直線上に配置

職員室から

副園長 釜土蘭子


   Aぐみさんのお部屋に入ると、大きな恐竜とタイムマシーン。七尾幼稚園のAぐみさんの共同制作の中でも、最大の大きさとなってしまった「Aぐみ恐竜時代」。これを作り上げたAぐみさんは、自信に満ちています。
 この制作を少し離れて見守っていた蘭子先生は、途中はとても心配したのですが、最後までさせて良かったなと心から思います。


 入園した頃のこのクラスの印象は、ちょっとおとなしいなぁというものでした。おしゃべりも表情もちょっと少ない。「よい子」たちなんだけどなぁ・・・。
 幼稚園での生活に慣れてくると、それぞれに「仲良し」ができました。仲良しができるのはいいことなんだけど、「仲良しさん」とばかり一緒にいる。もっといろんなお友達と遊べばいいのになぁと思ってしかけてみても、どうもうまくいかない。
 お部屋での活動では、苦手な事になるとすぐあきらめる姿が気になりました。もうちょっとがんばればできるのに、と思うのですが、「できない・・・」と涙。集団ゲームでは負けそうになると、涙。時には勝てそうにないゲームには「やりたくない」といって集団からはずれてしまう子が出てしまう。
 もちろん年少さんとして年中さんとしてできていなければいけないことはちゃんとできているのだけれど・・・。もう一歩、前にでてほしいなぁと思っても、その一歩を出さずにとどまってしまう。居心地のいいお友達、自分の得意な事、そこの中に入り込んでしまう。もう一歩すすんでみようよ。ちょっとチャレンジしてみようよ。
 

 でも、変わったね。成長したね、みんな。
 Aぐみさんになってから、本当に大きく成長した。よさこいの時、暑くても「もうやめよう」って誰も言わなかったね。ハーモニカもピアニカも「難しくてできない」って言わなかったね。運動会ごっこの時、「疲れた」って声はきこえなかったね。小さいお友達のお世話をお願いしたら、ニコッと笑って手をひいてくれたね。ドッジボール、勝っても負けても盛り上がったね。

 その集大成が、あの共同制作だった。
 リーダーらしいリーダーのいないクラスだなと思っていたけれど、その場その場で、話し合って考えをぶつけて、あれだけのものを作っていった。特別「仲良し」でない子ともちゃんと話し合っていた。大きい作品で時間がかかったけど、だれひとり「もうやめたい」って言わなかった。本当はみんなはもっとやりたかっと思うけど、先生達がここでやめておこうと考えて、あそこまでにしたのだもの。


 人にはそれぞれ、大事にしている人がいる。大事にしている場所がある。大事にしているものがある。
 だけど、時には勇気を出して、そこから一歩踏み出していかなくちゃいけない。特に子供が大人になる時には、何度も何度も「一歩前に」いく勇気が必要になる。

 一歩前に踏み出そう。
 新しい世界に歩き出そう。

 卒業、おめでとう。
 でも時々、懐かしい世界(幼稚園)に遊びに来てね。           
(2011年3月19日 七尾幼稚園 職員室から)

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