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職員室から

副園長 釜土蘭子


 自由遊びの時間、Aぐみさんがいろいろな所で、あやとりをしています。新しいワザができるように、「みて!」とアピール。1月末から始まったあやとり、気がつくとたくさんの子ができるようになりました。

 このAぐみさんでは、こんな姿がよく見られました。誰かが何かおもしろいことを始める、するとお友達がその事に興味を持って教えてもらう、それが広がっていく。最初は小さな出来事だったのに、気がつくとみんなができるようになっていく。先生が教えようとして教えた事ではなく、みんなが自主的に自由に楽しんで学び、身につけていく、そんな力を持ったクラスでした。

 二十八人のAぐみさん。Dぐみさんから来ていた子が核となり、新しいお友達を加えていってこの人数になりました。お引っ越しでお別れしたお友達が非常に少なかったクラスでした。同じお友達とずっと一緒に過ごしたのです。お互いの事をとてもよく知っています。だから、「・・ちゃんはこれが上手」「・・くんはこれが得意」ということをわかっています。そして変な遠慮などなく、得意な子から情報を得、コツを学んでいくようになりました。「苦手だろうなぁ」と最初は思われる子も、みんなの中で「やりたい」と思うようになり、少し時間がかかってもみんなに追いつこうとする。それもとてもステキなクラスでした。

 3月になってすぐのホールの時間、蘭子先生は「タラントのたとえ」と言われている聖書のたとえ話を子供達にお話しました。主人が僕に「財産(タラント)」を渡して旅にでる。ある僕はそのタラントを元手に商売をし、増やす事で「忠実な僕」と呼ばれ、ある僕はそのタラントを無くしてはいけないと考えてタラントを用いることなく隠してしまいます。使うことなく隠した事がご主人から叱られる。簡単にするとそんな話です。

 Aぐみさん、君たちは周りの人を「良く評価する」事をこのクラスの中で学んだと思う。お互いが違う才能を持っている事を知ったと思う。そしてそれだけでなく、違う才能を持ったお友達から学び、自分の才能を伸ばす事もできるようになったと思う。

 神様が一人一人にくださったものは、みんな違う。一人一人に与えた才能は違うものだ。音感のいい子がいる。一度聞いたらすぐにピアノで弾いてしまう。ダンスが上手な子がいる。指先まできれいに踊る。運動能力に優れた子がいる。なわとびも跳び箱もすぐできる。人の気持ちに敏感な子がいる。お友達のケンカの仲裁が得意だ。でも静かにお友達の話を聞いてあげる事ができるのも大事な事。それもみんな知っているよね。
 いろんな子がいるんだ。それでいいんだ。

 みんなが同じ事を同じように出きるロボットを神様は人間をおつくりにならなかった。一人一人を大事な、違う人間として造られた。
 だから、得意な事はどんどんのばしていってほしい。不得手な事があってもいじけたりしないで、得意な子から聞いたらいい、教えてもらったらいいんだ。

 違う才能がたくさんあるから、教えあって助け合ってこの世界はある。だけど神様から叱られる事がある。それはその才能を隠す事だよ。自分の持っている才能、それを周りに出し惜しみしてはいけない。隠していたら神様に叱られるよ。周りにちゃんと教えてあげて、分けてあげてね。支え合って助け合って、人は生きていく。Aぐみさんの時、それができたんだから。これからの人生でもそうあってほしい。

 卒業、おめでとう。そしてありがとう。 
(2010年3月18日 七尾幼稚園 職員室から)

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