生活保護における自治体の家裁申し立てに関する質問主意書


下記の質問主意書を提出する。

平成二十四年六月六日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 六月二日の読売新聞記事によると、主要七十四区市への調査で、生活保護受給者に扶養可能な親族が存在し、その扶養義務者との負担額の協議が調わない場合に自治体が活用できる家裁への申し立てが昨年度はゼロ件であったことが明らかになった。政府は家裁への申し立ての積極活用により、扶養義務の履行に繋げていきたい考えを示しているが、現場の負担やケースワーカーの権限、能力などの課題も山積していることから、その実効性について、以下の事項について質問する。

一 今回の読売新聞の取材で報じられた、昨年度の家裁への申し立てがゼロ件であったことについて、事実関係を確認したい。また、制度が出来てから家裁への申し立てが活用された事例は、これまで何件存在したのか、示されたい。 

二 何故、自治体による家裁への申し立てが殆ど活用されていない状況にあるのか、政府の認識を示されたい。 

三 小宮山厚生労働大臣は、「明らかに扶養可能なケースについては、家裁に対する調停等の申し立て手続きの積極的な活用を図りたい。具体的には扶養請求調停手続きの流れを示したマニュアルを自治体に示し、着実な扶養義務の履行につなげていきたい。」との旨の発言をされているが、今回明らかになったように家裁による過去の判例が殆ど存在しないような状態で実効性は担保できるのか、政府の認識は如何。 

四 国による、扶養義務者の所得や資産、家族構成等を勘案した一定の扶養基準について、政府はその必要性はあると認識しているか、示されたい。 

五 扶養義務者へ収入などの資力を確認するための問い合わせを行い、意図的に虚偽の返答を受けた場合に罰則は存在するのか、また罰則があった場合これまで適用された件数について示されたい。 

六 扶養義務者の資力把握にあたり、収入や資産、家族間の構成、関係など、行政がどこまで立ち入ることが適切だと認識しているか、政府の見解を示されたい。 

七 現場で対応しているケースワーカーの負担増大について指摘されているが、必要な労力は確保できるのか、政府の認識は如何。 

八 生活保護の見直し、厳格化により、生活困窮者など本当に困っている人が、保護を受けられない、躊躇ってしまうようなことはあってはならないが、政府の認識、今後の対応策について示されたい。 

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
生活保護における自治体の家裁申し立てに関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第282号
平成24年 6月15日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 生活保護における自治体の家裁申し立てに関する質問 に対する答弁書

一について

 生活保護法 (昭和25年法律第百四十四号。以下 「法」 という。) 第七十七条第二項の規定に基づく扶養義務者の負担すべき費用額の確定に係る家庭裁判所への申立て (以下単に 「申立て」 という。) の件数は、最高裁判所に確認したところ、把握している限りでは、平成23年は零件、申立ての制度が創設された昭和25年から平成23年まででは24件とのことである。

 

二、三及び七について

 申立ての件数が少ない理由としては、どのような場合に申立てを行うことが適当かの判断が容易でないこと等が考えられる。

 このため、厚生労働省としては、申立てを行う場合の参考となる事例及び申立てに関するマニュアルを地方自治体に対して示すことにより、福祉事務所の負担軽減を図りつつ、家庭裁判所の判断が必要となる事例については、適切に申立てが行われるようにしていきたい。

 

四について

 生活保護制度における扶養に関する問題については、その性質上、努めて当事者間における話合いによって円満に解決されることが基本であるとともに、個別の事情に応じて適切に判断すべきものであることから、一律の基準を設定することはなじまないものと考えている。

 

五について

 お尋ねの 「意図的に虚偽の返答を受けた場合」 が具体的にどのような場合を指すのか必ずしも明らかではないが、不正な手段により他人に保護を受けさせた者については、法第八十五条に罰則が規定されており、福祉事務所長等からの扶養に関する照会に対する扶養義務者の回答内容等によっては、同条が適用される場合があり得る。また、同条が適用された件数については、把握していない。

 

六について

 お尋ねについては、一般的には扶養義務者の収入、資産、可能な援助の程度等を照会しているが、個別の事情によっては照会を差し控えるべき場合もあるものと考えている。

 

八について

 生活保護制度については、支援が必要な方に対して適切に保護を実施することが基本であり、厚生労働省としては、今後とも、この考え方に基づき同制度を運営していきたい。


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