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「たくさんの人に支えられて、
今の自分がある」



 園長  釜土達雄

 

 二〇〇七年三月二五日午前九時四一分、石川県輪島市西南西沖四〇kmの日本海で能登半島地震が発生しました。マグニチュード6.9の大地震で、能登半島全域に大きな被害をもたらしました。
 あの能登半島地震から、まもなく一年になろうとしています。

 わたしは、この能登半島地震について、この園だよりの巻頭言ですでに2回取り上げてきました。

 一度目は五月の園だより。「びっくりしました能登半島地震」。あの地震を体験した皆様と、体験を共有するために、わたしの体験をつづったものでした。
 二度目は七月の園だより。「青春時代に聞いたこと」。中越地震の後、三年を経ないで中越沖地震が起きたことにショックを受けたわたしは、何が起きるかわからないと言う思いを強くしました。そんな中で、青春時代に聞いた自分が大事にしている考え方を記したのでした。

 二〇〇七年度の七尾幼稚園は、この能登半島地震によって始まり、この能登半島地震に終始した一年だったと言って良いかもしれません。

 七尾幼稚園は、去年の八月二〇日から九月三〇日にかけて震災復興工事を行いました。
 園舎の基礎の部分には全く問題はありませんでした。調査のために計測したところ、Dぐみさんの公園側からホールの道路側まで五oの誤差しかありませんでした。この能登半島地震ではびくともしなかったのです。
 けれども鉄骨造の宿命で、七尾幼稚園の園舎は地震の揺れを、園舎が揺れることで地震を受け止める構造です。すると、軽量コンクリートで出来た壁面に無数のひびが入るという欠点もあるのでした。
 最初から、「地震の時には壁にひびが入ります。けれども園舎が壊れることはありません。」とは言われていました。安全上の問題がないのですが、ひびが入ると、そこから壁の中に水が入ってしまいます。これが、冬になれば・・・。ヒビの隙間を通って進入した水が夜のうちに凍ってしまい、その隙間を広げてしまうと大変なのです。
 何とか冬になる前に、出来れば園庭を使う大きな行事、運動会の前にと考えて、一ヶ月ぐらいですべての工事を終えたのでした。


 園舎の改修工事と平行して、もっと大きな工事が、行われました。それは、七尾幼稚園に隣接している七尾教会の官舎、牧師館の改築工事でした。
 九月三日に、古い牧師館の解体工事が始まり、一月十七日の引き渡しまでの間、工事が続いたのです。

 今ではこの新しい牧師館に、わたしは住んでいます。快適に過ごしていますといいたいところですが、今までこのような家に住んだことはなく、あの古い牧師館に愛着もあって、ここが快適なのは事実なのですが、どうも居心地が悪くて困っています。それにしても、こんなにたくさんの震災復興工事が出来たこと、感謝でいっぱいです。


 七尾教会牧師館改築工事の大部分の資金は、全国の諸教会の捧げものでした。日本基督教団や日本基督教団中部教区、北陸連合長老会に全国連合長老会、改革長老教会協議会。さらに、個別に七尾教会に献金してくださった皆様の尊い捧げものだったのです。
 七尾幼稚園の改修工事も、同じ皆様の献金によって改修されました。加えて、キリスト教保育連盟北陸部会、その富山地区、福井地区、石川地区。石川県キリスト教幼稚園連合会。石川県私立幼稚園協会や、全国私立幼稚園連合会、また各県の私立幼稚園協会の皆様も復興のための献金や寄付金をお送りくださったのです。もちろん、幼稚園の震災復興のために石川県の補助があったことも忘れてはなりません。
 信じられないほどにたくさんの人々の支えがあって、これらの工事が出来たのでした。感謝、感謝、感謝です。


 わたしは幼稚園の子どもたちに、「自分ひとりで大きくなったと考えてはいけません」。そうお話しをしています。「お母さんやお父さん、おじいちゃんおばあちゃん、近所のおじちゃんやおばちゃん、親戚のおじちゃんやおばちゃん。たくさんの人に支えられて大きくなったのだと言うことを忘れてはなりません」。
 そうお話ししています。

 「そしてなによりも、みんなのいのちを作り、守り、支えてくださっている神様が支えてくださっていること、忘れてはなりません」。
 そうお話ししています。

 「みんなに、みんなにありがとう。ありがとうの心を忘れてはなりませんよ」。
 そうお話ししているのです。

 たくさんの人に支えられて、今の自分があることを忘れてはいけない。
 本当にそう思います。
 特に、この能登半島地震を通して、七尾幼稚園の改修工事が終わり、七尾教会牧師館の改築が終わった事実を通して、心からそう思います。わたしたちは、たくさんの人に支えられているのです。

 黄金律と呼ばれる言葉が聖書にはあります。

 「求めなさい。そうすれば、与えられる。  
  探しなさい。そうすれば、見つかる。
  門をたたきなさい。
    そうすれば、開かれる。
  だれでも、求める者は受け、
  探す者は見つけ、
  門をたたく者には開かれる。
  あなたがたのだれが、
  パンを欲しがる自分の子供に、
  石を与えるだろうか。
  魚を欲しがるのに、
  蛇を与えるだろうか。
  このように、・・・・
  自分の子供には良い物を与えることを
  知っている。
  まして、あなたがたの天の父は、
  求める者に
  良い物をくださるにちがいない。」

 そして続くこの言葉が、人が人としてなすべき普遍的な真理、黄金律と呼ばれたのです。


 「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、 
 あなたがたも人にしなさい。」

 わたしたちは、この能登半島地震を通して、七尾幼稚園が多くの人々によって支えられ、祈られていることを実感、体感しました。
 それは本当に感謝でした。
 多くの人々が、わたしたちを助けてくださいました。黄金律の通りに、生きている人々に出会ったのでした。本当に感謝でした。


 「人のいやがることを、してはいけない」。

 多くの人はそう語ります。
 けれどもそうではなくて、さらに一歩進んで、
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」。
なんと深く味わいのある言葉でしょう。

 わたしたちも、そうありたいと思います。
 Aぐみさんが、小学校に行っても、そのように生きてほしいと思います。

 卒業、おめでとう。
(2008年3月21日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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