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初めてのことには 時間がかかるよ

園長 釜土達雄



 今回、ぜひとも記したいことがあります。
 きっと多くの人が、「今回はきっとこの話だろう」と想像していらっしゃるでしょうし、「まぁ、今回だけは聞きましょう」と、きっと言ってくださるであろう、そんなこのお話しがあります。そしてきっと、あとしばらくすればあまりにも当たり前になっていて、もう誰も聞いてくださることはない、そんなお話しです。だから、今回ぜひとも記したいお話しなのです。
 それは、

 七尾幼稚園がホームページを開設した!

 というお話です。

 いやはや大変だった・・・。


 何からお話ししたら良いのでしょう。この苦労は、あまりにもたくさんお話ししたいことがあって、何からお話ししたらよいのかわからないくらいです。
 何冊も本を買い込みました。「かんたん図解ホームページ」「ホームページデビュー完全解説」・・・横幅にして三〇pもの厚さになるホームページ関連書籍が目の前にあります。けれど、読み終えた本は一冊もありません。ぱらぱらと見開いて、並べて安心した本の山・・・。だからといって、ホームページができあがったわけではありませんでした。

 今使っているホームページは、「ホームページビルダー」というソフトによって作りました。けれど、これは二回目に買ったソフトです。最初に買った「ホームページビルダー」は確か四年前に買ったもの。インストールはしたのですが、使ってみることはなかったソフトです。今回は二回目。けれど、二月に買って、ホームページを作る気満々だったのですが、十月までほおっておいたのでした。


 何がそうさせたのでしょうか?
 反省しきりでもうしますが、だいたい解説書に知らない単語が多すぎるのです。わかりやすく解説はされているのですが、全てがわからない世界でいくら親切に解説されても、最初から「わからない」という気持ちが先に立って、言葉が頭の中に入らない。誰かが教えてくれると良いのにと思って聞いてみようとしても、「何を聞いて良いのかがわからない」。それでも何とか少し理解した気持ちになって聞いてみるといきなりハイレベルになったような気がしてさらに落ち込んでしまう。いやはや、本当に困り果てました。


 いよいよせっぱ詰まって、集中してホームページだけに集中できる三日間をいただいて、エイやーと始めてみたのですが、やっぱり歯が立たないほどに複雑に感じました。
 今から考えれば簡単なホームページビルダーなのに、一旦設定してしまった背景色が変えられない。文字の大きさが変えられない。文字を右や左に変化させることが出来ない。一旦保存したはずなのに、全ての飾り文字が消えて別の文字になってしまっている。などなど、わかる人にはわかるかもしれないけれど、わからない人には???の連続があの頃のわたしでした。
 自分を追いつめるために、「三日以内にホームページを立ち上げるから」といっておいた友人からは、「まだですか?」と冷たいお言葉。本当に腹立たしいったらありゃしない。
 手当たり次第に「リンクが出来ない」「アップが出来ない」「更新が出来ない」と愚痴ばかりのメールを何人にも送ってSOSをしていたのです。

 今から考えれば親切な返事にも、うまくいかない時には冷たいメールに感じます。ホームページにカウンターを入れるのに半日がかりでうまくいかなくて挫折してしまいました。知り合いに聞いたら、「簡単じゃん、他からコピーして持ってくれば良いんだよ。あとで名前を変えればいい」。短いこの言葉の意味がわからない・・・。挫折したわたしのあとに蘭子先生が引き継いでやはり半日がかりでうまくいかない。「こりゃだめだ」とあきらめかけていた時に考えた。「あれ?もしかしたら、自分で入力するんじゃなくて、同じプロバイダーの他のホームページから、必要事項をコピーして、アドレス名だけを変えたらいいんじゃないか?」
 やってみたら・・・三十秒でカウンターがついちゃった・・・。



 わたくしがパソコンを始めたのは比較的早かったのではないかと思います。正確に覚えていないのですが、いまから十六年ぐらい前ではなかったでしょうか。NECの98シリーズが出始めたころでした。それまでの88シリーズが五インチのフロッピーを主に使っていたのに対して3.5インチのフロッピーが出始めのころでした。

 そんな頃、一九八六年に電気通信事業法の改正がなされます。電話回線の利用制限が緩和されることによって、当時の言葉で「新しい電子ネットワークの誕生」が起こります。
 それまでは、ワープロやゲームソフトが中心だったパソコンの世界に一気にパソコン通信の波が押し寄せてきました。一九八七年から始まったニフティサーブの会員には、わたしも一九八八年にはすでになっていたはずです。けれども、七尾にアクセスポイントがなくて、金沢か富山がアクセスポイント。どうしても電話料金が高額になってしまって、今でも会員ですが、挫折してしまったのです。

 パソコン通信からインターネットが始まります。パソコン通信で挫折しましたが、もう一度インターネットなるものにチャレンジしてみようと考えたのは、五年前でした。アドレスを取得しましたが、最初は誰もメールをくれなくて・・・。ホームページも覗いてみましたが、そんなにおもしろいホームページがあるわけでもなく・・・。
 ホームページの必要を感じていても、挫折の連続だったのです。


 そうそう、わたしの場合、最も大きな困難は、「挫折経験がある」ということでした。パソコン通信に挫折していました。ホームページの作成に挫折していました。
 だから、本当に必要だということがわかっていて、作らなくっちゃと思っていても、どうしても腰が重くて、出来ない言い訳ばかりを思いつくのです。

 七尾幼稚園のホームページのインデックスは、澤野さんに作っていただいたのですが、それを手渡されたのはもう一年以上も前のこと。何と長い間ほおっておいたことでしょう。
 出来ないのではないか。出来るはずがない。そんな思いがいっぱいあって、どうしても前に進むことが出来ない。挫折した経験は、出来ない理由を説明する知識の蓄積だったといって良いかもしれません。

 わかっているのです。どんなに簡単なことでも、その一つひとつのトラブルを、自分で解決していかないと自分のみにつ身に付いたものにならない。アドバイスしてくれる人に共通する親切なメッセージでした。ご無理ごもっとも。けれど、何度誰かに丸投げをしたいと思ったことでしょう。


 初めてのことで、うまくいくことはほとんどありません。ベテランになっても失敗があるのですから、挫折こそ初体験の花。成長の土台に違いない。
 初めてが終わって、少しずつ成長をしていくその時には、それこそ長〜い目で見てもらわないと、次のスッテプに進むことは出来ないに違いないのです。

 挫折の中からようやく抜け出して、ささやかに七尾幼稚園のホームページをそれなりに公開できて、挫折から抜け出す大変さを味わうことが出来ました。初めての事柄を、自分なりに身につけることの大変さを実感したのでした。


 そして、ふりかえって幼稚園の子供達を思います。何とたくさんの「初めて」があることだろうかと思います。何とたくさんの「挫折」があることだろうかと思います。何とかこの子たち一人一人が、「初めての体験」を大事にし「挫折」を乗り越えて、「初めての事柄を、自分なりに身につけて欲しい」。そう思います。いっぱい出来ないことがあったから、どこが出来ないかがわかるから、「だいじょうぶ」って、言ってあげたいと思うのです。

 初めてのことには時間がかかる。だけど、初めての事柄を、自分なりに身につけて欲しい。心からそう思います。
(2001年11月28日 七尾幼稚園園だより巻頭言)



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