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「ストーリーのある毎日」

 園長  釜土達雄

   2学期になってからの行事はいつもはらはらドキドキのお天気だった七尾幼稚園。ところが今回のおもちつき大会は違っていました。輝くばかりの青空!多くの方からお祝いとお褒めの言葉をいただきました。

 とてもさわやかな気分と共に始まったおもちつき大会。たくさんの方にお手伝い頂いて、無事終わることが出来ました。子どもたちも大いに盛り上がって、楽しいひとときが過ごせました。本当にありがとうございました。
 特に、何も判らないままおもちつきの準備を手伝ってくださった皆様には、重ねてお礼を申し上げます。

もち米を前日にといでおいて、一晩お水につけるということも、初めて知った方も何人もいらっしゃいました。
 臼の中にお湯を入れて、一晩寝かせる。「なんで洗うだけではなくてお湯を入れるの?」不思議でしたよね。杵もお湯で洗ったあと、先をお湯につけておきました。

 せいろの中にもち米を入れます。「どのくらいの量いれるですか?」。
 せいろで蒸します。「どうやって?」。
 外でかまどで火をたき、おかまの上にせいろを置きます。「なぜ、外?」。
 たくさんの???があって、その一つひとつを、おしゃべりの中で理由を聞いて、体験の中で実感してくださったのでした。



 同じような体験を子供たちもいたしました。

 子どもたちは、いつもとは違う雰囲気の幼稚園に、二〇日の朝登園してきました。
 テントの中に準備されている、臼と杵。
 重ねられているせいろ。火の入っているかまど。プーンとにおってくるめった汁のかおり。そして何よりも、ちょっとざわめいた感じでお手伝い下さるお家の皆さん。卒業した小学生達も、何人も幼稚園にやってきました。
 いつもと違った、おもちつきの、独特の雰囲気が子どもたちを興奮させるのでした。

 ホールの時間が始まる頃には、せいろの中でもち米が蒸し上がりました。
 ペッタンペッタン、最初のおもちつきが始まります。音が聞こえます。もち米の香りがします。威勢のいいかけ声も聞こえます。

 そんな中で私が子どもたちの前でお話しをすることになりました。
 「今日はおもちつき大会です。お外の方を見てごらん。おもちをついているのが見えますね。耳を澄ませてみましょう。ペッタンペッタンという音が聞こえますよ。
 おもちをついている棒が、キネ。
 おもちが入っているところが、ウス。
 後でみんなにもお手伝いをして欲しいのです。てつだってくれますか?」

 お話しをしている最中に、蘭子先生がつきあがったおもちを持ってきてくれました。
 「おもち、できたよ〜!」
 「すごーい!」と子どもたち。
 みんなに見せたあとに、ちょっと試しに私が食べてみようとしました。
 「だめ〜!」
 みんな、大騒ぎです。

 ホールの時間が終わってから、みんなにおもちつきを手伝ってもらいました。

 まずせいろから蒸し上がったもち米を取り出して、臼の中に入れます。
 そのもち米をちょっとだけすくって、お皿に入れて、みんなで食べてみました。
 「普通のごはんじゃないよ。もち米だよ。
 普通のごはんはついてもおもちにならないけれど、もち米はおもちになるんだよ。」
 いつもと違う食感に「おいしい!」。

 いよいよおもちをつき始めます。
 お米の形をしていたもち米が、どんどんつぶれておもちになっていきます。
 つきあがる頃に、子供達にも手伝ってもらいました。
 「1、2、3、4、5!」
 お友達がついているのを応援します 。
 「・・・ちゃん、がんばって!」

 できあがったおもちをにあんこときなこをつけるお手伝いをAぐみさんは体験しました。


 そしていよいよお昼のごはん。
 お母さん達につくって頂いためった汁と一緒におもちを食べたのでした。


 お米の形をした蒸し上がったもち米が、おもちになる。それにあんこやきなこを付けてみんなの食べるおもちになる。その一連の流れが大事なのでした。
 そればかりではありません。もっともっと長い長い物語がありました。

 いろいろなおでかけの時に、田んぼの変化を見てきました。Aぐみさんは「稲刈り」を見に行きました。
 「稲」「稲穂」「もみ」「もみがら」「玄米」「白米」「ごはん」。一つひとつを確認してきました。



 また、おもちつき大会の前日は、「収穫感謝礼拝」をしました。ご家庭からお野菜や果物を一つずつ手にして幼稚園にきた子供達。それを手に持って少し緊張しながら礼拝堂に入ってきます。礼拝堂の正面で、私は一人一人の子供達からそれを受け取ります。そして、みんなの野菜や果物が入ったかごを前にして、こんなお話しをするのです。


 「ここにさつまいもがあります。これはだれが持ってきてくれたさつまいもかな?
 さつまいもはどこにあったかな?

 「土のなか!」

 「ここにりんごもあるね・・・りんごはどこにあるのかな?」

 「木の上!」

 いもほり遠足やりんごがりの体験が子供達の心に生きています。
そのおいもやりんごを収穫できた喜びが収穫感謝礼拝の中で思い出されます。作って下さった方への感謝、神様への感謝を素直に感じます。


 
 そして、その翌日のおもちつき大会でみんなが食べるめった汁には、必ずその収穫感謝礼拝で持ち寄られた野菜が入る事になっています。

 めった汁を食べながら、こんな話をします。

 「汁の中には何が入っているかな?」
 
 「だいこーん」
 
 「あれ、昨日だいこん持ってきてくれたお友達がいたね。その大根かな?
 
「ぼくはニンジン持ってきたよ」

 「それ、入っているかな?」


 おもちつき大会。それは、ただ「おもちを食べる」という事ではありません。「おもちつきを経験する」という事にとどまりません。もちろんそれも大切ですが、ワクワクする出来事を含めた、準備からの一連の出来事、全部が大切なのです。「めった汁」を食べるのもただ食べるのではありません。その作物ができるまでの様子を思い浮かべる時なのです。

 
 収穫感謝祭の礼拝とおちつき、ここには、作物と係わる一年の、全部の集大成があるのです。

 子どもたちの毎日の生活には、ストーリーがある。
 そうそう、一年というストーリー。前日からのストーリー。おもちつきのストーリー。そのすべてを、みんなと一緒に体験する事が大事です。ストーリーが大事なのでした。

 今年も、作物と係わるストーリーのひとつが、完結いたしました。
 たくさんの方にお手伝い頂いて、このストーリ−が完結できたこと、嬉しく思います。本当にありがとうございました。

 
(2004年11月26日 七尾幼稚園園だより巻頭言)

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