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職員室から

事務主事 釜土蘭子


  十一月から始まった「お金ごっこ」。今はクリスマスムードの中で、少し落ち着いてきています。が、一日一回0円のくじびきには、毎日たくさんのお友達がやってきます。
 少々わかりにくい「お金ごっこ」。簡単にご説明すると、まず子供達は「お財布」を作ります。それから、職員室の箱の中から「お金」の紙を5枚持っていくことができます。箱の中には1円から百円までいろんなものが入っているのですが、見ないでとるのがルールです。
 「お金」の紙をもらったら、はさみで丸く切り、お金の形になったら、お金になります。
お金になった後は、ずっとためていったり、何度もくじ引きをしたり、子供達の中でしている「なんでも屋」さんにいったりといろんな使い方ができます。
 さて、このお金ごっこ、「数」に関する事を学ぶのにとてもよいものなのですが、もう一つ、とても大切なことがあります。それはズルをしないという事です。
お金の事がわかってくれば、1円玉よりも百円玉の方がいいのは当然の事です。ここで、ちょっとズルをしたくなります。「見ないでとる」のがお約束なのですが、百円玉を見定めてとりたくなるのです。
 くじびきでも、当然はずれよりもあたりがいいのです。単純なところでは、お友達が「あたり」をひいたら、そのくじがくじびきの箱に戻されるのをじーっと見て、戻った途端にそれをとって、「あたり!」というのがあります。また、ずるい演技というのもあります。くじを開いた途端、はずれなのに、「あたり!」と大きい声でいって、周りに見せないで、くじの箱に戻すというやり方です。子供達なりに悪知恵を働かせていくのです。
 お金ごっこやくじびきには、毎年どうしてもこんなズルが存在してしまいます。やり始めた頃は監視を強めて、ズルが存在しないようにと心がけた事もありました。毎日見ていれば、「ズルしたな」とわかるのも事実です。
 でも何年も経験していく中で今はこんなふうに思っています。
 小さな子供達にとっては、初めて経験するちょっとのズル。その後でそれを発見された気まずさ。自分の心に残る、うしろめたさ。それらを経験してほしいのです。落ち着いて考えれば、少し時間をかければ、お金は集められるし、くじは何回もできる。ズルをしなくても「あたり」をもらえるチャンスはあるのです。
 だから、正直にやってほしい。毎日のお金ごっことくじびきの中で、そんな心の成長をも願っています。    
(2005年12月15日 七尾幼稚園 職員室から)

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