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「クリスマスになくてはならないもの」

 園長  釜土達雄

  クリスマスが近づいてきました。
 町の中には、クリスマスソングが流れ、クリスマスツリーが飾られています。

 クリスマスには、なくてはならないものがあります。
 まず何をおいても、クリスマスツリーがなければ、クリスマスの雰囲気は高まりません。クリスマスツリーに飾る飾りも必要です。丸い玉に、リンゴ、天使、雪の結晶。いろんな飾りが飾り付けられています。その一つひとつを付けていかなければクリスマスの雰囲気は高まりません。
 雪の代わりに少しの綿ものっけてみましょう。ピカピカ光る電飾も必要です。そして、ツリーの一番高いところにはお星様。これがないとクリスマスツリーにはなりません。

 七尾幼稚園のクリスマスツリー、玄関に一本とホールに一本、そして教会の外に一本。合計三本が立っています。いつもはないのに、クリスマスの時期になると登場するあのクリスマスツリー。あの木は本物の木。毎年お願いをして、山から切ってきて頂いているのです。毎年のクリスマスのための、特別の三本です。
 ところで、あのクリスマスツリー、どんなふうに立っているかご存じですか?
 実は園舎を建てる時にクリスマスツリーを立てるところをあらかじめ決めておきました。そしてそこの部分に穴を開けておき、ふたをしておいたのです。普段はふたがしてあるのですが、クリスマスの時期になるとふたを取り除きます。そこにすとんとクリスマスツリーを入れるのです。チョッピリ自慢のアイデアなのでした。


 クリスマスにはなくてはならないものがあります。



 クリスマスツリーだけではだめです。やっぱりクリスマスソングが流れていないといけません。
 「赤鼻のトナカイ」「サンタが町にやってきた」「あわてん坊のサンタクロース」…。

 そうそう、サンタクロースも必要です。トナカイも必要です。ソリも必要です。
 そして何よりも、クリスマスプレゼントが必要です。


 石川県におもちゃの『トイザらス』ができた2年目の十二月。七尾幼稚園の子どもたちのために、お砂場のおもちゃをたくさん買い込んだ時がありました。これを、サンタさんのクリスマスプレゼントにしようと考えたのでした。カートにいっぱい入れて、カートを押しながら精算所に向かって歩いていました。その時、一人の男の子が、わたしのあとをついてくるのに気づきました。
 振り返ると、緊張してわたしを見つめる5歳ぐらいの男の子。その彼が、ちょっとツバを飲み込んで聞いたのです。
 「おじさん、・・・サンタさん?」
 一瞬、なんと答えたらよいか判らなかったのですが・・・。
 「しっ!ないしょ」と、言っちゃった。
 彼は小刻みに首を縦に振って、駆けていきました。

 クリスマスプレゼントのためには、大きなくつしたも必要かもしれません。サンタクロースが入ってくるためには、えんとつも、必要かもしれません。けれど一番の楽しみはクリスマスプレゼント。子どもたちの中からは、「サンタさんはユニーでプレゼント買ってくる」とか、「トイザらス」で買ってくるとか、いろんな声が聞かれます。「手紙が書けないとプレゼントがこない」、そう信じている子もいます。いずれにしろ、クリスマスにクリスマスプレゼントは不可欠です。


 マニアックな方の中にはアドベントクランツやアドベントカレンダーが必要という方もいらっしゃるかもしれません。
 アドベントは翻訳すると「待降節(たいこうせつ)」。クリスマスの4週間前の日曜日から始まります。今年は、十一月三〇日の日曜日が、アドベント第一主日でした。そして、四週間目の一九日が、アドベント第四主日。教会では、この日にクリスマス礼拝を守っています。
 アドベントが始まると、クリスマスを待ち望む嬉しい季節の到来。クリスマス・ツリーを飾り、アドベント・クランツに灯をともします。




 アドベント・クランツはリースの上に4本のロウソクを立てたもの。1週目は1本、2週目は2本、3週目は3本で、4本灯った4週目にクリスマスがやってくるのです。
 アドベント・カレンダーは、十二月一日から二十四日までの毎日,絵の中にある窓を一つずつ開けて,クリスマスまでのカウントダウンを行うためのカレンダーです。


 七尾幼稚園のホールには、特大!のアドベントカレンダーがあります。クリスマス会の時にも、もちろん正面に飾ってあるアドベントカレンダー。実はこのアドベントカレンダー、七尾幼稚園のオリジナルなのです。今から十二年前の母の会の皆様方が、手作りで作ってくださったものなのでした。
 すべては一人の役員の方の発案で始まりました。母の会役員会で基礎となるデザインを作り上げ、得意な人が集まって型紙を作り、パーツをくりぬき、そして、母の会総出で縫い上げたのです。みんなでわいわい言いながら刺繍を縫っていました。何日も集まり、家に持ち帰って縫い合わせ、一気にできあがった時の喜びはひとしおでした。ところが、みんなで分担したので、よく見ると、縫い上げた袋の模様がバラバラ。それもまたご愛敬と、統一することなく今に至るまでそのまま使っているのでした。





 このアドベントカレンダーのデザインは、皆様がご存じのとおりのイエス様がお生まれになったユダヤのベツレヘムの馬小屋。マリア様やヨセフさんと一緒に、馬に羊に村人達。また、3人の博士に羊飼い達、そして天使達とクリスマス物語に登場するすべての登場人物がアドベントカレンダーの袋の中に入っているのでした。
 ちょっとマニアックなのは、初日に登場することになっている星。普通の☆の形ではなく、とがったところが六つあるダビデの星にしてあるのでした。
 また、クリスマスが終わって、片づける日に最後に残ったひとつの袋を開けるのですが、その袋に入っているのは、一生懸命走っている一人の人物。その名はアルタバン。「もう一人の博士」(ヴァン・ダイク/著 新教出版社)という小さな物語を読んで頂ければ、その深いマニアックな意図が分かって頂けるかもしれません。
 そうそう、クリスマスには、なくてはならないものがあります。
 それは、何よりもこの日お生まれなったイエスという小さな赤ちゃんです。マリアを母とし、ヨセフを父とし、ユダヤのベツレヘムと言う小さな町の馬小屋の中でお生まれになったイエスという赤ちゃんです。
 後にキリスト(救い主)と呼ばれるようになる赤ちゃんです。
 今年は二〇〇四年。クリスマスから数えて、二〇〇四年たったのだと数えられるようになった赤ちゃんです。

 クリスマスには、なくてはならないものはたくさんあります。そのために、どれほどたくさんのものが準備されてきたことでしょう。けれども、その中心にこの日生まれたイエスという赤ちゃんがいなければ、それは何の意味もないのでしょう。

 目的のための手段が、目的そのものになってしまうことは確かにあります。そしていつの間にか、本来の目的が見失われてしまう。そんなことは確かにあるのです。
 本当に大事なものは何なのか。
 クリスマスの夜に、振り返ってみたいと思います。
(2004年12月17日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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