若年層における選挙の低投票率に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年二月二十一日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 他の世代に比べ、若年層の選挙の投票率が低いことが顕著になっており、特に二〇代の投票率は毎回、全世代を下回っている。これは今に始まったことではなく、以前からも同じような現象が続いており、年齢による社会的な要因や政治意識、政治との関わり、政治不信、情報不足等が要因とされる。

 しかし、少子高齢社会が進む中、投票数で見ると、若年層とその他の世代の格差は大きく広がっていることになり、若年層が抱える問題や意見が政治に反映されにくい状況になっていると指摘される。

 一方で、ブログやツイッター、フェイスブック等、インターネットを通じて、以前よりも若年層にとって政治が身近に感じられる機会が多くなってきたことも事実である。

 政治による世代間格差を生じさせないためにも、多種多様な世代からの様々な声を受け止め、政策に反映させていく為に、若年層の選挙への参加を促すような環境づくりが必要であり、若年層の投票率の上昇こそが全体の投票率の底上げに繋がっていくものと考える。

以上を踏まえ、以下の事項について質問する。

 

一 現在の若年層の低投票率に関し、政府はどのように認識され、問題があるとお考えか見解を示されたい。 

二 投票率が低いことで、若年層自身がどのような不利益を受けるものと考えられるか、政府の見解を示されたい。 

三 若年層の政治への関心の低さについて、その原因をどのように分析し、投票率を上げるにはどのような取組みが必要だと認識しているか、見解を示されたい。 

四 先進諸国の若年層投票率と比較し、日本の若年層の投票率が低い理由についてどのように認識しているか示されたい。 

五 若年層投票率が高い他国にて行われているような義務投票制度や郵便投票制度、電子投票制度等といった取り組みに関して、どのように認識しているか、見解を示されたい。 

六 若年層では、特に選挙期間における情報量が少なく、インターネットを利用した情報公開を望む声が多く聞かれる。現在は公職選挙法で禁止されているインターネットの利用を選挙運動で解禁した場合、若年層の投票率は上昇するものと考えられるか、政府の見解を示されたい。 

七 日本では教育において、政治経済社会の仕組みに関する学習は行ってきたが、いわゆるシティズンシップ教育と呼ばれる、政治参加や社会参加、ディベート、他者との合意形成の有り方等といった学習様式は、あまり実践されてこなかった。このイギリスでも導入されているシティズンシップ教育について政府の見解は如何。 

八 国の政策や政治家の行動において、若年層投票率が低いことにより、若年層が期待するような政策の優先順位が後回しにされ、より投票率の高い、高齢世代に対する施策が充実されてきたと一般的には言われているが、この投票率が及ぼす、政策的な意思決定への影響について政府はどのように認識されているか、見解を示されたい。 

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
若年層における選挙の低投票率に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第90号
平成24年 3月 2日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 若年層における選挙の低投票率に関する質問 に対する答弁書

一について

 若年層の投票率については、例えば、平成21年に執行された衆議院議員総選挙においては全体の投票率が69.28パーセントとなっているところ、選挙後に総務省が行った抽出調査 (以下 「抽出調査」 という。) では20歳から24歳までの投票率は46.66パーセントとなっており、また、平成22年に執行された参議院議員通常選挙においては全体の投票率が57.92パーセントとなっているところ、抽出調査では20歳から24歳までの投票率は33.68パーセントとなっており、いずれも他の世代に比較して低い投票率となっている。若年層の投票率を含め一般に投票率が低いということについては、民主主義の健全な発展の観点から、遺憾なことであり、憂慮すべきことと受け止めている。

 

二及び八について

 年代による投票率の違いによる若年層への 「不利益」や 「政策的な意思決定への影響」 について一概にお答えすることは困難であるが、政府としては、国民全体の福祉の向上に取り組むべきものと考えている。

 

三について

 総務省が平成23年4月から12月までに開催した 「常時啓発事業のあり方等研究会」 の最終報告書においては、20歳代の有権者の投票率を踏まえて、「若い有権者の投票率が低いのは、他の世代に比べて、政治的関心、投票義務感、政治的有効性感覚が低いからであると考えられ、・・・その一因として、有権者になる前の学校教育においては、政治や選挙の仕組みは教えても、政治的・社会的に対立する問題を取り上げ、関心を持たせたり、判断力を養成するような教育がほとんど行われていないことが挙げられる」 と指摘され、「国として取り組むべき具体的方策の例」 として、「選挙事務への協力の拡大」 や 「大学との連携の推進」 等により 「若者の政治意識の向上」 を図ることや、「出前授業・模擬投票の推進」 等により 「将来の有権者である子どもたちの意識の醸成」 を図ること等が提言されている。
 政府としては、今後、若年層の投票率向上のために、このような取組を積極的に進めてまいりたいと考えている。

 

四について

 若年層の投票率を含め選挙の投票率については、国によって政治や選挙の制度が異なることなどから、各国間で単純に比較できないものであり、お尋ねにお答えすることは困難である。

 

五について

 御指摘の 「義務投票制度」 については、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」 と規定する憲法第十五条との関係からも、慎重な検討を要するものと考えられるが、いずれにせよ、お尋ねの 「若年層投票率が高い他国にて行われているような義務投票制度や郵便投票制度、電子投票制度等といった取り組み」 については、選挙手続の中核である投票方法の在り方の問題であることから、各党各会派において十分に議論していただくべきものと認識している。

 

六について

 選挙の投票率については、選挙時の政治状況、有権者の政治的関心の度合いなど、様々な要因が影響するものであることから、お尋ねの 「インターネットの利用を選挙運動で解禁した場合、若年層の投票率は上昇するものと考えられるか」 について、一概にお答えすることは困難である。

 

七について

 お尋ねの 「シティズンシップ教育」 が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、我が国においては、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うため、学習指導要領に基づき、小学校、中学校、高等学校等を通じ、主に社会科や特別活動等で、民主政治の仕組みや選挙の意義について理解させるとともに、ボランティア活動等の社会参加や、学級活動や生徒会活動等における課題解決等の活動を行うこととしているほか、各教科等を通じて、説明や論述、討議などの言語活動を重視しているところである。


馳浩の質問主意書メニューへ戻る


メールをどうぞ


ホームページへ