指導要領」 にあるから、と。
 生徒のなかに、「卒業式 もどうなるかわからない」 という心配が生まれまし た。そこから、「学習指導 要領でさだめられているの は入学式や卒業式。それな ら『式』でなく『卒業記念 祭』の形式にしたら」とい う創意が生まれたのです。
 この案はクラスごとに討 議され、生徒総会で決議、職 員会議で確認されました。 なのに校長先生は独断で 「卒業式」を決め、先生たち 全員には、「職務命令」を出 して強引に実行したので す。
 四月九日、弁護士やPT Aの応援をうけ記者会見に 臨んだ生徒や卒業生は、堂 々と意見表明をしました。 「僕たちは、『日の丸・君 が代』の是非を問うている のではありません。『生徒 は指導の対象でおって話し 合いの対象ではない。ただ 従えばいいのだ』と押しつ けるやり方に、反対なので す。押しつけられて『式』 に出ることは、自治のシス テムが無視されていること を認めることになります。 何年間もかけて築いた民主 的ルールを校長一人によっ て破壊されることに対して の意志表示したのです」「文 部大臣が、実力行使でもの ごとを解決しようとするの は民主主義に反する、生徒 は考え直すべき、といって いましたが、実力行使をし たのは校長先生です」と。



 ”所高”生を育んだもの

 このような生徒をはぐく んだ”所高”の日常は・・。 「私は”所高”で、いい先生、 いい友だちにめぐり合え て、すごく充実した三年間 を過ごしました。先生も一 生懸命勉強し、広い視野で 深いことを、いろいろ教え てくれたし、進路では、担 任でなくてもだれでも気軽 に相談でき、人生の先輩と して教えられ たことがいっ ぱいでした」 と語るのは卒 業生の高田え み子さん。
 原幸枝さん も、「”所高” にあこがれて 入学しまし た。戸惑った のは、自分で 選択すること が多いこと。 まず、服装。 朝起きるな リ、”ああ、何 着よう”。で も、着たいも の着ていいん だとわかると、毎日がすご く楽しくて」。
 子どもたちが一致して語 るのは、”所高”名物の体 育祭、文化祭、それに卒業 記念祭の前身、門出式。す べて生徒の創意で、奇想天 外。楽しくて、おかしくて、 思い切り大声を出している うち、いつの間にかみんな にとけ込んでしまうと。 「”所高”の生活で自分が エネルギーを持った人間で あるとわかり、自分で考え て選択することが身につき ました。いろんな人がいて、 いろんな考えがあってい い、ということも学びまし た。この学校のいいところ は、みんなが自分の意見を 持ち、それを言う揚がある こと。反対意見も堂々と言 える。この学校は思いきり 発散できるから、”バカ、死 ね”の落書きはないし、い じめも不登校もない」。
 大好きな学校だからこ そ、自由・自主・自立のよ い伝統を守りたいのだと生 徒たちは切実です。



子どもに学んで

 生徒の行動に、PTAは 組織をおげて応援していま す。PTA会員の一人、A 子さんはいいます。「子ど もは素晴らしいですよ。あ あいうふうに、『卒業記念 祭』、『入学を祝う会』を ちゃんとやっちゃうんだか ら。親としては、子どもが 楽しく学校に通い、生きい きしている姿を見たら応援 したくなる、それが原点じ ゃないでしょうか。はじめ は、校長先生が連発する『学 習指導要額』が、どんなも のかも知りませんでした が、おかげで学ぶ機会が次 つぎあたえられ、勉強して 事実を知れば知るほど、校 長先生の誠意のなさ、強引 さにおどろき、こういう人 が校長先生では困ると思い ました」と語ります。
 ある母親は、「私は、新 入生の親として、入学式に 出席するつもりで した。でも”有志” の腕章をつけた大 勢の生徒たちが、 校内の民主主義が 土足で、ふみにじら れる危機を自分の ことばで必死に語 っている姿を見 て、式場にはいれ ませんでした。お となは子どもに学 ばなければならな い、”所高生に学 べ、親は変わるべ し”それがこれからのキー ワードだと思いました」と。
 来年は国連で「子どもの 権利条約」が採択されて十 年、日本で批准されて五年。 今年五月末には、ジュネー ブの国連・子どもの権利委 員会で、日本政府の報告書 が初めて審査されます。日 本政府が条約の普及、実行 にいかに消極的であって も、子どもの権利条約は確 実に子どもの心をとらえて いると感じさせられまし た。所沢高校の生徒たちが 示してくれたものは、まさ に、条約の実行そのもので した。
 新婦人埼玉県本部と所沢 支部は、所沢高絞の生徒た ちを支持し、民主的ルール を壊そうとする動きに対し 抗議、要請しています。




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