それは、梅雨に入って十日程経った頃、
    この日は朝から静かにシトシトと雨が降っていました。

    登園してきたしらゆりっこ達は、こんな雨の日でもあいかわらず元気いっぱい!
    ホールでは思い思いの遊びの輪ができていました。
    大型積み木で大きなお家を作ったり、ボール遊びをしたり、
    ハウスの中でおままごとをしたり、そうかと思うと、
    工作コーナーで空き箱や紙で作る事に夢中になっていたりもします。
    最近では、カブト虫の幼虫をはじめ、かまきりの卵、バッタ、ちょうのサナギなど、
    玄関の飼育ケースも子ども達の大好きなコーナーのひとつです。

    そんな朝の自由遊びの時間、遊びの歓声に混じって「先生ー!」
    と大きな声、どうしたんだろうと声のする方を向いてみると、

    

    とまた大きな声。
    『どうやらかたつむりが園内に入り込んで大事件になっているらしい。
    これは一件落着しなくては!』
    と勝手に思い込み、私は声のする方に大急ぎで行ってみました。
    「どこにいるの?かたつむり?」
    ホールの壁にくっついていないかとキョロキョロしていると、
    「あそこだよ!」
    と子ども達の声。
    それはホールのばらぐみゆりぐみのお部屋に向かう手前の大きな窓。
    そして窓の外には、その時まさに満開のアジサイの花が
    いっぱい咲き誇ってるのでした。
    「ほらほら!あそこだよ!」
    と子ども達が大興奮で指差す先をよーく見ると、
    雨に濡れたあじさいの葉っぱの上を気持ちよさそうに
    ゆっくり進むかたつむりの姿が!

    「ほんとや!すごいね!よく見つけたね!みんな大発見やね!」
    と私もしばらく優雅に進むかたつむりの姿を眺めていましたが、
    「みんな、ちょっとここでかたつむりさん見ててね」
    と言い残し、雨の中外へと飛び出しました。
    幼稚園の建物をぐるりと回って普段は足を踏み入れない裏まで走り、
    みんなが見ているアジサイの窓の所まで来ると、
    「わあ!まき先生かたつむりつかまえて!」
    と大合唱の子ども達。「よーしまかしとき!」と私。
    「雨降っとるよ」と心配してくれた子も。
    「平気だよ!どこにいるかな?かたつむり」・・・そしてかたつむりゲット!
    「先生すごーい!」
    と言われ、まるでヒーロー気分。
    園に入ろうとすると、
    「あ、あそこにもいるよ」「うわあ!あんな所にも!」
    よく見るとかたつむりはアジサイのいろんな所を歩いていました。
    私は身体を伸ばし、手をいっぱいにのばして、雨に濡れながら、
    結局3匹も捕まえたのでした。 
 
    こうして、3匹のかたつむりは玄関の飼育コーナーの仲間入りをしたのでした。
    かたつむりが飼育ケースにおさまると、
    ケースに顔をつきあわせながらみんなで覗き込み、
    誰かが「エサあげなきゃ!」と言うと、誰かが
    「ちかこ先生にもらってくるよ」と給食室にダッシュ!
    なんとも忙しいしらゆりっこ達。
    でもその顔を見ると、このすばらしい発見に
    どの子も目をキラキラさせていました。

    こうなると、もうこの日のホールの時間のトピックスは急きょ変更!
    今日捕まえたかたつむりの紹介、そして、かたつむりの不思議を調べて
    いろいろとお話ししたのでした。
    「かたつむりって食べた食べ物の色のウンチするんだって!」
    「ちかこ先生にさっきにんじんもらったからオレンジのウンチするぞ!」
    などなど・・・この日はかたつむりの話題でいっぱいのしらゆりっこ達なのでした
    それから2、3日して、かたつむりの観察をしていた子が

    

    と、まるで世紀の大発見のようにみんなにふれまわりました。
    その声に集まってきたお友達も「ほんとや!先生のゆうた通りやね」
    「にんじんかじった跡あるわ。
    かたつむりさんってなんでも食べる歯があるんだったよね」
    とまたまたかたつむりの不思議にみせられるしらゆりっこ達なのでした。



    この世の中は不思議がいっぱいです。
    子どもはもちろん大人だって、まだまだ不思議な事、
    知らない事がいっぱいあるはずです。
    このステキなかたつむり事件を通して、
    遊びの中でそのいろいろを学んでほしい。

    楽しみながら身をもって体験してほしい思うのでした。