十月の四週目の事です。
ホールの時間に登場した赤い箱。箱の上部には丁度手が入るくらいの穴が開いていて、穴の周りには「1、2、3、4、5」と数字が書かれています。
「あっ、お金の箱や!」「やったーこれ明日からするの?」心待ちにしていたのでしょう。すぐにばらぐみさんの方から声が聞こえてきました。
「そうです。明日からしらゆりぎんこうがオープンします。一日に五枚のお金(しらゆりコイン)を引く事ができますよ。」
 お金は一円(メロン)、五円(いちご)、十円(バナナ)、五十円(りんご)、百円(みかん)の五種類で、それぞれ数字の他に果物の絵が描かれています。
「お金を引いたら、今までほしい時は普通に先生にもらっていたぬりえや折り紙も、お金と交換する事になります。」
 これは何だろうと不思議そうに見ていたすみれぐみさんやたんぽぽぐみさんのために、丁寧に説明をしました。 
 
 
明日からお金ごっこが始まるという事で、この日、しらゆりコインの紹介をした後に、このお金を使って、お金を入れるおサイフを買いましょう!というごっこ遊びをしました。封筒で作られたおサイフには、子ども達の大好きな仮面ライダーやプリキュアなどのキャラクターの絵が描かれていて、しらゆりっこ達のテンションはマックスに!
 先生からしらゆりコインを一つもらうと、そのお金と引き替えに、自分のお気に入りのおサイフを手に入れたしらゆりっこ達。そのおサイフは、お部屋に持っていって、クレヨンや色鉛筆で色づけし、自分だけのオリジナルサイフが出来上がりました。
 さて次の日。先生のお部屋の前には昨日紹介したお金ボックスが!
「しらゆりぎんこうがオープンしましたよ」先生の合図と共に、しらゆりっこ達は自分のおサイフを持ってボックスの前に並びました。
「いち、に、さん、し、ご」と数を数えながら、ボックスの穴の中に手を入れて、お金を一つずつ引き出します、そして、ボックスの上に書かれた数字の上に置いていきます。「あ!みかんのお金」「ひゃくえんだよ」など、お友達のを見ながらも会話が弾みます。
 ばらぐみさんとゆりぐみさんが引くボックスのお金は、四角い紙に丸いお金の絵が描かれているので、自分で切ってお金の形にしなくてはいけません。四角いお金は大切に自分のお部屋に持っていって、慎重にハサミで切って丸いお金の形にしました。
 又、五円や五十円など、真ん中に穴の開いているお金は、「こうすればいいんだよ。」と丸く切ったお金を半分に折って切ると真ん中に穴が開くという仕方を、お互いに教え合いながら上手に切る事ができました。
 こうして、しらゆりっこ達のおサイフは少しずつしらゆりコインでふくらんでいきました。

 そんな十一月の一週目。
 今度はホールの時間に、五百円玉が紹介されました。今までのお金より少し大きくて、ぶどうの絵柄です。「このお金を手に入れるためには、百円玉が五個必要です。ほしい時は、百円玉を五個おサイフから出して、『両替してください』って言ってください」
 さあ、しらゆりぎんこうでは、お金を引いて集める遊びの他に両替遊びもスタートしました。
 「両替してください。」と言って百円を五枚数えて持ってくる子、持っているお金を全部出して、先生やお友達と数えてみる子など様々ですが、みんな両替遊びを楽しんでいる様子でした。
 そんな時「じゃあ、これは?両替できる?」はたして百円以外でも両替はできるのか?と不思議に思ったお友達の声がありました。
 それならばと、ホールの時間に五個集めると変身できる百円玉と十円玉のお話しと、二個集めると変身できる五十円玉と五円玉のお話しをしました。
すると次の日から、百円玉だけの両替ではなく、他のお金での両替も楽しめるようになったのでした。
 
  こうしてお金のごっこ遊びが盛りあがってきた頃、未就園児さんもお誘いし、園全体の企画である『おみせやさんごっこ』が行われる事になりました。ばらぐみさんがお店屋さんになり、他のクラスのお友達と未就園児さんがお客さんになって、お店屋さんごっこを楽しむというものです。
 お店屋さんには、アイスやさん、やおやさん、お面やさん、シュリケンやさん、お菓子つりやさんの他に、ばらぐみさんが手作りした本当のクッキーも袋詰めしてクッキーやさんとなり、全部で六つのお店屋さんが開店する事になりました。
 そして、せっかくみんなおサイフを持っているのだからと、一つのお店の品物を百円とし、おサイフを持ってのお買い物を楽しむ事にしました。すみれぐみさんとたんぽぽぐみさんは、おサイフの中に百円玉を六個入れてのお買い物。品物との交換を楽しみました。
 ひよこぐみ&たまごぐみと未就園児さんは、先生やお家の方達と一緒にお買い物ごっこを楽しみました。
 そしてゆりぐみさんは、自分の持っているおサイフをそのまま持ってのお買い物を試みてみました。ばらぐみさんの「一つ百円です。」との声に、おサイフから一生懸命百円を探し出してやりとりをしたり、百円がなくて困っていると、「五百円でも大丈夫です。おつりをあげますよ。」とばらぐみさんが声をかけ、五百円を出した人には、上手に百円玉四つをおつりとして、お渡しする事ができました。
 そして、その日のお買い物ごっこで集まったお店屋さんの売り上げは、お店屋さんになったばらぐみさんが、仲良く分けて自分のおサイフの中に入れる事ができ、大喜びの一日でした
 
 季節は十二月。園内にはいち早くクリスマスツリーやリース、アドベントカレンダーがキラキラと美しく飾られ、クリスマスソングが聞こえてきました。
 そんな十二月のある日。自由遊びの時間にちょっとした企画を試みてみました。
『まっきーのケーキやさん』と大きな看板を掲げそこにクリスマスケーキの写真の切り抜きを並べました。「何してるの?」準備をしている時から何人かの子ども達がワクワクした面もちで見守ってくれていました。最後に『ケーキ一つ 100えん』というポスターを看板に貼りました。
 そして「いらっしゃいませ〜!ケーキやさんですよ。ケーキはひとつ百円です。」
すると・・・、それを聞きつけたしらゆりっこ達は、それぞれ自分のおサイフを持ってケーキやさんにやってきました。
 「どれでも一つ百円です。二つほしかったら二百円になります。」と言うと、
「三つほしいから三百円持って来たよ」「五百円玉だったらいくつ買えるの?」などと言いながら、一個だけ買って大事そうに持って行ったお友達もいれば、十個以上も喜んで買ったお友達もいて、それぞれ自分のほしいだけの数のケーキを、しらゆりコインを使ってお買い物を楽しむ事ができたのでした。

 

 
 十二月には千円札も登場し、三学期には五千円札と一万円札も登場する予定です。
 また、このごっこ遊びをめぐって何らかの企画も考えています。 
 毎日楽しく繰り広げられているお金ごっこ。遊びながら生活に必要な数の概念を、おもしろさと共に覚えていけたらいいなと思います。