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職員室から

事務主事 釜土蘭子


   新聞やテレビでは、小学校の総合学習の見直しというのが話題になっています。
 小学校と違って、幼稚園は毎日が総合学習的な世界です。お正月遊びの定番、「かるた」はひらがなへの興味という点では、国語のようです。けれど誰が勝ったのかがわかる為には、枚数が数えられなくてはいけませんね。遊びの中でいろんな事を複合的に学んでいくのが、幼稚園の世界です。
 
 そんな幼稚園の毎日の中でも、秋から行う「お金ごっこ」は最も複雑な総合学習です。
 自分のお財布をもたなくてはいけません。少し前まで、自分の物とお友達の物の区別がつかなかった小さいお友達にとっては大変な課題です。(今年はお家に帰ってお母さんに自分の特別なお財布を作ってもらったお友達も多く見られました。ご協力感謝です。)
 枚数が数えられなくてはいけません。
 「はさみ」が使えなくてはなりません。
 五円と五十円、十円と百円の区別が付かなくてはなりません。
 「両替」ができるようになるまでには、十進法が理解できないといけません。
 くじびきは毎朝9時三十分から始まります。時計を見て、今何時かみてきます。

 お部屋の時間やホールの時間でする事とは違って、「全員が必ず参加する」遊びではありません。「お金集め」より「くじびき」が楽しみな子がいます。「バイト」が大好きな子もいます。どの程度参加するかは全く自由に任されています。自発的な活動の中で、何を得ていくのか・・・。何ヶ月もいえ、長い子は4年がかりの学びです。
 
 10円5枚で50円になるんだということが初めてわかったとき、子供達はとっても嬉しそうなお顔をします。そして、がんばってお金を貯めていって、千円札を手にした時、とても誇らしげな顔になります。そこには千円札という物を得たことより、それがわかるようになったという喜びがあります。

 今年は、自分のお店を持つお友達まで登場しました。バイトを雇う事、商品開発をする事。どの場所でするか。どうしたら魅力的なお店になるか…。ついに「経営学」にまで発展していったのかと思うと嬉しい限りです。

 総合学習の議論と同時に、子供達の学ぶ意欲がなくなっているという報道を耳にします。 小さな子供達は、自分の生きている世界の事を知りたいと本来思っているはず。
 卒業式まであと一ヶ月。学ぶ事は楽しいのだと、知識を得ることは嬉しい事なのだと、十分に感じてもらって、小学校へと送り出してあげたいと思っています。    (釜土 蘭子)

(2005年2月22日 七尾幼稚園 職員室から)

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