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「おしえて、おしえて」



 副園長 釜土蘭子

   
  十二月にメインのパソコンを変えました。といっても、最新鋭のウィンドウズ8にする勇気はなかったので、一つ前のウィンドウズ7のノートパソコン。正直に言えば、ウィンドウズ8がタッチパネルとかになり、大きく変更になってしまったので、これでは絶対使えないと思い、なくなる前にあわてて7のノートを買ったのでありました。

 データを移したりするのが自分で全部できるわけではありません。一番大きな移動はお願いし、小さなものだけ自分でする。それでもどこにいったのかわからなくなるデータが・・・。一ヶ月の間は、パソコンの前で「どこいった〜」と独り言をブツブツ。最近ようやくブツブツ言わなくてもよくなってきて、最低限のお仕事は新しいパソコンでできるようになりました。



 新しい機械が苦手な私がノートパソコンで苦戦している時に、さらに新しい機械が目の前にやってきました。スマートフォンをいつまでも使わないので、その代わりにタブレット端末があてがわれたのです。

 「スワイプってなに?」

 というところから始まりました。タブレット端末は、要はスマホの大きいものでありますから、わからないことはスマホを使う若者に聞くことになります。この記号はなに?どこで音量をあげさげするの?

 こちらも、ようやく写真がとれるようになり、メールが受け取れるようになり、ブログの更新(らんこ先生のようちえん日記)ができるようになりました。
 
 
 なんといっても一番便利なのは、グーグル検索がすぐできること。身近にいつも置いておいて、疑問に思ったらすぐ検索。パソコンよりテレビを見ていて、これはなんだろうと思ったら、すぐ検索。
 子どもたちと話していて、プリキュアのことがわからなかったら、職員室に戻ってすぐ検索。インターネットで知識を得て、再び子どもたちと会話。
 スマホで多くの人がすでにしていることなのではありますが、近眼が強い私にとってはあの画面は小さすぎ。タブレットがちょうどいい。でも操作を覚えるのにはとっても時間がかかりますし、必要以上にたくさんの機能を使う気はありません。ゲームは、今はやっているというのを教えられた「なめこ栽培」だけが入っています。

 いつまでたっても苦手は苦手だなと思います。
 

 私が初めて「コンピューター」というものを意識したのは、中学生の時でした。数学の先生が「これからはコンピューターの時代です」と強調していたのです。それはその通りになりましたね。でもその先生はコンピューターの時代に必要なものとして、「二進法」を勉強しなくてはいけません、と言っていたのです。
 「コンピューターの時代には必要なんだ!」と思って二進法の授業を一生懸命聞きました。でも数学が苦手な私には・・・・。時代についていけないかもしれないと思ったものでありました。


 



 大学時代には、いわゆる一般教養で「情報」というのがありました。でもまだ当時はパソコン(パーソナルコンピュータ)の時代ではありません。コンピューターはまだまだ大きな機械でした。「情報」の時間の課題は、簡単な計算を大学の大きなコンピューターを使ってさせるプログラムを作ること。それをパンチカードにうちこんで、それを大きなコンピュータに入れて、結果を出す。こんな簡単な計算するのに、こんなに大変なのか・・・。当時はまだコンピューターの言語もこれだ!というものがない時代。二進法よりはましになったけれど、まだまだ大変と思っておりました。自分が大学在学している間に、世の中ではワープロ単独機が普及していきました。



 結婚をした頃、ようやくパソコンの時代になってきました。98シリーズというものです。今では考えられないほど高価なものでした。特にプリンターが高かった!実家の母が「電動ミシンを買いなさい」といって送ってくれたお金がプリンターの一部になってしまいました。ミシンも苦手で持っていても多分使わなかったと思うので、プリンターの方が有効だったとは思います。

 二進法もパンチカードも結局は役にたたず、一番役にたったのは、英文タイプ検定のために練習したタイピングでした。アルファベットの文字の位置は、コンピュータも英文タイプも同じですから・・・。

