ばらぐみのお部屋から
                           横山ゆかり


 「今日から、ばらぐみさんよ。頑張っていこうね!」
と二十一人のお心を一つにしてスタートを切った4月・春。
憧れのばらぐみさんになれたとあって、とにかく嬉しくて何をするにもはりきっていました。
 
そんなばらぐみさんがまず最初にゆかり先生に言ってきたことは…

「ドッヂボールいつからするの?」
でした。

ゆかり先生としては、4月はまずばらぐみとしての自覚を確認しながら、一人一人
と向き合う予定でした。しかし先生の顔がよっぽどボールに見えたのでしょう。
ゆかり先生の顔を見ればさえ、

「ドッヂは?」「明日はしてくれる?」
の質問攻め。

去年のばらぐみさんがドッヂボールをしていたのがとっても楽しく見えていたんでしょう
ね。だから、ばらぐみ=ドッヂボールという方程式が出来上がってしまっていて、

「なんでばらぐみになったのにできないの?」

と納得ができなかったのです。
 そんなみんなの熱い想いに根負けしたゆかり先生。4月の半ばから始めることに。
やり始めは、投げ専門・逃げ専門にわかれ、ボールも投げるというより、転がした
り、床に投げつけたりといった感じでした。でも、毎日やっていくうちに、みるみる
腕をあげたばらぐみさん。今では実習生相手でも互角の勝負を展開できるからびっく
り。見ていても手に汗握るラリーが続き、ゆかり先生のジャッジの声もついつい大き
くなってしまう今日この頃なのでした。
 
こんなばらぐみさんがとっても大きく見えたのは、のとじま水族館に行った親子バス
遠足の時でした。暑くてもしっかり守ったお礼拝の姿はさすが!と思いましたね。
それだけではありません。ゆかり先生が一番印象に残っているのは、お家の方にべっ
たりあまえている小さいクラスのお友達とは対照的に、お家の方が一緒にいてくれる
という安心感の中で、大好きなお友達と水族館の中を探検している姿でした。

迷子にならないかと必死で追いかけるお家の方の心配をよそに、それはそれは楽し
そうに目をキラキラ輝かせて走り回るお友達が頼もしく見えました。のとじま水族館
はそれまでも家族で何度か言っているでしょうが、この日の水族館は格別楽しく感じ
たのではないでしょうか。
 
6月には新しいお友達を二人も迎え、二十三人になったばらぐみさん。ますますに
ぎやかになりました。そして新しいお遊び空間【テラス】では、お野菜の成長観察
や、種の発芽に目を見張る毎日を過ごしました。おたまじゃくしがカエルになる過程
もみることができました。

そして、このことをきっかけに、ばらぐみさんでは「世界に一つだけの紙芝居」作りに挑戦。
♪五匹のかえる♪というお歌から、かえるの冒険をテーマにみんなでお話
を考え、ひとり一場面ずつ絵を描き、それを紙芝居にしたのです。
そして保育参観でその紙芝居をお家の方にも見ていただいたのでした。自分が描い
た場面にくるとどの子もにっこり。そしてその満足そうなお顔に「自分たちだけの紙
芝居」に対する自信すら感じることができました。ひとりでは小さい力も、みんなで
心を一つにすることにより大きな力になると言うことを学んだ紙芝居作りでした。
そして、季節は夏―あっという間に一学期も終わりを迎えようとしています。細く
て小さかったお野菜の苗が大きな実を結んだように、この一学期でばらぐみさんも体
ばかりではなくお心も大きく成長しました。そんなみんなを待っているのは、そう、
お泊り会です。去年の経験を生かして、思う存分楽しみましょうね。今年の夏はみん
なにとって特別な夏になること間違いなし!と、はりきるものの、元気過ぎて自己主
張のぶつかり合いがあるのも事実。

わんぱくでもいい、おませさんでもいい。でも、それ以上に人を思いやることのできる
優しいお友達になってね!
   
 





と七夕の夜、そっと
星に願いをかけたゆかり先生なのでした。。