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「秋の空と収穫体験」



 副園長 釜土蘭子

今年もあと一ヶ月。いよいよ冬が始まります。

 秋らしい日が少なかった今年。幼稚園の保育もお天気に一喜一憂でした。「天気予報」「雨雲の動き」を一日に何度もチェックする日々でした。

 なにせ、2学期の幼稚園行事といえば、天気に左右されるものがたくさんだからです。

9月。二学期が始まって、「運動会ごっこ」も始まりました。ところがここで猛暑の影響が・・・。あまりにも暑かった今年の夏。そのため、子どもたちがあんまり走っていなかったのです。どこかぎこちない走りで始まった、運動会ごっこ。「速く走るって楽しいよ」そんな気持ちになるのに少し時間がかかりました。
 暑すぎてもダメ。雨が降ったらもちろんダメ。できれば曇り空より青空。風は心地よく時々ふいて・・・。子どもたちが「走りたい!」って思うお天気ってこんなものでしょうか。

 幸い、運動会までの日々は少し暑いものの、天気は安定していました。運動会当日も青空とはいきませんでしたが、過ごしやすい一日になりました。

さあ、そこからが「収穫の秋」体験の始まりはじまり。いもほり、やきいも、どんぐりひろい、落ち葉ひろい、りんごがり、白菜収穫・・・。そして収穫感謝礼拝とおもちつき大会。
 そしてこれらの行事はその日だけでおわるのではありません。いもほりにいった後にいもスタンプ(いもはん)遊びをしてみる。落ち葉拾いをした後に、押し葉をしてみる。りんごがりにいった後、折り紙でりんごを作ってみる・・・。いろいろな活動がつながっていきます。

 一〇月七日、駐車場横にある一本の木の下で「どんぐり拾い」をしました。数はそんなにたくさんありません。だから一人一個。たったそれだけ。でも一人一個だからウレシイ一個なのです。
 木の下にいっぱいあるドングリ。下ばかり見てしまうけれど、上を見たらまだ木にくっついているドングリ。そう、ドングリは木から落ちてきたんだよ。

 どんぐり拾いを一度体験したら、その後はいろいろな所からいただいたりしたドングリでのお遊びを広げていきます。ドングリごまをくるくる回してみよう!誰のドングリごまが一番長く回っているか競争です。ドングリをお箸でつかんでみよう。誰が速く隣のお皿に移せるかな?

 一〇月八日はいもほり遠足。土の中から出てくる大きいおいも。おいもは何個か一緒に土の中にある。ヨイショって引っ張ったらつながって出てくる。
 翌々日にはやきいも大会。お庭にたき火をして、アルミホイルにつつんだおいもを放り込む。たき火はアツイ。近くで見てると、煙たい。時々なんか黒いものが飛んでくる・・。そして、放り込んですぐ食べられるわけじゃない。みんなでたき火を見つめて待つ。待った分だけおいしい、焼きいも。

 
 いもほり遠足&やきいも大会の後にもいろいろなお遊びがつながっています。小さいお友だちは「焼きいもごっこ」。いもスタンプも楽しいね。ただペタペタするだけでも楽しいけれど、○△□の形を組み合わせて見ると何ができるかな?Aぐみさんは自分でおいもを掘ってスタンプを作りました。音符♫を掘ったり、ハート♥を掘ったり。男の子たちはモンスターボールが人気でした。

 

 さてここまで順調だった「収穫の秋」。ところが、この後十月は困った天気が続きました。また夏になっちゃったのかと思うほどの高温。そうかと思うとなぜか台風。強風に大雨。一〇月中旬から下旬に、どこか公園に秋探しに行こうと計画するのですが、どうもうまくいきません。強風でドングリはなくなっちゃったし、高温で木の葉はなかなか色付かない。ようやく、二二日にABぐみさんが希望の丘公園に行くことができました。けれど続けてCDぐみさんを国分寺公園へと計画したのは結局天気に恵まれず・・・。

 お外遊びも思うようにできなかった一〇月。十一月こそはと考えて、「収穫体験」の為にりんご園と東雲高校に電話連絡をしました。ところがここで残念なおしらせ。なんと一〇月の高温のせいで、例年なら上旬にできる収穫体験が中旬から下旬になってしまうことがわかったのです。
 
 「りんごがり」をして、「白菜収穫」をして、その体験の後で、「収穫感謝礼拝」をするというのが、十一月の保育計画の根幹。ありゃりゃ、今年は流れを変えないといけない。職員会議で打ち合わせ。「収穫」ということへの興味が薄れないように・・・。お買い物ごっこでは、ドングリを使ったおもちゃをいろいろ作りました。玄関にはずっとさつまいもが飾られ続けました。

