国家公務員の新規採用抑制に関する再質問主意書


下記の質問主意書を提出する。

平成二十四年六月七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 前回質問主意書にて国家公務員の新規採用抑制に関する政府の考えを問い、答弁を受けたが、不十分だった点について更に確認したく再質問すると共に若者の雇用の観点からも政府の認識を伺いたい。
 以上を踏まえ次の事項について質問する。 

一 前回質問主意書の五及び六に対する答弁で、治安対策や国民の安全確保に配慮した結果、法務省及び国土交通省の新規採用者数の上限値は、平成二十一年度と比べ、五十二%減、五十%減と、全体の平均である五十六%減に対し、低い抑制割合になっていることを示されたが、果たしてこの程度の割合の比較で配慮したと言えるのか。大事なのは国民の安全の為に必要な現場での人員確保に対する配慮であり、全体の平均値と比較すること自体ナンセンスなのではないか、政府の見解は如何。 

二 前回質問主意書九に対し、大幅採用抑制の取組は、平成二十五年度及び平成二十六年度の二年間に限り実施することとしている旨の答弁を受けたが、二年間の限定措置であれば、この期間に新規採用試験を受ける若者にとっては非常に不公平に感じるが、雇用の公平性の観点から政府の認識を示されたい。 

三 前回質問主意書の十一は、政府の新規採用抑制が、民間雇用に及ぼす悪影響を懸念するものであり、その答弁が不十分なので再度質問する。 

四 同じく前回質問主意書の十一に対する答弁で、「若者を学校から職場へ円滑につなぐための取組」とあるが、具体的にどのような意味か、示されたい。 

五 四に関連して、新卒者の就職支援は当然重要であるが、一方で若者の雇用対策において新卒就職が叶わなかった方や一度ラインを外れてしまった方に対する支援が課題であり、政府答弁からはその重要性に関する認識を感じることが出来なかったが、見解は如何。 

六 就職に失敗して自殺する若者が急増している。警察庁の調査によると昨年は統計を取り始めた二〇〇七年から二,五倍の一五〇人が就職を理由に自殺しており、その内、学生は五十二人にのぼる。こうした背景には雇用情勢の悪化があることは言うまでもないが、政府はこの現状をどう認識し、対策を取り組むべきとお考えか、示されたい。 

七 新規採用抑制のように、声を挙げにくく、絞りやすいところから絞っていくようなやり方を優先して行うことにより、若者が希望や目標を持てなくなってしまうのではないか、政府の認識を示されたい。 

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
国家公務員の新規採用抑制に関する再質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第285号
平成24年 6月15日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 国家公務員の新規採用抑制に関する再質問 に対する答弁書

一について

 「平成25年度の国家公務員の新規採用抑制の方針について」 (平成24年4月3日閣議決定)に基づき、総務大臣が平成25年度の各府省の新規採用者数の上限値を決定するに当たっては、各府省から、業務の実情や新規採用者数の抑制(以下「新規採用抑制」という。)が業務に与える影響などについて聴取の上、治安対策や国民の安全確保の観点から、その現場での人員確保には一定の配慮を行い、協議調整を行ったところである。全体の平均の抑制割合と法務省及び国土交通省の抑制割合については、その結果をお示しする一つの指標として用いたものである。

 

二について

 国家公務員の新規採用者数が年度によって大幅に変動することは、国家公務員を志望する者の立場から見れば好ましいものではないと考えるが、現下の厳しい財政状況や、社会保障・税一体改革に関連し国民に負担をお願いせざるを得ないことを踏まえ、政府としては、総人件費削減のためあらゆることに取り組まなければならないと考えており、その一環として、平成25年度及び平成26年度の2年間に限り、大幅な新規採用抑制の取組を実施することとしたものである。

 

