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職員室から

事務主事 釜土蘭子


   「みんなともだち、ずっとずっとともだち」という歌が流れ、卒業の季節を迎えました。
 最初にこの歌を歌った卒業生は、もう成人。この歌のように、学校にいっても、大人になっても友達でいるようです。

 毎年思う事ですが、一つのクラスは、幼稚園の毎日を共に過ごしていく中で一緒に成長していくものです。一人一人の個性はもちろんあるのですが、毎年卒業させるクラスには、そのクラスの個性というものがあります。
 
 今回卒業する子供達の小さい時、それは挫折に弱いクラスでした。
 CぐみさんやDぐみさんの頃、いえ、Bぐみさんになっても、このクラスは、勝ち負けのあるゲームが成り立ちにくいクラスでした。負ける事を極端におそれ、また負けた後に極端に落ち込んでしまうのです。
 またケンカが長引くクラスでもありました。お友達同士でケンカになると、「どうしたの」と教師が聞いても、どちらも黙りこくって何も言わない。「ごめんなさい」を言った後でも、すっきりしないお顔でなかなか遊びはじめられない。
 製作の時にも「できない」という言葉と共に手が止まってしまう事がよくありました。
 くじびきで「はずれ」が出ると、真剣なお顔で「蘭子先生なんか大嫌い!」と言っていたのもこの子達でした。

 そんなクラスに身に付けてほしい力、それは「挫折回復力」でした。

 困難に出会っても、再び立ち上がる力。
 苦しい時でも、自分を見失わない心。

 そんな挫折回復力を身につけてほしいと心から願っていました。

 卒業を目の前にした今、ステキなポケモンハウスを作りあげ、ドッジボールを楽しむみんな。大きく成長した事を実感するのです。


 Aぐみさん、君たちはとても強くなった。君たちはステキに成長したね。

 何年かたって、君たちの事を考える時、蘭子先生はあの雨の運動会の状況を一番最初に思い浮かべるでしょう。
 ずっとみんなで準備してきたのに、みんなで楽しみにしてきたのに、雨。一度お庭に砂をまくことまでお家の方がしてくださったのに、また雨。最初から場所を移していればよかったのだろうか。どうしたらいいのか・・・。先生は正直落ち込んだんだよ。
 ホールで再開された運動会。周りの大人の暗い気持ちを吹き飛ばしてくれたのは、君たちの笑顔だった。雨だって、する場所がちょっと狭くたって関係ない。いつものように楽しそうに組体操をしていたね。いつものようにお友達と一緒に笑いながら・・・。
 あの時、思ったんだ。君たちはいつの間にか「挫折回復力」をつけていたのだと。それも一人でではなくクラス全体としてできるようになったのだと。嬉しかった。
 

 これから君たちの生きる道、そこには困難がいろいろあるでしょう。理由なく傷つけられる事があるでしょう。正しく評価してもらえない事があるでしょう。自分ではどうすることもできない状況で立ちつくすこともあるかもしれません。突然の雨のように。

 けれどどんな時でも、自分一人の殻の中に閉じこもってはダメだよ。いじけているだけでもいけない。人を傷つけてしまうのはもっといけない。自分を傷つけてしまうのも決してしてはいけない。

困難な状況でもしっかり生きることのできる人になって下さい。そして挫折もしっかり受け止められる人になって下さい。そして、挫折を知っているが故に、人に優しくできる人になって下さい。

 卒業おめでとう。いつまでも君たちの事を見守っています。
(2005年3月17日 七尾幼稚園 職員室から)

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