米国核安全保障局による放射能汚染データに関する質問主意書


下記の質問主意書を提出する。

平成二十四年八月六日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 昨年の十月より、米国核安全保障局(以下、NNSA)は、ホームページにて福島第一原発事故後、日本国内で実施された放射能汚染データ(計測値、計測を行った地点の緯度経度、核種、値、計測時刻、計測方法)を次々に公開し、簡単な手続きを経てパスワードを入手すると(1)航空機計測によるセシウム土壌沈着量(2)土壌サンプリング計測(ポロニウム、ストロンチウム、プルトニウムなどを含む)(3)空気中の核種毎の放射線量(ヨウ素、ストロンチウム等)(4)現地計測機器による土壌沈着量(主としてセシウム)(5)空間線量(ガンマ線、ベータ線)の主として5種類のデータを入手することができる。

 このNNSAの公開データによると、日本で計測されたストロンチウム90の数値と比較にならないほど高い数値が示されており、国際的な「風評被害」が生じる可能性は否定できない。政府は、このことに関する事実関係、認識をどのように捉えているか、早急な対応が求められていることから以下の事項について質問する。 

一 文部科学省はNNSAがホームページ等を通して、現在公開している福島第一原子力発電所事故に関連した「Raw Data(生データ)」について、その内容を把握しているか、示されたい。 

二 昨年十一月の政府東京電力統合対策室合同記者会見において、文部科学省は、公開された「航空機データ」について言及し、(1)空間線量のデータ、(2)ダストのデータ、(3)土壌のデータ、(4)画像データ(いわゆる航空機モニタリング)の四種類としている。しかし、(4)のデータは実際にはKMZ形式のKMLデータ、すなわちExtensible Markup Language で記述された地理情報の形態で公開が行われており、これは「画像データ」とは全く性質の異なる「生データ」そのものである。文部科学省はこのデータ形式がいかなるもので、どのような処理を施すことで「元の表の状態」に戻し得るか、その方法を承知しているか、見解を示されたい。 

三 二の(4)のKMZ形式のデータを「元に戻した状態」で適切な数学的な補間法を適用すれば、面的なデータに簡単に変換でき、任意の間隔による等高線等を生成することで汚染範囲の特定等に加工可能であることを承知しているか、示されたい。 

四 NNSAのホームページや文部科学省のこれまでの公表によれば、航空機モニタリングによる調査については、米国側と協力関係の下で行われた旨、知ることができるが、他の土壌サンプリング等のデータ取得については、どのような協力体制が取られたのか。文部科学省や外務省、防衛省等の協力関係があったのか、あるいは、米国は全く単独で調査が実施されたものなのか、政府の見解を示されたい。 

五 現在NNSAが英語により公開しているデータの内、例えば、ストロンチウム90についてのデータを見ると、文部科学省の公式発表とは大幅に異なる数値が示されている。七月二十四日付けの新聞各紙の報道では、ひたちなか市での計測データは6Bq/平方メートルといったものだが、NNSAのデータを一般的な変換方法で同じ単位に変換すると、その最大値は25,686Bq/平方メートルにも達し、全く比較にならないような数値となる。ストロンチウムは計測方法が難しく、データの信頼の確保は極めて重要である。しかし、このようなデータが米国国家機関から英語で世界的に公開されている以上、この値が「日本のストロンチウム汚染値」として世界的に一人歩きしかねず、何らのコメントも出さずに放置すれば、早晩、深刻な国際的な風評被害を起こしかねない。また、今回のNNSAが公開したデータにはストロンチウムだけではなく、さらに人体には危険とされるポロニウムやプルトニウムも含まれており、尚更このような事態の発生を危惧するところである。このような事態に鑑み、至急にNNSAが公開しているデータを専門的に検討し、国としての公式な見解を英語により広く世界に発信する必要があると考えるが、その対応について何らかの考えがあるか、見解を示されたい。 

六 日本政府自身のデータの公開について、米国同様に生データの公開を考えているのか。現状は、極めて姑息な手段により、敢えて元となるデータをできる限り隠蔽しているとしか考えられないような方法により、公開が行われているが、その点について政府の見解を示されたい。 

七 六に関連して、例えば、文部科学省の放射線量等分布マップ拡大サイトでは電子国土を用いて公開されているが、これは、電子国土の利用規約にすら明らかに違反する隠蔽そのものである。そもそも電子国土を利用する以上、JSGI-XML言語より記述された「電子国土に重ねる情報」を外部から閲覧可能な状態で公開しなければならない。しかし敢えて閲覧不可能な状態として公開しているが、これには、通常の電子国土の仕様では技術的に不可能なものであり、特殊なプログラムの開発を必要とする。このようなプログラムを敢えて開発してまでこのような形態でデータを公表していることは、国民に元々のデータを意図的に隠蔽するために行ったものであると考えざるを得ない。このようなプログラムの開発については誰の指示によるものか、また開発に関わった関係者、開発事業者、開発に要した費用の開示を求めると同時に、現在の公開に使われている仕様を改め、重ね合わせデータを外部サイトからも利用可能な通常の形態に改めるべきであると考えるが、政府の見解は如何。

