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職員室から

副園長 釜土蘭子



 卒業式まで一ヶ月となりました。
 階段には「思い出しゃしんかん」として、卒業する子供達の小さい頃からの写真をたくさん貼っています。
写真を選びながら、今のAぐみさんと過ごした日々を振り返る時、なんと予想外の出来事の多かった事かと思います。
 覚えているでしょうか?Cぐみさんの時、いちごがりに行こうとしたら、いちご畑がねぎ畑に変わっていてあわてて別のいちご畑を探した事を。半年だけ中井先生という補助の先生がきた事を。おいものできが早すぎて、一〇月にいく予定だったおいもほりにあわてて9月にでかけた事を。運動会の朝、雨がザーザー降っていた事を。けれど冬には雪が全然降らなくて、駐車場から雪をかき集めて雪遊びをした事を。そして、あの能登半島地震。
 Bぐみさんの時は、能登半島地震から派生した様々な予想外の事がありました。いつもならすぐにでかけられる小丸山公園が、地震の影響でいかれなくなった事。幼稚園の園舎が修復工事をしなくてはいけなくなった事。園長先生のお家が改築になった事。そしてそんな地震からの改修工事が終わった頃に、担任の甲部先生の結婚式があった事。
 
 そんな2年間の後だったから、今年度は予想外の出来事がないようにと、蘭子先生は心から願って、いえ信じていたのでした。けれど、まったく申し訳ない事に、またも予想外の年度になってしまいました。自分自身の病気もあり、子供達に動揺を与え、保護者のみなさんにも 不安を与えてしまったことに、責任を感じないわけにはいかないこの半年間でした。

 年があけ、この子達と毎日過ごすのがあと少しだと思った時、蘭子先生はこの短い時に何ができるのだろうと、悩み、考えました。
 そこで思いあたったのは、この七尾幼稚園の原点です。遠くカナダの地から能登の地にやってきた初代の園長先生。その人が子供達の為にしたことは何だろう?
 蘭子先生は園長先生にお願いして、毎週はじめの礼拝の時に「おはなし」をさせてもらう事にしました。「くつやのマルチン」「一番偉い人とはどんな人か」「放蕩息子の話」・・・。きっと九十年以上前からこの幼稚園で何度も何度も語られてきたであろうお話を子供達に話そう。
もしかしたらCぐみさんやDぐみさんには難しくてあきちゃうかもしれないと心配もしたのですが、案外子供達は静かにそして目を輝かせて聞いていてくれます。私の話し方というよりも、長く語られ続けてきた話そのものに力があるんだなぁと実感させられます。
 「優しさ」「愛」「奉仕」「思いやり」「ゆるし」そんな事を物語の中から感じ取ってほしい。それこそ七尾幼稚園が九十二年間守り続けてきたものだと思うのです。
(2009年2月25日 七尾幼稚園 職員室から)

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