温泉の効用
温泉の効用
院長 神野 正博
温泉には、温泉水の温熱作用、または水圧や浮力などの機械的作用、それに含有成分らよる化学作用があり、さらには温泉水が湧き出している場所の海・山・森林などの自然環境の作用があります。ですから温泉の作用は、単にお湯に入るだけでなく、滞在する温泉地の気候、地形、産物などの作用も含まれ、これらが総合的に体に働きかけて温泉効果が生まれるのです。入浴して熱くも冷たくも感じない温度を不感温度といって、これはほぼ体温に近い摂氏36度前後の温度です。この温度ですと呼吸、血圧、新陳代謝などの生理的変化が最も少なく、この温度を超えるにしたがって変化が大きくなっていきます。
温熱作用と機械的作用
温度の刺激によって、まず呼吸数や脈拍数が増加し、新陳代謝を促進します。とくに42度以上の高温浴の場合には血圧にも影響して、入浴直後は30から50も上昇します。体温に近いぬるい温度では、気分を鎮めたり痛みを和らげたりします。温度はその人の好みによりますが、なるべくぬるめの入浴がおすすめです。温泉入浴によって体は水圧を受けて全身が圧迫され、尿の排泄が促されたり足のむくみが軽くなったりします。しかし、肺や心臓に負担がかかりますから、呼吸器や循環器系に病気を持つ人は、首まで浴槽につかることを止めて、浮力を利用して胸の部分を水面に近づける姿勢で入浴するとよいでしょう。温泉水は比重が大きいので浮力の作用は大きく、体重は約10分の1となるので、浴槽の縁を枕にして手足を伸ばし、浮いた姿勢での入浴がすすめられます。
化学作用
温泉にはいろいろな化学成分がふくまれています。ラドン、泡のたつ二酸化炭素、温泉らしい特有の匂いがする硫化水素などのガス、それにヨード、鉄、銅などのイオンは、皮膚を通して体内に吸収されたり、呼吸器粘膜からもとり入れられ、また温泉を飲む飲泉によっても消化器の粘膜から体内に入ります。温泉成分である食塩などが皮膚に付着すると、浴後も水分の蒸発を防ぎますし、化学成分の刺激で皮膚が充血し、皮膚の血液循環がよくなるので、温泉入浴は体がよく温まります。温泉を飲用する飲泉は薬と同じ作用があり、たとえば食塩泉や硫酸塩泉を冷たくして飲むと、下剤として作用しますし、鉄を含む温泉は貧血に有効です。また、硫黄泉は糖尿病、痛風、便秘に、放射能泉は痛風、胆石などに対して薬物療法の補助的療法として利用されます。これは、胃腸から吸収された水分が排出される際に、代謝の残りカスが、同時に体から排出されることや、温泉成分の薬理作用と刺激作用によるものです。
自然環境の作用
温泉の効果は、泉質だけでは決められません。同じ泉質の温泉でありながら、異なった種類の病気に効果があったり、逆に異なった泉質の温泉であるのに、同じ種類の病気に効いたりします。温泉の効きめは、温泉入浴と温泉地の気候の刺激、日常生活でのストレスからの解放、温泉地へ行く転地といった心理的作用などから生まれます。
千メートル以上の山は、刺激興奮的に作用し、海辺は興奮や緊張を鎮める作用があり、森林内は大変温和な環境をつくっています。これらの作用が温泉地帯在によって総合的に働いて、病的に傾いた身体の諸機能が、自律神経や内分泌系を介して正常化され、人間に本来備わっている自然治癒能力が高まり、健康回復、健康づくりに役立つのです。
温泉は一種の刺激療法として利用されますから、当然その刺激に向かない症状があるわけです。急性の病気、悪性腫瘍、重い心臓病や重症の高血圧などでは温泉は禁止です。一般に、筋肉痛、関節痛、神経痛、運動マヒ、慢性消化器病、ストレス解消、健康増進、痔などに利用されます。
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