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「初めて見るもの、いーっぱい」



 副園長 釜土蘭子

   
 

 梅雨があけて、暑い夏がやってきました。お庭でどろんこ遊びが始まりました。
 一学期が終わります。振り返るとあっという間ですね。




 一学期の間にはいろいろな事がありました。



 6月のある日、幼稚園に不思議な白い物体が持ち込まれました。


 「モリアオガエルの卵」でした。
 大人でもテレビや写真でしか見たことがないかもしれません。子ども達はもちろん初めてです。

 


 「これはなんだろう?」、子ども達が集まってきます。じーっと見ているとポトン。白いかたまりの中から、黒い粒が落ちていきます。卵の下においてあるお水の中に落ちると、スイスイ泳ぎはじめます。
 「おたまじゃくしー」。
 またじーっと見つめます。またポトン。
 本当に真剣なまなざしで、卵から誕生していくオタマジャクシを見つめる子ども達。こんなに集中して見ることができるのね・・・と感心してしまうほど。
 「おちた〜」
 
 モリアオガエルのオタマジャクシは、今まで見慣れてきたアマガエルのオタマジャクシより、大きくて黒くて動きも素速い。

 またオタマジャクシと一緒に落ちる白いアワのかたまりが、大きな役割を果たしていることにも気づきました。白い泡が落ちるとそこに集まるオタマジャクシ達。もぐもぐ食べ始めます。赤ちゃんオタマジャクシにとっては、離乳食のようなものなのでしょう。なるほど自然の営みというものは理にかなっていますね。大人も子どもも初めて生で見るものなので、一つ一つが感動的でした。

 7月の半ばになると足が出てきました。これもアマガエルのものより鋭くてワイルドな感じ。カエルになるのが楽しみですね。


 7月になって、メダカもたくさんいただきました。小さなかわいいメダカ。でも飼育はなかなか難しく、一度にたくさん死んでしまったことも・・・。お庭の隅に埋めてあげたこともありました。ほんのひとときだったけど子ども達を笑顔にしてくれた、小さな命。次は失敗しないようにと気をつけながら飼育を続けています。


 春のお庭では「いちご」が大人気でした。夏はツルモノをいっぱいするぞ!と思った蘭子先生。朝顔はもちろん、キュウリ、ゴーヤ、時計草、フウセンカズラといろいろ植えてみました。

 きゅうりとゴーヤはAぐみさんのベランダにあります。過去に何度か失敗した、きゅうり。今年はいただいた苗が良かったのか、すくすく育ちました。何本か収穫して子ども達と食べることもできました。
 ゴーヤも元気に伸びています。小さな実もつ着始めました。でも実ができたらどうしたらいいのかな?Aぐみさんの人数分できてくれると一人一個ずつ持ち帰ることができるのですが・・・。

 横に伸びるツルものとしては、スイカができました。小さなまあるいスイカ。幸いプランターの奥の方でできたので、カラスに見つからない。葉のかげにあるスイカを、まるでかくれんぼしているお友だちを見つけた時のような楽しみで、「すいか、あった〜」とニコニコ顔です。食べられるかどうかは微妙な感じですが、とりあえず形になっただけでも良かったかなと思います。
 


 うまくいかなかったものもあります。
 ひょうたん、です。らせん階段の下においてみたらぐんぐんのびて、小さな白い花が咲きました。そしてついに小さな小さなひょうたんができたのです。うまくいったら、ひょうたんがいっぱいできるかも・・・。何にしようかな・・・と期待した蘭子先生。インターネットで調べてみたら、ひょうたんマラカスの作り方というのを見つけました。よーし、ひょうたんが何個かできたら、子ども達と一緒にとって、マラカスを作ろう!と心に決め、毎日見守っていたのです。ところが・・・。根元から枯れ始めてしまったひょうたんの苗。気がつくと、小さなひょうたんの実もしぼんでしまいました。隣に植えてあったヘチマも・・・。何か害虫がついてしまったのかなと思うのです。なにせ幼稚園のお庭なので、農薬の類は使いたくありません。(子ども達が楽しみにしているいろんな虫を殺してしまうので。)
 もう一度植え直そうか、朝顔にしようか考え中です。

 これからどうなるか、全く未知数なのがパッションフルーツ。できたらどうやって食べようかな・・・。でも一個もできないかもしれないし・・・。



 幼稚園での植物の栽培や生き物の飼育は、「観察」に重点があります。もっと易しい言葉で表現するならば、「初めて見る」ものをたくさん見せてあげることが大事なのです。いえ、「見せてあげる」というのも おかしいかもしれません。一緒に見て一緒に感動し、驚くのです。

 それは幼稚園を出てお出かけする時にも同じです。


 「いちご畑」にいきました。幼稚園ではプランターの中に苗があるのだけれど、畑にいくとたくさん並んでいます。それを見て、そこにあるいちごを一個か2個とるだけでいいのです。いちごはこうやってできる。それを一度見れば、スーパーに並んでいるパックを見ても大丈夫。

 


 「とうもろこし畑」にいきました。自分よりもずっと高いトウモロコシ。あつーい夏に、汗をかきながら、見上げるトウモロコシ。でも実は子ども達でも手が届くところにあります。一本だけ選んでおみやげに。暑い暑い時にこそおいしいトウモロコシ。こうやってできるんだ、実感することがとても大事。一本そうやってとったら、夏の間、トウモロコシを食べる時に、暑い日に見たトウモロコシ畑を思い出してくれることでしょう。



 「ブルーベリー園」にもいきました。
 ひろーい広いブルーベリー園。ブルーベリーの木が数え切れないほどたくさんあります。その木には、またたくさんのブルーベリーの実ができています。小さな粒を一個食べてみる。ブルーベリーってこんなふうにできるんだって知る。
 その後は「食べ放題」「採り放題」の体験です。どれだけ食べてもいいし、どれだけ採ってもいい。小さいお友達にとってはそれは初めての体験。少しとまどいながら、一粒とっては「これ食べてもいい?」と先生に確認する子もいます。BぐみさんやAぐみさんになると、慣れていて、どんどん食べてどんどん採っていきます。


 こんな経験をした後で、ブルーベリーのジャムを食べたり、ブルーベリーの入ったお菓子を食べたりしたら・・・。あのブルーベリーがこうなるんだなって結びついてくれるかな?
 

 
 はじめて見るもの、いっぱい。

 今年も、たくさんの「はじめて」を経験する夏となりますように。


(2012年7月20日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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