今年も例年のごとく教育実習生がやってきました。
将来、幼稚園の教諭や保育園の保育士を目指す学生達の幼稚園実習です。
今年やってきた実習生は北陸学院短期大学保育学科の学生が、
2つの期間に分けて6名。金城短期大学幼児教育学科の学生が、1名。
あわせて7名でした。全員終了して学校に戻りましたが、
9月になると同じ北陸学院短期大学コミュ二ケーション学科の学生が1名、
実習にやってきます。

実習生が幼稚園にやってくると、みんな一斉に群がります。
子どもたちは新しい先生に興味津々。

ちょっと不適切な表現ですが、新しいおもちゃが来たときの様子と似ています。
とにかく実習生の先生のとりっこが始まるのでした。
それは、実習生の方にも幸いなこと。

幼稚園実習を緊張しながら迎える実習生にとって、たとえどんな風に扱われようとも、
子どもたちに歓迎されることは嬉しいことです。
だから大喜びで子どもたちと一緒に遊びはじめます。
それはとてもとてもほほえましい風景なのでした。

けれどもこの最初の風景だけ見れば、中学生や高校生の職場体験でも一緒です。
幼稚園教諭を目指す教育実習生と中学・高校の職場体験とは違わなければなりません。
その決定的な違いは、実習日誌を書き、教師の指導があり、
実際に保育をやってみるということ。
特に、実習日誌は、1日の流れから子どもたちの様子、
自分の感じたこと学んだことなど、きちんと記さなければなりません。
しかもその後に、担当の先生から一日を振り返る指導の時があり、
しかも日誌にも指導教諭のコメントが記されることになるのです。

たとえば5月には、
野菜苗の植え付けをしました。
写真入りの「しらゆりっこだより」で、
報告がされています。
「子どもの野菜と野菜のお母さんとを
会わせてあげよう」。

そんなクイズが出されて、
みんなで一緒に考えます。
間違えると・・・子どもの野菜は、
え〜んえんと泣いてしまいます。


かわいそうだからと、
みんなで一生懸命考えます。そして、みごとお母さんと
会えてから・・・野菜苗の植え付けになるのです。
最初からすぐに植え付けではありません。
ちゃんと野菜の苗と、野菜のイメージが結びついてから植え付けるのでした。
その時の様子が時間を追って実習日誌に記され、実習生の感想も記されます。

「子どもたちが野菜に興味を持ってもらうために、
いろんな工夫がされていることがわかりました。」
「いろいろな工夫がされている。」
ここが大事なんです。
 
幼稚園の保育には「ねらい」があって、
その「ねらい」を達成するために、具体的な「活動」があるのです。
たとえば、子どもたちにはこんな事を知ってほしいと思います。

@野菜は、野菜の苗からできること。

野菜は、スーパーの野菜売り場に「わいてくる」わけではないのです。
ちゃんと野菜苗からできるのだということを知ってほしいのです。
またこんな当たり前のことも、当たり前のように知ってほしいと思います。

Aきまった野菜は、きまった苗からできる。

すなわち、トマトの苗からはトマトができる。
なすの苗からはなすができる。
そんな当たり前のことを知ってほしいと思います。
トマトの苗にはなすはできないし、なすの苗にはトマトができない。
当たり前のことを、しっかりと体験の中で知ってほしい。そう思います。
 

ある時実習生から、質問を受けました。



思わず答えました。

「本当は行きたいんだけど、
良いところを知らないんだ。
ハウスの中じゃだめだしね。
露地栽培のところで、いちご狩りを
させてもらえるとありがたいんだけどねぇ。

だけど・・・そのかわりに、
すいか狩りには行くことにしているんだ。」
 
そして聞いたのです。
「何でいちご狩りがいいと思ったの?」
するとその実習生はこう答えました。
「なんだか楽しそうだから・・・。」

なんだそうかと思いました。
これでは教育実習生の質問にはなりません。
それらならと、続けてこんな質問をしてみたのでした。

「羽咋白百合幼稚園では、
『すいか狩り遠足』に行くんだ。
『りんご狩り遠足』にも行くよ。

そして『いもほり遠足』にも行くんだ。
食べ物を取りに行く大事な園バス遠足はこの3つ。

なぜこの3つだと思う。」

実習生達は???のお顔をします。


「楽しそうだから・・・」
さっきの実習生が答えました。
「その答えだと、百点満点の30点しかあげられないよ。
『ねらい』が何か考えてごらん。何のために行くのか。
なぜこの3つなのか。考えてごらん。」


しばらく考えて・・・「わかりません。」

「じゃ、ヒントを一つ。すいか、りんご、サツマイモはどこにある?」
あっ、という顔をした実習生達。

「そう、土の上に実るもの。
土の中に実るもの。
そして、木の上に実るもの。
実る場所が違うだろ。
子どもたちには、そのことを知ってほしいんだ。
だから、園バスの中では、
その前に体験したことをみんなでおしゃべりしながら行くんだよ。
『りんごはどこになってた?』
『おいもはどこになってた?』。この会話が大事。
            
ただね、いもほり遠足だと、
やきいもパーティーができるけど、
大根やゴボーじゃ、ちょっとねぇ。
わくわく感がないじゃない。
だからサツマイモなんだ。」

ちょっと納得の実習生達。
幼稚園の保育って、
結構いろいろ考えて組み立てられているんだなぁって、
知ってほしいと思いました。