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職員室から

事務主事 釜土蘭子


 いつもと同じ朝がきて、毎日同じように幼稚園バスがやってきて、毎日同じように玄関の階段をあがっている子供達がいる。
 玄関ではなぜか毎日同じような子が、「おしらせばさみ出した?」と聞かれて、あわててかばんの中をあけている。いつもと同じ朝。幼稚園では「いつもと同じ」がとても大切。
 
 いつもと同じ春。チューリップの花の前でお歌を歌い、桜の花の下で寝っ転がる。かえるの卵をさわって驚き、アリさんを見つけて喜ぶ。
 いつもと同じ夏。セミの声を聞きながら虫取り探検。一匹もつかまえられなくても、子供達は十分その気分を満喫する。お庭の隅では色水遊び。すべり台の上ではシャボン玉遊び。
 いつもと同じ秋。いもほりやりんごがりにでかけて大喜び。お庭にはなぜか魔法のりすさんがやってきてどんぐりをおいていく。「どんぐりごま」を回す子供達。
 いつもと同じ冬。クリスマスの歌を子供達が大きな声で歌う。小さいお友達は、初めての雪遊び。手に握った雪がとけるだけで目を輝かせる。大きな雪だるまをみんなで作る。
 そして、いつもと同じ春になる。
 そんな「いつもと同じ」がらんこ先生は大好きです。出不精なのかもしれませんが、ずっとここにいて、「いつもと同じ」を見ているのが何よりも好き。「いつもと同じ」なのに、毎年子供達は変わっていて、同じなのに違う日々がそこにあります。
 先日、子供達といちごがりに出かけました。毎年の行事です。Dぐみさんの時にはいちごをとることさえできなかった子が、Cぐみさんの時には自分でとり、Bぐみさんになるとちょっと欲張って手にいっぱい確保しながら食べていて、Aぐみさんになった今年「これがおいしいよ」とお友達や先生にとってきてくれている姿を見ました。それがとても嬉しいのです。幼稚園の仕事の醍醐味はこんなところにあります。
 
 けれども、地震の為に、そんな「いつもと同じ」を続けることがなかなか難しくなっています。被害の確認やその文書の作成。来客への対応。ついには自宅の改築まで加わって、今年の春は、いつもとは違う春になってしまいました。
 いつもの仕事は遅れがちになり、卒業アルバムは4月になってから渡し、ホームページは3月から更新できずにいます。申し訳なく思いつつ、力不足を感じています。
 ただ、子供達の毎日は「いつもと同じ」であるように、「いつもと同じ夏」「いつもと同じ秋」そして「いつもと同じ冬」を迎えられるように努力していきたいと思っています。
(2007年5月28日 七尾幼稚園 職員室から)

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