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職員室から

副園長 釜土蘭子



 卒業式の一週間前、ホールでみんなでパラバルーンを楽しんだAぐみさん。運動会の時に一緒に踊った先生がいないという状況の中で、お友達同士で教えあいながら、見事にパラバルーンをしている姿を、蘭子先生は喜びと安堵の気持ちで見ていました。
 「運動会の時よりうまくできていたよ」、心からそう思いました。いろんな事があったこの半年間、君たちが大きく成長してくれた事を、いつもの年以上に誇りに思ったのです。

 第93回卒業生、一四人。少ない卒業生です。年少さんの時はもうちょっと多くて一七人。でもお引っ越しとかでいなくなってしまいました。また、一四人のうち、Dぐみさんから入園したお友達が半分以上です。
 多い人数のクラスでは、同じクラスの中でもほとんどおしゃべりしなかったということがあるでしょう。あの子の事はよくわからないなぁという存在があるかもしれません。でもこのクラスではそうはいきません。人数が少なくつきあいが長いお友達。長く在園したお友達を核にして、次に加わるお友達も最初はとまどいながらも、だんだ仲間になっていく、そんなクラスでした。
 だから、それぞれの性格もそれぞれの特技も長所も、そして短所も知り尽くしていました。お互いのお家の事もよくわかっている。ケンカする時には派手にし、一致団結する時には大きな力を発揮してくれました。

 そんなみんなにやってもらいたくて、蘭子先生が買ってきたオペレッタのCDが「オズの魔法使い」でした。
 実は蘭子先生はこの「オズ」物語のシリーズが大好きです。「オズの魔法使い」は一冊で終わらずに、原作者ボームが書いたものだけで一四冊のシリーズで、その後も他の人が続きを書いていたりします。現在のハリーポッターシリーズのようなファンタジー大人気シリーズなのです。読んだ人が最初に楽しむのは、その奇想天外な登場人物やオズの不思議な国々の事です。
 けれど多くのファンタジーがそうであるように、ただ不思議な事が書いてあるだけでは物語はおもしろくありません。核になるもの、それは主人公達の友情や信頼です。オズシリーズでも、次から次へといろんな登場人物が出てきます。様々な困難があります。それを乗り越えるのは、魔法の力だけでなく、仲間達の友情・信頼。そしてそれに基づく勇気ある行動なのです。

 Aぐみさん、君たちの中には人前で堂々と演じるのがとっても好きな子がいる。けれど人前に出ると緊張してしまう子もいる。ダンスを一度で覚えてしまう子がいる。何度してもよく覚えられない子もいる。
 だけど上手にできる子が、できない子に批判するような事はなかったと思う。それぞれが得意分野を生かしながら歩いていってくれた。
 ドロシーはかかしに向かって頭が悪いとは言わない。かかしはブリキマンに優しさがないと言わない。ブリキマンはライオンに弱虫とは言わない。もしお友達に足りない物があったとしても、それを補い合う事こそ友情なんだ。
 特にAぐみさんの後半には、蘭子先生は君たちに「自分たちだけでしなさい」と言い続けてきた。ちょっと厳しかったかもしれない。年度途中の担任交代という試練の中でどこまでできるだろうかと心配しながら、けれど、できるはずだと信じ続けて。

 そう、やればできるんだよ。できる力を君たちは持っている。自分を信じて歩いて行きなさい。時には友達の助けをかりて。
 卒業、おめでとう。一人一人大きく成長したね。
(2009年3月21日 七尾幼稚園 職員室から)

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