直線上に配置

「根っこ食べたことありますか」

 園長  釜土達雄

 

  十七日に収穫感謝礼拝がありました。
 お家の皆様方にご協力をいただいて、野菜や果物を持ってきていただきました。それを礼拝堂に持っていき、みんなで収穫の喜びを共にしました。
 その場では、いろんな果物があることをみんなで確認しました。「りんご」「バナナ」「ミカン」「柿」「洋なし」・・・。いろんな果物を見てみました。
 いろんな野菜があることも確認しました。「白菜」「大根」「タマネギ」「ゴボー」「ピーマン」「シイタケ」・・・。いろんな野菜を確認しました。

 お部屋の時間に、CぐみさんやDぐみさんは、それらの野菜や果物を手にとってみました。さわってみてました。においをかいでみました。いろんな野菜や果物があることを確認したのです。食べたことのあるものばかりでした。この世界にはたくさんの食べ物がある。「料理」されて出てきたものとは形は違うけれど、元々の形はこうだったんだ。そんな一つひとつを確認してみたのです。

 AぐみさんやBぐみさんは、もう一歩前に進んで野菜や果物の中を見てみることにしました。
 多目的ホールに園長のわたしがエプロン姿で登場。まずはりんごを縦にパカッと切ってみました。続いて横にパカッ!種の部分の形が違うことに、子どもたちの歓声が上がります。次は柿。今度は種の見え方が変わります。ミカンになると全く違って、袋がいっぱい。そんな一つひとつに歓声が起こるのでした。
 野菜も同じように切ってみました。大根を縦にパカッ!にんじんを縦にパカッ!色が全く違って、きれいなのにはみんなで感動!
 さらにはピーマンをパカッ!ところがピーマンだと中の形が全く違うのです。おっー!という歓声と共に、そんな一つひとつの発見を、みんなでしたのでした。

 いろんな野菜や果物がある。色も形もにおいも違う。中の形だって違う。そんな発見をしてきたのです。


 次の十八日はおもちつき大会。
 なんとステキなことに、澄み渡るような秋晴れの朝。お家のみなさまもだんだんに集まってくださって、準備が始まりました。
 テントを張ったり、昨日から準備のしてあった臼や杵を定位置にセットしたり。カマドを設置して、お釜やせいろの準備。蒸気があがりはじめ、餅米が蒸されはじめるとだんだんにワクワク感が高まります。
 それと同時に、二階の視聴覚教室では、おもちつき器によってすでにお餅は出来上がってました。内緒のお話ですが、お持ち帰り用のあんこやきなこのおもちが、ここでは準備されはじめていたのでした。
 もちろんめった汁の準備も昨日からされていて、いよいよ最後の仕上げになっています。
 美味しそうなにおいが、そこはかとなくあちこちから幼稚園全体をつつんでいるのです。

 そんなワクワク感の中、ホールの時間が始まりました。園長先生のお話の時間になって、わたしが子どもたちにお話しをはじめました。

「みんなは、『根っこ』食べたことがありますか?みんなは、『葉っぱ』食べたことがありますか?みんなは、『種』食べたことはありますか?」
 子どもたちは、「え〜っ!食べられん!]
 けれどもわたしは、勢いよくしかもきっぱりと言うのでした。
「園長先生は食べたこと、あります!」

 「うそだ!」
 「あんなもん、どうやって食べる!」
 そんな子どもたちの声を聞きながら、再び同じはなしを繰り返すのでした。

「みんなは、『根っこ』食べたことがありますか?みんなは、『葉っぱ』食べたことがありますか?みんなは、『種』食べたことはありますか?園長先生は食べたこと、あります!」

 子どもたちのお目々はまん丸。そんな中で、「柿の種なら食べたことある。ピーナッツの入っているやつ!」なんていう声がかかったりして・・・、これは余談です。
 本当に大事なのはこれからなのです。

「みんなは、大根食べたことありますか?
 大根は、大根さんの根っこです。
 みんなにんじん食べたことありますか?
 にんじんは、にんじんさんの根っこです。
 みんなは、白菜食べたことありますか?
 白菜は、白菜さんの葉っぱです。
 みんなはキャベツ食べたことありますか?
 キャベツはキャベツさんの葉っぱです。
 みんなは、ごはん食べたことありますか?
 ごはんは、稲さんの種です。
 みんなはパン食べたことありますか?
 形は変わってしまったけれど、パンは麦の種を粉にして、お水を入れてこねて焼いてつくったものなんです。」

 子どもたちは驚きの声をあげながら、それでも「へぇー、そうだんたんだ」と納得の様子でした。

「このあとお餅と一緒にめった汁も食べるよ。その中には、みんなの持ってきてくれたお野菜もいっぱいはいっています。どんなお野菜が、どんな形になって、どんな味がするか、楽しみに食べてみてね。
 根っこや葉っぱや種の味、ちゃんと味わってね。」

 そしてあの日はちょうど、玄関に稲が飾ってあって、それはまた餅米の稲でした。「稲」「稲穂」「籾」「籾殻」「玄米」「白米」「ごはん」という言葉も聞いて覚えてきた子どもたちに、もう少し先に進んで、知ってほしい日でもあったのです。

「玄関にある餅米の稲、あの稲を白米にして、蒸して、ペッンタンペッンタンするとお餅ちになるんだよ。今日はお家の人がたくさん来てくださって、手伝ってくださいます。
 おもち、ついてみよう!」

 そして最後はこうでした。
 「たくさんのいのちによって、ボク達わたしたちは生きています。ちゃんとありがとうを言えるお友だちになってくださいね。」
 そうやって、園長先生のお話は終わったのでした。

 蒸された餅米、おこわを食べてみたり、餅つきの様子を見てみたり、そして自分たちでついてみたり。
 Aぐみさんは、あんこやきなこをつけることにも挑戦しました。
 そして最後は、めった汁と共にみんなで一緒の食事。特にCぐみさんやDぐみさんは、お家の方との一緒の食事になって、とっても嬉しそうでしたね。


 たくさんの実りが、わたしたちの大切な食材となっている。たくさんの命が、わたしたちのからだを支えている。
 命の大切さや食前の感謝の大切さ、さらに心を込めて食事を作る大切さは、命によってわたしたちの命が支えられていることを知る者だけに与えられる謙虚さです。
 (いのち)いただきます。
 感謝をしながらの食事。みんなですることができて、とっても良かったと思います。

 今回もたくさんのお支え、感謝。
(2006年11月27日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

トップ アイコン今月のトップページへもどる

直線上に配置