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
米国核安全保障局による放射能汚染データに関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第360号
平成24年 8月14日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 米国核安全保障局による放射能汚染データに関する質問 に対する答弁書

一について

 文部科学省としては、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下 「福島第一原子力発電所」 という。) の事故に関連して、米国が福島県、茨城県、東京都など13都県において、平成23年3月から同年4月にかけて測定した空間線量率、同年3月から同年5月にかけて採取した大気及び土壌に含まれる放射性物質の濃度の測定結果並びに同年3月から同年4月にかけて実施した航空機モニタリングの画像データを米国国家核安全保障機関(以下「NNSALという。) がウェブサイト上で 「Raw Data」 として公開していることは承知しているが、その測定方法等の詳細については承知していない。

 

二及び三について

 NNSAがウェブサイト上で 「Raw Data」 として公開している航空機モニタリングの画像データは、御指摘のとおり 「KMZ形式のKMLデータ」 であり、これは地図情報にその他の情報を画像化して重ねたものを表示するための画像データの形式の一つと承知している。また、御指摘の 「元の表の状態」 や 「元に戻した状態」 の意味するところが必ずしも明らかではないが、「KMZ形式のKMLデータ」 で保存されたモニタリング結果を一覧表の形に変換するなどのお尋ねの方法について、文部科学省としては承知していない。

 

四について

 NNSAがウェブサイト上で 「Raw Data」 として公開している、航空機モニタリング以外の放射性物質の測定結果については、土壌等の試料の採取や計測に当たって、日本政府が協力した事実があったとは現段階では確認しておらず、また、米国が 「全く単独で」 調査を実施したものかについても承知していない。

 

五について

 御指摘の 「一般的な変換方法」 の意味するところが必ずしも明らかではないが、NNSAがウェブサイト上で 「Raw Data」 として公開しているデータの測定方法等の詳細を承知しておらず、現段階ではその解析は困難であると考える。なお、文部科学省においては、放射性ストロンチウムに関して、福島県、宮城県及び茨城県にわたる福島第一原子力発電所か.ら半径80キロメートル圏内において平成23年6月から同年7月にかけて採取した土壌に含まれる放射性ストロンチウムの濃度を測定した結果について、同年9月に、地図情報に当該測定結果を画像化して重ねたものを表示するとともに、一覧表の形で公表しているほか、福島県の福島第一原子力発電所から半径約65キロメートル圏内において同年3月から同年5月にかけて採取した土壌及び植物に含まれる放射性ストロンチウムの測定結果を同年4月から同年6月にかけて、福島県沖、宮城県沖及び茨城県沖を始めとする海域において同年四月から平成24年2月にかけて採取した海水、海底土及び海洋生物に含まれる放射性ストロンチウムの測定結果を平成23年7月から平成24年8月にかけて、御指摘の茨城県ひたちなか市において測定した結果を含む、宮城県及び福島県を除く45都道府県の平成23年3月以降における一か月間の上空からの降下物に含まれるストロンチウム九十の測定結果を平成24年7月に、横浜市により平成23年9月に採取された堆積物及びその採取箇所の周辺の土壌に含まれる放射性ストロンチウムの測定結果を同年11月にそれぞれ公表しているところである。

 

六及び七について

 文部科学省は、「文部科学省放射線量等分布マップ拡大サイト」 において、航空機モニタリング等の測定結果を地図上に表示するに当たり、個々の地点のデータの全てを当該サイト上で表示すると大量のデータにより利用者の通信が困難になることから、利用者の利便性を優先し、地図情報に当該測定結果を画像化して重ねたものを'電子国土の利用規約に沿って適切に公開しているところである。御指摘のような「JSGI−XML言語」 により 「記述された 「電子国土に重ねる情報」 を外部から閲覧可能な状態で公開しなければならない」 という電子国土の利用規約はなく、当該サイトの公開に当たり電子国土における特殊な対応を行うためのプログラムを開発したという事実もない。

 また'御指摘の 「生データ」 の意味するところが必ずしも明らかではないが、放射線モニタリングの結果の公開については、「総合モニタリング計画」 (平成23年8月2日モニタリング調整会議決定) に沿って関係省庁等の関係機関がそれぞれ適切に行っているところであり、政府としては、今後とも放射線モニタリングの結果について、できる限り国民の利便性に考慮した適切な形で公表するよう努めてまいりたい。 


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