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「幼稚園教育要領も変わります」



 園長  釜土達雄

「幼稚園教育要領も
       変わります」

             園長 釜土達雄


 2月の中旬、文部科学省から、「教育要領」の改定案が発表されました。ニュースでも大きくとりあげられましたので、ご存じの方も多いかと思います。「教育要領」は国が教育の内容を定めるもので、とても大事なものなのです。
 もっともニュースで多く取り上げられたのは、主に小学校の教育要領に関することで、幼稚園のことではありませんでした。「脱ゆとり」という見出しで、円周率を3ではなく、3.14とするなど具体的な事柄が取り上げられていました。教育要領が改訂されれば、教える事が大きく変わり、小学校の授業は大きく変わることになります。

 小学校の教育要領と同じ時に「幼稚園教育要領」の改定案も出されました。幼稚園も、この「幼稚園教育要領」によって保育をしなければなりません。自分勝手な保育はできないのです。
 けれど残念ながら、こちらの方は大きく取り上げられることはほとんどありませんでした。ほんのちょっと出ていただけで。新聞によっては全く記載のないところもありましたし、テレビではほとんど全くニュースにもなりませんでした。

 けれど今は便利な時代です。文部科学省のホームページには全文が公開されています。

 最初に総則というところに、基本中の基本が出てきます。



『幼稚園教育の基本

幼児期における教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり,幼稚園教育は,学校教育法第22条に規定する目的を達成するため,幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行うものであることを基本とする。

このため,教師は幼児との信頼関係を十分に築き,幼児と共によりよい教育環境を創造するように努めるものとする。これらを踏まえ,次に示す事項を重視して教育を行わなければならない。

1 幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮することにより発達に必要な体験を得ていくものであることを考慮して,幼児の主体的な活動を促し,幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすること。

2 幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮して,遊びを通しての指導を中心として第2章に示すねらいが総合的に達成されるようにすること。

3 幼児の発達は,心身の諸側面が相互に関連し合い,多様な経過をたどって成し遂げられていくものであること,また,幼児の生活経験がそれぞれ異なることなどを考慮して,幼児一人一人の特性に応じ,発達の課題に即した指導を行うようにすること。


 その際,幼児の主体的な活動が確保されるよう幼児一人一人の行動の理解と予想に基づき,計画的に環境を構成しなければならない。この場合において,教師は,幼児と人やものとのかかわりが重要であることを踏まえ,物的・空間的環境を構成しなければならない。また,教師は,幼児一人一人の活動の場面に応じて,様々な役割を果たし,その活動を豊かにしなければならない。』




 どこが改訂されたかを示す基本方針は次の通りです。

(1)改善の基本方針
○ 幼稚園教育については、その課題を踏まえ、近年の子どもの育ちの変化や社会の変化に対応し、発達や学びの連続性及び幼稚園での生活と家庭などでの生活の連続性を確保し、計画的に環境を構成することを通じて、幼児の健やかな成長を促す。


○ 子育ての支援と預かり保育については、その活動の内容や意義を明確化する。また、預かり保育については、幼稚園における教育活動として適切な活動となるようにする。

そして具体的事項としては、

(2)改善の具体的事項
(発達や学びの連続性を踏まえた幼稚園教育の充実)
a)幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続
b)体験と言葉の重視など子どもや社会の変化に対応した幼稚園教育の充実

 この2点があげられ、最後に「学校教育法における幼稚園の目標規定の改正を踏まえ、幼稚園教育要領における幼稚園教育の目標の規定の必要性を見直す。」と書かれています。


 長々と引用してしまいました。きっと退屈に思われたに違いありません。
 けれどもいくつかのことに目をとめていただきたいと思います。

 その第一は、幼稚園教育はいわゆる「子守り」ではないということです。けがをしないように、見守っているだけではないということなのです。
 幼稚園は文部科学省の教育要領に基づいて教育・保育を行わなければなりません。カリキュラムがあり、教育課程の編さんが行われ、日々の保育計画が展開されていきます。多くの人々が思うよりもはるかに緻密に保育計画を立てて、子どもたちに発見や経験をしてもらおうと工夫されている子どもたちの生活の場所なのです。

 第二は、教育要領は時代の変化によって見直されるということです。そしてそれに基づいて、幼稚園のカリキュラムや教育課程、そして日々の保育計画も見直されるということです。古いものをそのままに使い続けていくのではなく、常により良いものを目指していかなければならない。それが幼稚園なのです。

 第三に、今度は七尾幼稚園のやっていることを思い起こしながら、先の文章を読んでみましょう。

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 真新しいものがほとんど見あたりません。
 「幼稚園教育の基本」は、基本なのですから、わたしたちが常日頃から行っているものそのままです。特色教育と呼ばれる目玉の保育を導入することなく、かたくなに古典的幼稚園教育を守り続けているのが七尾幼稚園です。けれどもそれこそが幼稚園教育要領が求める幼稚園の姿なのです。
 では、変化の方はどうでしょう?
 「発達や学びの連続性」及び「幼稚園での生活と家庭などでの生活の連続性」はどうなっているでしょうか?自由遊びの中での遊びの展開は、わたしたちが最も誇りにするものです。お金ごっこがお家の中まで持ち込まれています。ユニーやどんたくで、幼稚園のお金を出して品物を買おうとした子どもたちのお話を聞くと、お家の方はびっくりなさるでしょうが、幼稚園のわたしたちとしては嬉しい出来事なのです。
 「子育ての支援」と「預かり保育」はどうでしょう。幼稚園のお弁当や延長保育、土曜日預かり保育や夏休み冬休み春休みの保育も、導入してからずいぶんたちました。マイ幼稚園制度など、七尾市が支援してくださる制度も、増えてきました。「幼稚園における教育活動として適切な活動となるように」ずいぶん前から工夫してきているのです。認定こども園の認定を受けて、満2歳前後からの入園も、公の認定を受けています。

 あら、やっていることばかりじゃないの。
 そんな風にわたしは思いました。

 普通、幼稚園の教育要領の改訂を受けて、幼稚園が改革されていくものです。
 ところがわたしの目には、七尾幼稚園がやってきたことを教育要領が追いかけてきているように思えます。

 けれどもちろん、毎年毎年新たな気持ちで子供達にとってよりよい保育を目指していきたいと思うのです。
(2008年2月26日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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