三及び四について

 国家公務員の新規採用抑制について、御指摘のような懸念があることは承知しているが、政府としては、二についてでお答えしたとおり、現下の厳しい財政状況や、社会保障・税一体改革に関連し国民に負担をお願いせざるを得ないことを踏まえ、総人件費削減のためあらゆることに取り組まなければならないと考えており、その一環として取り組んでいるものである。現下の厳しい雇用情勢の中、若者の雇用対策を行うことの重要性は認識しており、政府として、労働界、経済界、教育界と若者の厳しい就職環境についての切実な危機感を共有し、一体となって、若者が生き生きと働ける雇用の場を継続的に生み出し、若者を学校から職場へ円滑につなぐための取組を行っていくことが必要であると考えている。このため、「「日本再生の基本戦略」について」 (平成23年12月24日閣議決定)に盛り込んだ「若者雇用戦略」を関係大臣、労働界・産業界を始めとする各界のリーダー及び有識者で構成する「雇用戦略対話」で平成24年6月12日に合意したところであり、今後、その実行に向け、鋭意取り組んでいくことにしている。

 なお、若者を学校から職場へ円滑につなぐための取組とは、若者が高等学校、専修学校、大学等(以下「学校等」という。)からの卒業後早期にその能力をいかした仕事に就けるようにするためのものであり、具体的には、学校等の要請に応じた校内へのジョブサポーター相談窓口の設置や出張相談の強化を行う等の取組である。

 

五について

 学校等の卒業時に就職できなかった者や正社員として就職できずフリーターとなった者に対する就職支援は重要であると考えている。

 このため、学校等の卒業時に就職できなかった者に対しては、平成22年に青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第二百七十五号)を改正し、事業主が取り組むべき措置として、学校等の卒業後少なくとも3年間は新卒として応募できるようにすることを規定したところであり、「若者雇用戦略」においても、雇用のミスマッチ解消のための一つの柱として 「既卒3年新卒扱いの標準化」を位置付けることにしているところである。

 フリーターについては、ハローワークにより、きめ細かな職業相談を実施し、正社員としての求人を開拓しているほか、フリーターを有期雇用後に正社員として採用する場合に奨励金を支給する取組を行うとともに、支援対象者ごとに担当者を決め'履歴書の作成相談、面接指導、応募先の選定についての相談等を個別に行う「わかもの支援コーナー」及び「わかもの支援窓口」を平成24年4月に全国で204か所設置するなど、正規雇用を目指すフリーター等への就職支援を強化している。さらに、「若者雇用戦略」では、「わかものハローワーク・支援コーナー・支援窓口を全国展開」することにしているところである。

 今後とも、学校等の卒業時に就職できなかった者やフリーターに対する就職支援の取組を一層進めていく必要があると考えている。

 

六について

 29歳以下の若者の自殺者数は、平成19年には3,857人、平成23年には3,926人であるところ、そのうち就職失敗を原因・動機とする自殺者数は、平成19年の60人から平成23年の150人へと大きく増加している。若者の自殺の問題は、厳しい雇用情勢ともあいまって、深刻さを増していると認識しており、自殺対策を総合的に推進する中で全力で取り組んでまいりたい。

 若者の雇用対策については、五についてで述べたもののほか、新卒者については、学生等が利用しやすい専門のハローワークとして全国で57か所に「新卒応援ハローワーク」を設置するとともに、ジョブサポーターを増員配置するなどの取組を行っており、きめ細かな職業相談・職業紹介を一層充実していくことにしている。

 

七について

 国家公務員の新規採用抑制は、二についてでお答えしたとおり、現下の厳しい財政状況や、社会保障・税一体改革に関達し国民に負担をお願いせざるを得ないことを踏まえ、政府としては、総人件費削減のためあらゆることに取り組まなければならないと考えており、その一環として取り組んでいるものである。

 他方、早期退職に対するインセンティブを高めるための退職手当の割増しや、民間の支援会社の活用も含めた透明性の高い再就職の支援等の中高年齢層の自発的な離職・再就職を支援する措置の具体化にも取り組んでいるところであり、「声を挙げにくく、絞りやすいところから絞っていくようなやり方を優先して行う」との御指摘は当たらないものと考えている。


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