暑い夏になりました。園庭の花壇の青々とした葉が青空に美しい季節です。
 
ゴールデンウィーク明けの五月のホールの時間。しらゆりっこ達の前に野菜の苗が並べられました。トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、キュウリの夏野菜の苗です。
 みんなが夏野菜の苗の観察をしていると、そこにかごに入ったトマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、キュウリの実が登場しました。
 そして、かごの中の野菜達は子ども達に向かって言うのです。「お母さんはどこ?」
 実った野菜が子どもならば、夏に野菜を実らす野菜の苗はお母さんというわけです。
 かごの中の野菜達はしらゆりっこ達に訴えかけます。「お母さんはどこに行ったの?ねぇ知らない?」野菜達がみんなに語りかけた瞬間から、みんなは困った人を助けるヒーローの気持ちになっています。
 「知ってるよ〜!教えてあげる。ぼくが(わたしが)お母さんのところに連れて行ってあげる」と一斉に手を挙げるしらゆりっこ達。さあ、しらゆりっこ達は苗と野菜の親子当てができるでしょうか?
 夏野菜のお母さん(苗)は、よく見ると同じ緑色なのに、葉っぱの形、大きさが違います。色も微妙に違っています。
 においをかいでみたら、トマトの苗はトマトのにおいがするんです。よく見たらナスの苗はナスと同じ紫色の筋があります。ピーマンやキュウリの苗もピーマンとキュウリと同じ緑色をしているんです。
 とっても難しかったのだけど、しらゆりっこ達は、よく見て考えてそれぞれの苗の隣にそれぞれの夏野菜を置く事ができました。
 無事親子当てが完成すると、今度はばらぐみさんに、夏野菜の苗を植えてもらいました。一人に一つずつの苗を選んで、園庭に耕した畑とプランターに丁寧に植えました。
ジョーロでお水をたっぷりやると、「大きくなりますように」とみんなでお祈りをしました。
苗はどんどん大きくなり、みんな立派に実を結びました。お天気が良い日は園庭で遊ぶしらゆりっこ達ですが、「トマトさん大きくなったかな?キュウリさん大きくなったかな?」と先生が言うと、小さなたんぽぽぐみさん、ひよこぐみさんも、園庭の遊具の所ではなく、真っ先に野菜の苗の所に走っていって、
「あった!あった!」と喜んでいました。
 こうしてみんなに見守られたお野菜は、毎日のように収穫し、給食室で変身し、給食の時間にみんなで感謝していただいたのでした。

 子ども達にとって収穫の時は、このお野菜はこんな苗が大きく伸びて、こんな風に実って食べる事ができるんだと実感できる時です。
 もしかしたら、野菜はスーパーで収穫すると思っていたかもしれません、
 このような体験は子どの達にとって、食育はもちろん常識そのものへとつながってゆくでしょう。
幼稚園では、夏野菜の他に、七月にはとうもろこしの収穫、二学期にはさつまいも、りんご、白菜、大根の収穫を行います。
 実りの秋の収穫時には、野菜・果物のどの部分を食べるの?という事を学ぶ事にまで発展していきます。根っこの部分を食べるもの、茎の部分を食べるもの、葉っぱの部分を食べるもの、実の部分を食べるもの、種の部分を食べるものなど、野菜・果物の食べる部分は様々な種類に分けられます。野菜・果物の不思議やおもしろさを感じる事ができたらいいなと思っています。
 夏野菜の苗を植えてから、二週間程した五月の終わり頃、今度はホールの時間に花の種の紹介をしました。春見つけで、小さな草花にもちゃんと名前がある事を知ったしらゆりっこ達。
 あさがお、ひまわり、ほうせんかの種。お花の写真も見せて、どの花も夏にきれいに咲くお花である事を説明しました。
 花の種というものは、びっくりする程小さなものです。
 「この中にお花になる命が入っています」と先生がお話しすると、『こんな小さな種の中にお花も葉っぱも入っているなんてほんとかなあ?』
と言わんばかりのお顔で、小さな種を見つめていました。
 あさがおの種をよく見ると、真っ黒でちょっとかわった形をしています。
 ひまわりの種をよく見ると、楕円形でしましまの模様があります。
 ほうせんかの種をよく見ると、とっても小さくてまん丸です。
 三種類の種は小さいけど、全く違う形、色をしています。
 種の観察をした後で、ばらぐみさんとゆりぐみさんはお花の種蒔きをしました。
 先生は三種類の種を手に、「今から種まきをするんだけど、この中から種を一つ選んで土の中に植えましょう。」と言いました。
 一つだけと言われると、しらゆりっこ達は、それはそれはよく考えていました。あさがおのお花を知ってるからとか、ひまわりが背高のっぽになるからとか、ほうせんかのお花の色がピンクだからとか、ひまわりの種の模様がかわいいからとか、色々考えた結果、どの種にするかを決めると、一粒を大切に手にとって、そっと土の中に植えました。
 そして、野菜の苗の時と同じようにたっぷりお水をあげて、「きれいなお花を咲かせますように」とお祈りをしました。
 
 四、五日の時が過ぎると、みんなが種を植えたプランターから、小さな芽がつんつんと出てきました。「芽が出た、芽が出た」と最初に見つけた子は大発見!と言わんばかりに目を輝かせて、先生やお友達に報告して回っていました。
「すごいね!よく見つけたね!」と言われ、見つけた子はますます大得意。お花のプランターの周りには、あっという間にしらゆりっこ達でいっぱい!ひとつの事を共有する喜びに包まれるのでした。
 さあ夏本番!もうすぐあさがお、ひまわり、ほうせんかは、今年もきれいな花をさかせてくれる事でしょう。
 

 おまけですが、夏野菜の他に三種類のナゾの苗を植えました。そして、最近そのナゾが解けてきたところです。
 ナゾAの苗はオクラです。きれいなお花が咲いたと思ったら、お空に向かって実が伸びつつあります。食べてもおいしいのですが、もっと大きくなったらオクラスタンプで遊びたいなと思っています。
 ナゾBはとうもろこし。小さなとうもろこしですが、しっかり実を付ける事ができました。
 ナゾのCは枝豆。食べた事があるんでしょうね。「おまめ!」と保育園のお友達も喜んで実っている様子を見ています。
 
 園では様々な体験をします。このような楽しい体験は、これから大きく成長した時の興味のきっかけになってくれたらいいなと思います。
幼稚園の毎日は、まさにこの興味のきっかけにあふれているのです。