毎年六月から十一月にかけて、幼稚園では教育実習生(いわゆるお姉ちゃん先生です)を受け入れています。
 子ども達は実習生が大好きです。なぜなら、とにかく自分たちの言うことを聞いてくれるからです。子ども達はそのことを十分に承知した上で、クラスの先生の前では言わないようなわがままや甘えた態度を見せています。これは子ども達からの「歓迎」なのですが、実習生はそんな子ども達とどう接すれば良いのかと、戸惑っています。それでも、一生懸命子ども達と向き合いながら、学んでいくのです。かつては私も経験した出来事です。けれども実習中のいろいろな学びや発見、そして失敗や迷いを経験することにより、実習が終わる頃には、実習生が「お姉ちゃん先生」ではなく「先生」らしい顔つきになっているのは本当に不思議な力を感じます。それだけ実際の保育現場での学びは、学校での学びからは得ることのできない尊い学びの時ということなのでしょう。
実習生は、子ども達の前で与えられた課題に基づいて保育を行う(絵本を読んだり、ゲームをしたりなど)他に、幼稚園で経験したことや感想・反省などを書く「実習の記録」を毎日担当の先生に提出します。子ども達と一日全力で過ごした後に、眠い目をこすりながら夜遅くまで書いている実習生も大変ですが、それを読み、適切な助言をする現場の先生も大変な仕事です。これからの保育を担う人にいい加減な助言はできません。かといって、難しいことを言ったところで、正しい理解が出来ないかもしれないからです。白百合幼稚園が、そして自分たちが大切にしている保育理念を伝えようと、これまた頭を抱えてペンを走らせている現場の先生たちなのです。こうしてまとめあげた助言は、実習生に返す前に私も必ず読ませてもらっているのですが、私はその助言を読む度にとても嬉しい気持ちになるのです。それは、今年で三年目を迎えた若い先生が、白百合幼稚園を愛し、子ども達一人一人を心から大事にしていることが文章から読み取れるからです。若い、若いと言っていた四人の先生ーいつの間にか正真正銘の白百合の先生になっていっているのですから…ずっと現場の先生とかかわっている私には、その成長がとても嬉しいのです。もちろん、三年目ともなると慣れもでてくるでしょう。けれでも、慣れたからこそ見えてくることもたくさんあるはずです。まだまだ発展途上ではありますが、これからの白百合を楽しみにしてください。

 園長先生がよくおっしゃる『保育者のために子ども達がいるのではなく、子ども達のために保育者がいる』という言葉があります。とても考えさせられると同時に、心に響く言葉です。幼稚園の先生は、子供の知識を高め、何かを教えてくれる者と思われがちなのですが、私はこう思うというか、こう信じて保育に携わってきました…私達は豊かな心の成長のために、子ども達の前に立たせてもらっている者なのではないかと。
 実習生への指導・助言を通して、自分たちの大切にしている保育とは何かを見直す良い機会が与えられているのだと思い、これからも現場の先生、そして実習生と共に考え、成長できたらいいなと思っています。

 一学期の歩みの本日で終了。ご家庭の皆様のご協力とご理解、本当にありがとうございました。
 五月から幼稚園で育てている野菜の苗も、太陽の日差しを浴びてグングン成長し、次々に大きな実を結んでいます。この夏、子ども達はどんなステキな経験をし、成長をするのかしらと楽しみにしながら、二学期を迎える準備をしていきたいです。