不妊症治療:体外受精について

産婦人科科長・産院院長 小浜 隆文


近年、出産数の減少に伴い、不妊症に対する社会的関心が高まり、挙児を希望して外来を受診される方が、増えてきております。それに平行するかのように、体外受精児(すなわち、体外受精によりできた児)が年々増えてきており、これまで国内で生まれた体外受精児が累計で一万四千人を越えたことが、明らかとなっております。

このような背景をふまえて、当科でも、本年6月より体外受精、胚移植による不妊治療を開始いたしました。体外受精の具体的説明の前に、正常妊娠の過程、一般的な不妊症の原因について、説明させていただきます。

正常妊娠の成立までの過程

排卵日に射精された精子は、子宮頚管を通過し、速やかに子宮内腔に入ります(a)。その後、卵管口を通過し卵管膨大部に達します。卵管膨大部で、卵子と遭遇し、受精が起こります(b)。授精した卵子を受精卵と言います。受精卵は、二分割卵、四分割卵、さらに八分割卵となり、桑実はいとなり(c)、その後胞胚は子宮腔内に達し、着床します(d)。ここをもって妊娠といいます。

不妊症の原因

以上の正常妊娠の過程のどこかに傷害があれば妊娠する事ができないわけであります。
  1. 精子の数が少ない
  2. 子宮頚管に異常があり精子が子宮に入れない
  3. 卵管に異常があり、卵子と授精できない
  4. 排卵しない
  5. 卵管の通過性はいいが授精しない
  6. 受精卵が着床しない
などが主な不妊の原因と言えるでしょう。

不妊症の治療

精子が子宮内に入れない場合は、人工授精を行ないます。精子を排卵日に子宮腔内に注入する方法で、外来で簡単に行えます。
排卵が行なわれない場合は、女性側に排卵を促進させるために誘発剤を投与します。排卵誘発剤は内服薬ではクロミッド、注射ではHMG、ヒュメゴン等があります。クロミッドは生理の五日目より五日間内服、HNG、ヒュメゴン等は、五日目より約一週間前後投与します。注射による治療では卵巣過剰が刺激され水がたまる、卵巣過剰刺激症候群が起こることがありますので、充分経過を観察しながら投与します。
以上の治療は現在外来の治療の一端として頻繁に行なわれています。問題は、卵管が詰まっていて授精できない、あるいは原因が分からないがとにかく妊娠しないといった場合です。こういった場合に体外受精の適応となります。

体外受精について

1978年初めて体外受精、胚移植による第一号の赤ん坊がイギリスで誕生して以来、現在日本でも昨年一年間で約四千六百人の体外受精児が誕生し、累計でも約一万四千人に至っております。この体外受精児の増加は、採卵、媒精、移植技術の進歩、確立、安全性(奇形発生率)の評価、設備費用の安価が考えられます。いずれにしろ、体外受精が、極めて身近なものとなってきた感があります。それでは体外受精の手順を簡単に説明します。

  1. 過排卵刺激ー通常、採卵前に卵巣を刺激し、卵胞を大きくし卵を熟化させます。刺激法は先ほど説明した排卵誘発剤を用います。採卵の時期は卵胞径が18mmとなり、血中の卵胞ホルモンが850pg/ml以上となったときに、HCG(人絨毛性ゴナドトロピン)10000単位を注射し、36時間後に採卵します。
  2. 採卵ー刺激された卵巣から、卵子を取り出します。経膣的に行いますので、お腹を切ったりすることもなく、極めて簡単に行えます。
  3. 精子調整ー採卵した卵子と精子を合わせる前に、よりよい精子を集めます。通常、swam-up法によって行います。
  4. 媒精ー卵子と精子を合わせます。通常、採卵後4時間後ぐらいに行います。
  5. 授精の判定ー媒精17−19時間後に行います。
  6. 胚移植ー通常、採卵後2−3日後に行います。
  7. 黄体期管理ー胚移植前日あたりから、黄体ホルモンを注射します。
  8. 妊娠判定ー胚移植後14日目に行います。
以上が体外受精の大まかな手順です。すなわち先ほどの正常妊娠の着床までの過程を全て体外で行うことになります。
体外受精の成功率(一回の体外受精卵で出産できる確立)の昨年の全国平均値は16%、また多胎妊娠率は20%、流産率は26%であります。施設によっては、40〜50%の成功率を認めるところもあります。

体外受精治療装置の一部

当産婦人科での体外受精治療費は、一回につき計7万円前後であります。不妊症の原因をいち早く明らかにし、もし体外受精の適応があるならば早めに行ってみるのがよろしいのではないかと思います。ぜひとも、お気軽に相談しに来て下さい。

関連報道記事へ


ほっとたいむ目次に戻る