 でもやっぱり、十五日の収穫感謝礼拝はちょっといつもの年より、子どもたちの気持ちがピッタリきていないなぁと感じました。りんごや大根を収穫した後なら、パカッと半分に切ったりしても、もっともっと盛り上がるのになぁ・・・。
 それでも十六日のおもちつき大会はお天気に恵まれたステキな一日になりました。せいろで蒸されたもち米。一つのウスをみんなで囲んでぺったんぺったん。ついたおもちをみんなで食べる。つきたてはやっぱり特別な味。

 おもちつきのお片付けをしながら次の週の天気予報をチェックすると、そこにはとっても残念な情報が・・・。月曜から金曜までずっと雨。しかも冬のような寒さがやってくる?風も雨も強いとか。りんごがりも収穫体験もできるのかしら?もしかして全部延期?

 十八日月曜日の朝、予想どおりの雨模様の空。それでも予報よりも雨も風も強くないし、雨雲予報では、ちょうどりんご園にいる間にちょっと雲の切れ目がありそうでした。思い切って決行!小雨の降る中でのりんごがり。少人数ずつりんごの木の下にいって、りんごをとって、小屋に戻ってくる。りんごの木をじっくり見つめている時間はないのが残念。それでも子どもたちは、大きなりんごを選ぼうとしていました。自分の手の届く範囲で大きくて赤いりんごを見つけます。雨に濡れたりんご。「せんせー、つめたい!」という声が聞こえました。そう、手にしたりんごはまるで冷蔵庫で冷やされたかのような冷たさだったのです。あわてて持っていたタオルで雨を拭いてあげると、ちょっと持ちやすくなりました。少し冷たくても大事な自分のりんご。大切そうにお家に持って帰ったのでした。 
 翌日、続けてCDぐみさんのりんごがりができるかなと思って、朝りんご園のおじさんに電話すると、「朝アラレが降って下が真っ白だよ」と言われました。そこで一日延期して、二〇日にCDぐみさんがりんごがりにいくことになりました。出発した時は小雨、途中では嵐のような雨。ところがりんご園に到着すると、きれいな青空が顔を出してくれました。足の下はどろどろだったけど、生まれて初めてのりんごがりだった子も多かったこの日。いつもは果物を食べないという子も、試食のりんごをおいしそうに食べていたのでした。

 二十一日は、ABぐみといっしょに白菜と大根収穫に出かけました。高校の先生のお話では畑の中はかなりぬかるんでいるということ。ABぐみさんだし、長靴をちゃんとはいているし、なんとかいけるだろうと、幼稚園を出発!
 高校に到着すると、元気な高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんが迎えてくれました。そのうちに、お互いに気づいたのは、去年のおいもほりの時にいっしょにしたということ。一年ぶりの再会にテンションがあがり・・・。ドロドロの畑をふみしめての白菜収穫となりました。残念ながら大根畑はもっどドロドロだったので、高校の先生があらかじめ収穫してくださったものをもらってかえることになりました。それだけではちょっと物足りなかったので、大根畑で先生がぬくのを見せてもらうことになりました。少し離れて見ているからぬかるみには入らないはずなのに・・・。だんだん前のめりに見ているうちに、やっぱりいました、足がぬけなくなっちゃった子。畑のぬかるみにはまったらタイヘン!そんな体験もした白菜・大根畑でした。



 今は、パソコンやスマホで「りんご」を検索すれば、画像も知識もすぐに手に入る時代です。「どんぐり」を検索すれば、どんぐりの種類・どんぐりでの遊び方が出てきます。

 そんな時代だからこそ、本物をちゃんと見て触れて感じてほしい。
 どんぐりの木の下でどんぐりを拾って、どろんこにはまりながら白菜をとって、少し寒い思いをしながらりんごをとって・・・。
 自分の手の中に、どんぐりを、りんごを持つ。自分の力で白菜や大根をかかえてみる。りんごの大きさ、白菜の大きさを自分の体で感じる。何㎝なんてまだわからない、そんな時に。
 おもちだって、スーパーに行けば真空パックのものが一年中売っています。それもそんなに悪くない。もちつき機も便利で、つきたてはおいしい。だけどあえてウスと杵のおもちつき。もち米からもちができる、それを体感するのです。せいろから出てくる、米のつぶつぶ。それを臼にいれると、ふわーっと湯気があがる。そばにいる大人の眼鏡がくもる。お米のなんともいえないいいにおい。みんなでペッタンペッタンする。その時の音、におい。
 そしてその感動をお友だちと先生と共有する。初めての経験を興奮しながら、お家に帰ってお話しする。

 大人になってからでもいいけれど、できれば小さい小さいうちに、本物の体験をたくさんして、たくさん感動してほしいと心から願うのです。

(2013年11月26日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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