それは花の日の事でした。
 しらゆりっこ達が持ってきてくれたお花を花かごにして、そのたくさんの美しい花かごを前に礼拝を守りました。礼拝の中で、「みんなは決してひとりで大きくなったんじゃないんだよ。周りのいろいろな人たちに守られ支えられ大きくなったんだよ」というお話しを聞きました。

 そして、幼稚園のお友達はお花とありがとうの気持ちをあらわそうと、花かごを持って、花の日訪問に出かけました。
 訪問先は消防署、警察署、市役所、園医さんなどです。訪問する前に、訪問先の方々はみんなのためにどんなお仕事をしているのかという事を考えました。「一生懸命に働いてくださっている方達一人ひとりのおかげでみんなは大きくなる事ができるんだね。」

 訪問先の方々は、幼稚園のかわいらしい訪問者達を心から歓迎してくださり、きれいな花かごを受け取ってくださいました。
 そして、「車に気を付けてね」とか「先生の言う事をよく聞いてね」とか「元気で幼稚園に通ってね」などなど・・・たくさんの言葉をかけてくださいました。
 
そんな訪問先、消防署での出来事です。
 お花と感謝の気持ちのお言葉をプレゼントした後、消防士さんが「消防車の見学をしましょう」と言って、消防署の車庫に止まっていた消防自動車や救急車の中で、一番大きいはしご消防車を車庫から出してくださり、しらゆりっこ達の前に止めてくださいました。
 そして「子ども達はまだ無理ですが、先生どなたかはしご車に乗ってみませんか?」と消防士さんが提案してくださったのです。
 なかなかできない体験だし興味もあったので、是非とお願いしました。
はしご消防車試乗体験は大野先生とわたし。消防士のお兄さんが一緒に乗ってくださいます。
 頭にヘルメットを付けて、腰に命綱を付けてはしご車に乗り込みました。
 「いってきま〜す」「いってらっしゃい」挨拶を交わすと、はしご車のはしごは私たちを乗せ、ゆっくり上っていきました。
 「先生頑張れ〜!」しらゆりっこ達が熱く見守ってくれています。「ありがとう!頑張るよ」
 はしごは更に上へと上っていきます。
 「おーい!ヤッホー!」と声をかけると「おーい!」としらゆりっこも必死で声をかけてくれます。
しばらくして、随分地面が遠く感じる!結構高くなったなと思って、消防士さんに「どのくらい上がりましたか?」とお聞きすると、「今、十五メートルくらい。これの倍あがりますよ」と教えてくれました。「これの倍!?大丈夫かなあ」内心乗ってしまった事にちょっぴり後悔し、ドキドキ・・・。はしごはどんどん上がっていきました。
 下で応援してくれるしらゆりっこ達を見ていると、はしご車のはしごが上がっていくにつれ、頭にかぶっている子ども達の麦わら帽子の集団が、どんどん小さくなっていきました。そして、その麦わら帽子が豆粒程になった時、お互いに声も届かなくなりました。
 はしごの高さ三十メートル。車の高さ一.五メートル。合わせて地上三十一.五メートル!私にとって初めての想像以上の高さでした。そして、ここで働く消防士さんのお仕事に、尊敬と敬意の念でいっぱいになりました。

 はしご消防車のマックスに伸びたはしごのてっぺんで、怖いけどしっかり目を開けて回りの景色を見てみました。
羽咋市役所の天井が下に見える!。羽咋小学校の運動場で体育をしている小学生がアリのように小さく動くのが見える!海が見える!山の遠くまで見える。すごい!すごい!
 しらゆりっこ達にもこの景色をみせてあげたい!私はその四方八方を持ち込んだカメラで夢中で撮りました。 
 きっかけは花の日訪問でしたが、貴重な体験ができました。しらゆりっこ達はキラキラした目で、はしご車から降りてきた私をつかまえて「どうだった?」と聞いてきました。「とっても遠くまで見えたんだよ!びっくりしたよ!写真撮ったからみんなにも見せてあげるね。」と答えました。

 園に戻り、さっそくはしご消防車の上で撮った写真を大きくプリントアウトしてみました。
 そこには遠くの山々や海までが、しっかり映っていました。そしてよく見てみると、コスモアイル、ゆりっこ児童クラブ、千里浜保育所など知っている建物の屋根がしっかり映っていたのです。そしてもっとよくみてみると、数人のしらゆりっこ達のお家も映っていたのでした。
 四方八方を撮ったので、一枚目の写真と二枚目の写真の山と山がつなぐ事ができたり、次の写真の海と海をつなげる事ができたりして、とても面白いと思いました。
 そしてつながった六枚の写真をホールに貼り付けてみました。
 「はしご消防車のてっぺんで撮った写真だよ!」「うわぁ!町だ!」と群がる子ども達!
 「ほら○○ちゃんのお家だよ!」「本当?」自分のお家の屋根なんで見たことがないすみれぐみのお友達が、不思議そうに眺めていました。
 また、「ぼくの家の屋根か見えるね。この道路を通ってお家に帰るんだよ」とか、自分の家が映っていないお友達も、「ぼくの家はこの建物の近くだよ」「幼稚園は市役所の建物の後ろに隠れて見えないんだよね。」などなど・・・ばらぐみさんぐらいになると、以外と位置関係がわかっているんだなと感心してしまいました。
 
 さらに、こんな事も!
「大きくなったら消防士さんになるの!先生みたいにはしご車に乗りたいの。女の子でも消防士さんになれるよね。だって先生は女の子なのにはしご車消防車に乗れたもの」と消防士さんのお仕事がしたいというより、私もはしご車に乗りたいという強い気持ちでいっぱいなのでしょうね。
「消防士さんになれますように」と七夕の短冊にも書いてお星様にお願いした彼女。
 何はともあれステキな夢だと思いました。


 違った角度からみると、思いがけなくいろいろな発見ができるものです。面白いな!とか、不思議だな!とか、興味を持つきっかけになったらいいなと思います。
 幼稚園は子ども達にとって毎日楽しい事で満ちている場所。ワクワクする事をさがしている場所でありたいと思います。

 明日も面白い事いっぱいありますように・・・・・。