大学の秋入学に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年三月二十三日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 東京大学が打ち出した、学部の秋入学への移行に関する本格的な検討着手について、政府も概ね評価をする姿勢を見せていると承知しているが、大学の秋入学への移行により、大学の国際化への対応や、国際競争力の強化等のメリットが期待される一方、就職活動やギャップタームの期間の対応等について現実的な懸念も抱えていることから、政府の基本的な認識を確認したく以下の事項について質問する。 

一 東京大学が秋入学への移行に関する検討を表明したことに、どの様な意味があり、他の大学に如何なる影響を及ぼすものと認識しているか、見解を示されたい。 

二 これまで、日本の大学は海外の大学と入学時期が異なることを理由に大学の国際化、国際競争力が遅れていると指摘されてきたが、世界標準の秋入学に移行することにより、それらの問題が改善できると認識しているか、見解を示されたい。 

三 二に関連して、秋入学に移行すればそれらが解決できるという単純な話ではなく、大学の授業内容しかり、優秀な教授の存在や大学の環境面など、もっと根本的な原因があるのではないか、政府の見解は如何。 

四 大学の秋入学が実現したことを想定して、秋入学に移行する大学と移行しない大学で分かれた場合、あらゆる面で混乱が生じるものと考えられるが、基本的には大学の入学時期は統一した方が望ましいとお考えか、政府の認識を示されたい。 

五 海外の大学において、入学時期が分かれている国とその状況について示されたい。 

六 大学の入学時期が分かれたままの状態になった場合、企業は採用活動を通年、または春・秋と二回に分けて行う必要があり、企業の負担、特に中小企業にとって重たい負担になると考えられるが、政府の認識は如何。 

七 六に関連して、秋採用を普及させていくのであれば、まずは政府が率先して国家公務員の秋採用を実施し、民間企業に示していくことが必要ではないか、見解は如何。 

八 秋入学が実現した場合、高校卒業から大学入学まで半年間のギャップタームが生じることになり、学生がボランティア活動やインターン、海外研修などに取り組むことを期待されているが、その受け皿は十分に確保出来ると認識しているのか。大学の規模や地方の大学によっては、受け皿を用意できないところもあるのではないか、見解は如何。 

九 八に関連して、そのような活動が出来るのは経済的に余裕のある家庭の学生だけで、大半の学生はギャップタームの期間をアルバイト等に明け暮れてしまうような状況になることが懸念されるが、政府の認識は如何。 

十 関連して、経済的に余裕のある家庭の学生だけが海外研修などの活動を行うことは経済力による教育格差を助長させることにならないか、見解は如何。 

十一 家計への影響を考慮して、家計負担が増大しないよう、低所得家庭に対する奨学金の充実なども必要と考えるが、政府の認識は如何。 

十二 秋入学への移行に関して、大学の入学時期だけを想定しているのか、いずれはそれに合わせ小中高でも秋入学に移行することが望ましいとの認識なのか、政府の将来的なビジョンについて示されたい。

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
大学の秋入学に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第151号
平成24年 4月 3日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 大学の秋入学に関する質問 に対する答弁書

一について

 大学における秋季入学の導入等に関する検討は、グローバル人材の育成等の観点から国際化や国際競争力の強化に資し得るものであると考えており、議論の実りある進展が大いに望まれるところである。東京大学が秋季入学への移行を検討することを表明したことは、国際化や国際競争力の強化を図る各大学に大きな影響を与えるものであり、他の大学においても国際化や国際競争力の強化に向けた様々な議論が行われているものと承知している。

 

二及び三について

 一についてで述べたとおり、大学における秋季入学の導入等に関する検討は、大学の国際化や国際競争力の強化に資し得るものと考えているが、これのみによって大学の国際化や国際競争力の強化を図る上での全ての課題が解決するとは考えておらず、大学の国際化や国際競争力の強化を図るためには、大学教育の質の向上等を含めた様々な課題の検討が必要であると考えている。

 

四について

 政府としては、大学の多様性を尊重し、各大学の自主的「自発的な検討を見守りたいと考えており、大学への入学時期を統一することは現時点では考えていない。

 

五について

 お尋ねの点については、把握しておらず、お答えすることは困難である。

 

六について

 お尋ねの企業の採用活動への影響については、実際に秋季入学を導入し、又はこれに移行する大学の数等により変動するものであり、その影響の程度について現時点でお答えすることは困難である。

 

七について

 国家公務員の採用の実施時期については、グローバル人材育成推進会議において、大学における秋季入学の導入等に関する主な検討課題の一つとして取り上げているところでもあり、今後の大学における秋季入学の導入状況等を踏まえつつ、お尋ねの「秋採用」の実施の是非を含め検討してまいりたい。

 

八から十一までについて

 大学における秋季入学が実施された場合に生ずる高等学校卒業から大学入学までの期間(以下「ギャップ期間」 という。) における学生の活動等の在り方については、今後、各大学等において検討が行われるものと承知しており、政府としては、その検討状況を踏まえつつ、ギャップ期間が多くの学生にとって有意義なものとなるよう、必要な経済的支援策等の在り方について検討してまいりたい。

 

十二について

 政府としては、お尋ねの小学校、中学校及び高等学校における秋季入学への移行については、秋季入学を導入し、又はこれに移行する大学の数等が不明であり、大学における秋季入学の実施が社会に与える影響が明確ではないことや、ギャップ期間が存在すればその期間中に学生が社会貢献活動等を体験することができるといった意義も考えられること等を踏まえると、慎重に検討すべき課題であると考えている。 


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