「楽しい遊びが、
  本物の知識となるに違いない」


 

            
        園長 釜土達雄


去る七月十七日、ばらぐみさんと一緒に、
「磯探検」に行ってまいりました。
場所は「柴垣海岸」。

毎年行っている同じ磯ですが、
ばらぐみさんしか行かない場所で、
ばらぐみさんしか行かない磯探検なので、
どの子にとっても初めての経験です。
前日に自分専用の水槽を作り、
やどかりやカニのお話を聞き、
「海の生き物」に興味を持って、
楽しみに楽しみにしていた磯探検でした。

本当は十時十五分出発の予定でしたが、私の都合で出発が十時四十分になってしま
いました。けれども子どもたちはちゃんと待っていてくれました。バスの中からも大はしゃぎ、どれほど楽しみにしているかを、生き生きとお話ししてくれました。
十分少々で到着。
海岸を幼稚園バスで大きくぐるぐる回って、
目的の場所について、海に向かって歩き始めたのです。


子どもたちはお出かけが大好きです。
自分一人では行くことが出来ないところがいっぱいあるので、お出かけは大好きです。ましてや、お友達と一緒のお出かけはもっと大好き。しかもそれが、自分がよく知らない初めての経験になるところであれば、その喜びは何倍にもなるでしょう。
磯には、見たことのない生き物がたくさんいます。
絵本や図鑑でしかお目にかかれない生き物も
たくさんいます。
それらを直接に見ることが出来るのですから、
その喜びはとても大きいのです。

やどかりを見つけました。カニを見つけました。
わかめを見つけました。
それらを自分専用の水槽に、入れて持ち帰ります。
ところが、なかなか見つからないお友達もいます。
「やどかり、どこにおるかわからん!」
そんな声が聞こえます。「カニ、逃げるのが速い!捕まえて!」
そんな声が聞こえます。わたしたちが「しただみ」とよぶ巻き貝を見つけて、
「これ、やどかり?」。聞かれた友達が答えます。
「ヤドカリは、水の中に入れたら、足が生えてくる。
これ、水の中に入れても足が生えてこないから、やどかりと違う。」
わたしは、妙に感心しました。
「そうか、ヤドカリは、海水の中に入れると、足が生えてくるのか・・・。」
またヤドカリはそれこそ「宿借り」ですから、いろんな形の貝殻を借りています。
ところがそれが、いろんな種類のように見えるらしい。
「細長いヤドカリ見つけた!」
「ボクのは丸い!」そんな一言一言が飛び交っていました。
 
すると遠くの方で声が聞こえます。
「先生!さかないっぱい!つかまえて!」
小魚の群れが、少し離れたところを泳いでいきました。
みんなが一斉に指さし、叫んでいるのでした。
磯にすむカワハギの仲間を見つけました。メジナの子どもも見つけました。
ヒトデも見つけました。
変わったところでは、クラゲを見つけましたし
ウミウシも見つけました。
それらを自分の水槽に入れるばかりではなく、
幼稚園のみんなに見せてあげ
るために持って帰ることにしたのです。


幼稚園に戻ったばらぐみさんは自慢げでした。
自分たちが捕まえてきた生き物です。何度も何度も見に来ます。
先生から聞いた名前、「くらげ」「ヒトデ」という名前を、ゆりぐみさんやすみれぐみさんに教えています。
「みんなで捕まえてんよ!」
その言葉には自信が満ちていました。
小さな水槽を何度も何度も、
そう何度ものぞき込んで、
お友達とお話ししているのです。
 
磯にいたのはわずか一時間少々。
ところがその経験が話題となって、
何時間もおしゃべりが続くのです。

知識は、経験の中で獲得していったものが、もっとも確実な知識となるでしょう。
知識は、喜びの中で得たものが、本物となるでしょう。
苦労をして捕まえ、うまくいかないで友達に助けてもらい、何度もおしゃべりをし
ながら、観察をして発見していったものが、本物となるのでしょう。
磯の生物のお話しは、何度聞いてもなかなかわからないに違いないけれど、実際に
行ってみて、あんな風に経験をしてみたら、きっとすぐにわかってしまう。
体験や経験が、どれほど大事なことだろうと、思います。
遊びの中で知っていった知識が、本物となる。そう思います。

いよいよ夏本番。


夏にしかできない経験を、たくさんしてもらえたら・・・と思います。
それが、本物の知識になるために。