イラン産原油の禁輸及びホルムズ海峡の封鎖危機に関する再質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年二月二十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 前回提出した質問主意書への答弁を踏まえ、イラン情勢の緊張度が増していることから、更なる政府の認識を確認したく、次の事項について質問する。 

一 前回質問主意書二に対する答弁で、我が国のイラン産原油の輸入量について、これまでの経緯から今後も削減されていく方向であるとの認識を示されたが、今後のイラン産原油輸入の削減量及びスケジュールについて見通しを示されたい。 

二 日本がイラン産原油輸入削減の制裁措置を執ることによって、イラン経済及びイランの強行的な姿勢に対して、どのような影響を与えるものとお考えか、見解を伺う。 

三 前回質問主意書六にて、ホルムズ海峡が封鎖された場合の日本への影響について政府の見解を質したところ、国際エネルギー機関加盟国と協調しつつ国内備蓄している石油を放出するなどの措置を講ずることにより、石油の安定供給の確保を図る、との認識を示した。国内での原油備蓄量はどの程度存在し、どの程度の期間賄えるか、またその備蓄量で充分対応できるものとお考えか示されたい。 

四 前回質問主意書七において、不測の事態に備えた原油の代替調達先への働きかけについて質したが、政府は最悪の事態を想定しているのか。イランは英仏の石油会社への原油輸出停止を行い、イラン産原油依存度が高い各国が代替調達先の確保に向けて奔走するなか、日本の対応は鈍すぎるのではないか、政府の認識を示されたい。 

五 ホルムズ海峡が封鎖されることを想定し、政府はペルシャ湾への海上自衛隊派遣の可能性について検討を始めたとされる。タンカーの護衛や機雷の除去などが主な役割として考えられているようだが、政府はペルシャ湾での海上自衛隊の活動は可能だとお考えか見解を示されたい。 

六 五に関連して、イラン情勢やホルムズ海峡がどのような状態になった時に、海上自衛隊が派遣されるものと想定しているか、政府の見解を示されたい。 

七 前項に関連して、今後、ペルシャ湾への海上自衛隊派遣を想定し、法改正も視野に入れ検討されているか、政府の認識を示されたい。 

八 玄葉外務大臣は会見にて、ホルムズ海峡が封鎖された場合の迂回パイプラインを活用した原油輸入を検討している考えを明らかにした。迂回パイプラインは選択肢として活用可能であるのか、また輸送能力はどの程度になると見積もられているか、見解を示されたい。 

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
イラン産原油の禁輸及びホルムズ海峡の封鎖危機に関する再質
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第102号
平成24年 3月 6日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 イラン産原油の禁輸及びホルムズ海峡の封鎖危機に関する再質 に対する答弁書

一について

 我が国のイラン産原油の輸入は過去5年間で約40パーセント削減されており、政府としては今後も削減されていく方向であると認識している。
 イラン産原油の輸入への対応については、国際社会の対応及びこれを受けたイランの情勢を注視しつつ、また、原油市場や我が国の経済に与える影響をできる限り回避することが重要であるとの認識の下、適切に対応していく考えである。

 

二について

 我が国によるイラン産原油の輸入への対応がイラン経済等に与える影響について、現時点で予断することはできないと認識しているが、我が国はイランの核問題に対する国際社会の深刻な懸念を共有しており、国際社会と連携し、イランに対して外交的に圧力を加えつつ、同問題の平和的な解決に向けて努力していく考えである。

 

三について

 御指摘の 「充分」 の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成23年12月末現在の我が国の原油の備蓄について、国家備蓄に係る原油の保有量が5012万キロリットル、民間備蓄に係る原油の保有量が1772万キロリットルであり、前年の石油の一日当たり純輸入量の126日分に相当する。これは、昭和49年11月18日に国際エネルギー機関第一回理事会において採択された 「国際エネルギー計画に関する協定」 に基づき、同機関加盟国が維持すべきとされる前年の石油の一日当たり純輸入量の90日分の備蓄を上回る水準にある。

 

四について

 御指摘の 「最悪の事態」 の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国は、エネルギーの安定供給の確保の観点から、産油国に対して、相手国の要望に応じた投資促進、技術協力等を行い、良好な二国間関係の構築に努めている。
 例えば、本年1月に、玄葉光一郎外務大臣及び柳澤光美経済産業大臣政務官 (当時) がそれぞれサウジアラビア等の中東産油国を訪問し、再生可能エネルギー、省エネルギー等のエネルギー分野における協力等について意見交換を行うとともに、エネルギーの安定供給の確保に向けた働きかけを行い、また、本年2月に開催された第11回目サウジアラビア合同委員会において、原油の安定供給を含むエネルギー分野における両国間の協力の継続を確認するなどの対応を行っている。

 

五から七までについて

 イランの核問題をめぐる情勢への対応については、平和的・外交的解決に向け、国際社会と協調し、政府全体としてこれに当たるべきであると考えており、現段階において自衛隊が何らかの対応を行う必要がある状況にあるとは認識していないが、仮に、そのような必要が生じた場合には、過去の事例や諸情勢を踏まえつつ、適切に対応することとなると考えている。お尋ねについては、前提となる現地の具体的な状況や我が国周辺の情勢等も踏まえて検討することとなる。

 

八について

 ホルムズ海峡を迂(う)回する原油の輸送手段として現在使用されているパイプラインとしては、サウジアラビアのアブカイクと紅海を結ぶ東西パイプラインがあると承知している。
 米国エネルギー情報局によれば、同パイプラインの現在の輸送量は日量約200万バレルと推定されているが、ホルムズ海峡が封鎖された場合に同パイプラインの輸送量がどの程度になるかは必ずしも明らかでない。


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