老人性痴呆の検診とリハビリテーション:北国新聞1998.7.27,28 北国新聞1998年7月27日朝刊生活面

シリーズ「親」:老人性痴呆の検診

自分のことができる間に受けて



「親」欄に登場いただいた痴呆老人を介護する子世代は、決まって「まだ大丈夫と思っていたが」という言葉を口にする。頼りがいのある世代に静かに進行していく老いを、身近にいる人ほど認めにくいのかもしれない。老人性痴呆の進行を客観的に判断する検診を行っている七尾市富岡町、恵寿総合病院の川北慎一郎リハビリテーション科科長に検診のとらえ方について聞いた。


恵寿総合病院では脳ドッグの一環として二通りの痴呆症予防検診を行っている。

一つは、簡略な検診で、「今年は何年ですか」などの質問に答えていき、脳の全般的な知能検査をするMMS(ミニメンタルテスト)と、「むかし あるところに、ひとりぐらしのおばあさんがいて・・・」などの文章を理解しながら「あいうえお」の文字を拾う、かな拾いテストなどの前頭葉の機能を調べるテストを行う方法である。

もう一つは、この検診に脳の画像診断をするMRIを加えるという検診である。

例えば、MMSは合格でもかな拾いテストで不合格という結果が出れば、初期の痴呆だと考えられる。

痴呆症には、脳血管性痴呆とアルツハイマー型老人性痴呆、両者を合併しているものがあるため、原因が何か見極めて、脳血管性であれば、脳梗塞などの治療を行う。確かに効く薬がないといわれるアルツハイマー型であっても生活習慣を変えたり脳の活性化訓練を行うことで進行を食い止めることができると川北科長はいう。

結果より対策重視

川北科長らは老人性痴呆検診を受ける上で大切なことは、自分で自分のことができるうちに検診を受けることと結果よりもその後の対策に重点を置くことを指摘する。

無意識のうちに徘徊したり大声を出すなどして初めて、周りの人は痴呆だと認めがちだが、その時期では検診よりも介護の必要性が高い。

検診で痴呆という結果が出ても仕方がないとあきらめずに、生活習慣を改善し、脳活性化訓練を行う。十年以上二万人を超す高齢者の経過観察をした静岡県の浜松医療センターの脳外科医、金子満雄さんの調査では、脳活性化訓練などの対策をとった結果、痴呆の改善または進行に歯止めがかかったという結果が出ている。

80代では50%に

川北科長は65歳を越えてもひとつも脳梗塞の見つからない人の方が珍しいといい、統計的には、60代の12%、70代の30%、80代の50%に病的な早期痴呆が存在する事実から、検診で正確な判断をしていくことの大切さを訴える。

恵寿総合病院で老人性痴呆の検診を受ける人は70歳以上で、何かほかに病気があるという人が多く、検診のみで訪れる人は少ない。

川北科長は、閉じこもりがちな人や新しいことを進めてもしようとしない人は、改善しにくいようだと言う。

また趣味を持つにしても、経験があれば体が自然に動くような茶道、習字、民謡などの習い事よりも、碁や将棋、トランプ、パズルなどの創作的なゲームが効果的だとも指摘する。


北国新聞1998年7月28日朝刊生活面


シリーズ「親」:老人性痴呆とリハビリテーション

寝たきりになってもあきらめず続けて



老人性痴呆の検診を行っている七尾市富岡町、恵寿総合病院の川北慎一郎リハビリテーション科科長は、痴呆とリハビリテーションは密接な関係にあると指摘している。

第一に、痴呆が進むと、リハビリテーションが順調に進行しない。

リハビリテーションをする必要のある人は、通常、まず自分の機能を認識し、ショックを受け、周囲の「やればできる」という励ましや判断で、リハビリを頑張ろうと思い、取り掛かる。

しかし、たとえば、骨折して歩けなくなった高齢者に対して、周囲はこのまま寝たきりになっては大変とばかりにリハビリを勧めるが、老人性痴呆が進んでいて尿意を感じられない人の場合は、自力で排泄したいという、歩くための大きな目的が失われているため、本人がリハビリの必要性を感じず、努力する気にならないということになる。

だからといって痴呆が進んだ人の場合、リハビリが必要ないということではなく、介護のためのリハビリが必要だと川北科長は指摘する。

寝たきりになると、足を使わなくなる。そのままほうっておけば、股関節がかたくなり、介護者がおむつを替えることも難しくなる。

寝る時に足をまっすぐ伸ばしていると、腰に負担がかかるため、自然とひざや股関節を曲げて寝る。そのままにしておけば曲がったままになり、車イスに乗せようとしても難しい。

このような場合、健康状態を考えて無理のない範囲で、専門家の指示に従い、股関節の曲げ伸ばしやひざの開閉をしてやると寝たきりだった人が車イスに座れることもある。

「疲れる→することがない→横になる→体力が落ちる→疲れる・・・」という悪循環を繰り返すうちに歩けなくなったり、知的活動が低下したり、消化機能が衰えるなど、使わないがために機能が落ちていき、元のレベルにまで戻すことが難しい廃用症候群となってしまう。

「高齢になるほど廃用を起こしやすいことに気づいてほしい」と川北科長は呼びかける。

例えば、肺炎など内科疾患で二週間入院し、安静第一に過ごしていたら、足が弱ってしまったというケースもある。こうした場合、川北科長は、あくまで病態に応じてという前提はあるが、リハビリテーション専門医の指導の下、患者がベッドの上に座って何かを作ったり、ベッドの上で足を上げたり、ベッドの横のいすに腰掛けるなどの作業をするだけでも、病気が治った後の体調の回復がスムーズになると指摘する。


報道記事Archives目次に戻る