 パソコンはどんどん進化していきました。

 ウィンドウズができ、マウスが使われるようになり、インターネットが始まり、メールが当たり前になり・・・。プリンターもモノクロからフルカラーへ。
 そうそう、デジタルカメラが当たり前になったのも大きな大きな変化ですね。(私はいまだにフィルムカメラも併用ですが・・)

 カタログを見てファックスしたら翌日に来る、という通信販売が始まって、しばらくしたら、それもインターネットで注文できるようになりました。気がつけば、アマゾンからは履歴から判断して「おすすめ商品」がメールで届くようになりました。私は、プリキュアとかの主題歌をよくアマゾンで購入するので、そういうものが発売予定になると、すぐに「おすすめメール」が届くようになっています。



 新しいものが出るたびにヒーヒー言いながらもなんとかついていっています。その時に役に立つのは、結局、「わかっている人に聞く」ということ。マニュアルなんてまず役にたちません。ヘルプを押したって書いてあることの意味がわからん!

 「これどうしたの?」
 「これどうすればいいの?」

 自分の周りにいる人でわかりそうな人に聞く。聞いたあとで自分の必要な機能を自分で使えるようにする。全部の機能を使おうなんて、だいそれたことは考えない。


 その時大事なのは、誰に聞いたらわかるかを知っていること。コンピューターに強いといっても、得意分野はそれぞれ違います。それからわかりすぎている人は、聞いても易しく教えてくれない。なんでそんなことがわからないのかわからない・・・。自分よりちょっぴりわかっている人を見つけて聞いてみる。これが一番大事なポイントです。

 今から一〇年くらい前には、「幼稚園からパソコン教育」なんていう声があり、幼稚園の部屋にパソコンを置いた園がありました。おえかきソフトを使ったり・・・。でもきっと機械の方がどんどん変わっていき、そのスピードについていけなくなったのか、今ではあんまり言われなくなりました。先日テレビを見ていたら、小さい子にタブレット端末をもたせている保育所?が紹介されていて、「早くから慣れた方が・・・」と私より年上の先生が言っていたけれど、きっとその子たちが大きくなる頃は、タブレットなんてなくなっているに違いない。

 けれども、数年前に比べれば確実にパソコンもインターネットも子どもたちにとって身近なものになっています。お父さんにパソコンでプリキュアのことを調べてもらったり、主題歌をスマホにいれてもらったり、普通のことになりました。この子たちは違和感なくコンピューターの世界に入っていくことでしょう。

 大事なのは、自分が何を知りたいかを自分で持っていること。そしてわからないことをちゃんと周りに聞いて教えてもらえること。どんな時代になっても、それが大事なことは変わりないでしょう。


 二月になって、お金ごっこのコーナーにCぐみさんがよく来るようになりました。「いっかい5枚」「みないでとる」とかいうルールが紙に書いてはってありますが、Cぐみさんはそれを読んで理解できるわけではありません。でも周りにいるお友だちに聞いて理解します。お友だちがしているのをみて、おもしろそうだからやり始めます。そのうち両替をしようと思います。一〇〇円を5枚出したら、大きな丸いお金(500円)とかえられる。見よう見まねでやってみます。5枚だせばいいのかと、50円玉を5個持ってくると、それは違うと言われます。疑問がいっぱい、わからないことがいっぱい。さてそこで誰に聞けばいいのかな?AぐみさんBぐみさんの中で、教え上手の子を見つけられるかな・・。
 
 「どうすればいいの?」
 「五〇円ってなんえん?」

年上の子なら誰でもいいというわけでもありません。説明がうまい子もいれば、あまりうまくない子もいます。説明が細かすぎる先輩もいます。
 自分にちょうどいいいい先輩を見つけて教えてもらえれば、いろんなことを学ぶ近道がわかります。「おしえて」と聞くことができれば世界が一つ広がっていく。お金ごっこだけではなく、雪遊びでもどろんこ遊びでも、いろんなことで「おしえてもらう」ことは大切です。

 たくさんの遊びの中で、自分には何がわからないかを見つけて、それを教えてくれる人を探して・・・。世界を広げていくカギを見つけてほしいと思うのです。
(2013年2月22日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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