文化芸術振興に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年六月一日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 文化芸術は人々の心を育み、創造性をかきたて、心の豊かさを実感することが出来、日々の生活の活力となる。また国そのもののアイデンティティーとして、そのブランド力を高めることは多角的な面から国益に資する。我が国が誇る文化芸術を世界に発信することで、日本への関心や好感度を高め、世界に日本の価値をアピールし、かつ輸出産業としても大きな効果が期待出来る。

地域では、それぞれの特性を活かした文化芸術活動が行われており、地域住民により身近なコミュニティーツールとして活用されている。また観光などを通じた地域の活性化にも大きな貢献を果たしており、我々の生活の一部として欠かすことが出来ない存在であることから、国家戦略として文化芸術振興に取り組むことが必要である。

以上を踏まえ、以下の事項について質問する。 

一 国の基本政策における文化芸術の位置付け役割について、政府はどのように認識しているか、見解を示されたい。 

二 東日本大震災によって多くの方々が心に大きな傷を負い、その後も不安定な生活を余儀なくされている。そうした中で文化芸術は被災者の方々の心に安らぎを与え、希望をもたらし、被災地復興に大きな力を及ぼすものと認識している。政府は文化芸術が被災地復興にどのような影響をもたらすものとお考えか。また、復興に向け被災地の文化芸術活動の振興に取り組むべきでないか、見解を示されたい。 

三 文化芸術に対する国の財政措置が脆弱であることはこれまでも指摘されてきた。日本の国家予算における文化予算の割合は概ね〇,一一%であり、フランスの〇,八六%、韓国の〇,七九%と諸外国と比べても極めて低い水準である。文化力は国力そのものであり、文化芸術を国家政策の根幹としていくためにも、より文化予算を充実させていくことが必要ではないか、政府の見解は如何。 

四 文化芸術を支えているのは、国家予算以外に、民間寄付が重要な役割を果たしている。これまでも個人や法人による寄付金への税制面の優遇措置を行ってきたものと承知しているが、諸外国と比べると民間寄付の面でも低い水準にある。文化芸術振興を支える、個人寄付や企業のメセナ活動などをより推進していくための施策が必要ではないか、政府の見解は如何。 

五 三、四に関連して、国家予算による公的支援を中心とするフランス型、また公的支援は少額であるが寄付金の比重が高いアメリカ型があるが、日本の文化芸術政策にとって、将来的にはどちらの形態を目指していくほうが適していると認識しているか、政府のビジョンを示されたい。 

六 日本の文化芸術は海外から高く評価されており、日本の新たな成長分野として輸出産業、観光資源など大きな可能性を持っている。文化芸術を発信することで、他国の日本の伝統や文化への理解を深め、また震災からの復興を海外に向けて示すことが出来る。このように日本の文化芸術産業のブランド価値を高めていくためにも、官民一体となった、海外に向けた売り込み戦略が必要であると考えるが、政府の見解と現在の取り組みについて示されたい。 

七 文化芸術立国として、その地位を確立していくには次世代を担う人材の育成は欠かすことの出来ない取り組みであるが、現在の日本の状況は決して充分なものとは言えず、これまで芸術家の熱意や犠牲的精神に支えられてきたものと承知している。芸術家がその活動に集中できる環境の整備が必要であり、人材育成を重点的に行っていくべきと考えるが、政府の認識は如何。 

八 文化芸術は地域においても貴重な観光資源であり、地域の特性を活かした文化芸術活動が住民同士の交流や生活に重要な役割を果たしている。

  その一方で、都市部と地方において文化芸術の鑑賞機会の格差が存在するなど、実演者、劇場が都市部へ一極集中している状況を指摘されている。こうした都市部と地方の文化間格差を解消し、芸術拠点を充実させ、地方でも文化芸術の体験機会を享受できるような環境整備が必要だと考えるが、政府の見解は如何。

 以上質問する。。



衆議院議員馳浩君提出
文化芸術振興に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第274号
平成24年 6月12日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 文化芸術振興に関する質問 に対する答弁書

一について

 文化芸術は、心豊かな国民生活を実現するとともに、活力ある社会を構築して国力の増進を図る上で重要である。このような観点から、文化芸術の振興を国の政策の根幹に据え、「文化芸術立国」 を目指しているところである。

 

二について

 文化芸術は、人々をひき付ける魅力や社会への影響力を有し、被災者の方々を元気付けるものであり、また、創造的な経済活動の源泉として、被災地における経済の活性化にも資するものであると考えている。

 このため、政府においては、これまでも、被災地の復興に向け、被災した文化財及び文化施設の調査及び復旧、被災地の子どもへの文化芸術に触れる機会の提供などの支援に取り組んでおり、引き続き、被災地の文化芸術活動の振興に努めてまいりたい。

 

三から五までについて

 平成24年度においては、文化庁関係予算として、東日本大震災復興特別会計に計上した約24億円を含め、過去最高の約1516億円を確保したところである。今後とも、「文化芸術立国」 の実現に向け、必要な予算の確保に努めてまいりたい。

 また、文化芸術に対する支援については、社会を挙げて行うことが必要であり、国や地方公共団体による支援とともに、個人や企業といった様々な主体からの寄附等を促進することが重要であると考えており、個人による寄附金の所得控除や、企業等の法人による寄附金の損金算入等、個人や企業等からの寄附を促進するための税制上の措置を講じているほか、優れたメセナ活動を行う企業等を表彰しているところである。引き続き、これらの制度等を活用することにより、文化芸術活動への寄附やメセナ活動を促進してまいりたい。

 

六について

 文化芸術を含む我が国の魅力をいかした製品等の海外展開や観光客の誘致について、官民一体となって推進することが重要と考えており、現在、「日本再生の基本戦略」 (平成23年12月24日閣議決定)等を踏まえ、関係府省庁が連携し、官民一体となってクールジャパン戦略の強化等による海外市場の開拓、海外展開支援、情報発信等に取り組んでいるところである。

 

七について

 次代の文化芸術を担う人材を育成するため、新進芸術家等がその才能を伸ばし、能力を発揮できる環境整備を行うことは、我が国の文化芸術の振興を図る上で重要であると考えている。

 このため、政府においては、新進芸術家等に対する海外における研修への支援や国内における研修、公演等の機会の提供等を実施しており、引き続き、新進芸術家等の人材育成に努めてまいりたい。

 

八について

 地域の特性をいかした文化芸術活動を推進するとともに、人々がその居住する地域にかかわらず、文化芸術に触れる機会を確保することは重要であると考えている。

 このため、政府においては、これまでも、地域の舞台芸術の振興をけん引する劇場、音楽堂等が地域住民や芸術関係者等とともに取り組む舞台芸術に関する活動への支援や、地方公共団体が地域の活性化を促進するために企画する文化芸術に関する事業に対する支援等を実施しているところであり、引き続き、地域における文化芸術活動の充実に努めてまいりたい。


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