オウム真理教に対する観察処分の延長に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年二月七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 公安審査委員会は、オウム真理教に対する団体規制法に基づく観察処分の三年間延長措置を決定した。無差別大量殺人行為に及ぶ危険な要素を保持しており、地域住民に脅威や不安感を抱かせていることから、観察処分の継続は必要と認められた。昨年末には手配中の平田信容疑者が出頭したように、教団が引き起こした事件の全容解明には至っておらず、テロ組織は依然として存在していることから、教団への監視体制は決して緩めることなく更なる警戒が必要である。

以上を踏まえ、次の事項について質問する。

 

一 観察処分の延長にあたり、公安調査庁は教団に資産や負債に関する資料提出を義務付けるよう求めていたが、公安審査委員会によって認められなかった。その理由について、説明されたい。 

二 平田容疑者が十六年間も逃亡を続けられた背景として、協力者や支援組織による手助けがあったことは明らかである。つまり依然として事件を引き起こしたテロ組織が潜伏していると想像できるが、その実態について、政府はどのように認識しているか見解を示されたい。 

三 法務省は、共犯者が公判中の場合は原則として、判決確定までの期間は死刑執行を見送るよう運用してきたものと理解しているが、平田容疑者の逮捕によって今後、松本死刑囚への執行が遅れる等の影響はあるのか、見解を示されたい。 

四 オウム真理教の後継団体である「アレフ」「ひかりの輪」に対する政府の認識をそれぞれ示されたい。 

五 多くの被害者を出したテロ組織であり、未だに教団後継団体の施設周辺住民は不安を抱え暮らしている。絶対に風化させてはいけない事件であるが、厳しく監視を行っていかなければならないはずの警察組織が、今回の平田容疑者の逮捕にあたり、対応の拙さを露呈した。取り締まるべき警察が緊張感のない不適切な対応を行ったことに、政府はどのように受け止めているか見解を示されたい。 

六 施設周辺住民の不安を取り除くためには、後継団体への更なる監視と規制を強める必要があると考える。現行の団体規制法だけでオウム根絶による住民の脅威と不安を除去することが出来るとお考えか、新規立法も検討すべきでないか、政府の見解は如何。

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
オウム真理教に対する観察処分の延長に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第52号
平成24年 2月17日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 オウム真理教に対する観察処分の延長に関する質問 に対する答弁書

一について

 公安調査庁長官において、オウム真理教に対する観察処分(無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第百四十七号。以下「団体規制法」という。)第五条第l項に規定する処分をいう。以下同じ。)の期間を更新する処分を請求するに当たり、団体規制法第二十六条第一項に基づいて公安審査委員会に提出した更新請求書に、団体規制法第五条第五項において準用する同条第三項第六号に基づいてオウム真理教が公安調査庁長官に報告しなければならない事項について、「本団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階を報告させること」、「本団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名、契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名を報告させること」、「本団体(その支部、分会その他の下部組織を含む。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず、実質的に本団体が経営しているものをいう。) の種類及び概要、事業所の名称及びその所在地、当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には、当該電磁的記録媒体の保管場所)を報告させること」及び 「本団体に資産及び負債に関する報告をさせるに当たっては、その裏付け資料として、本団体の取引の内容が分かる四半期ごとの総勘定元帳又は現金・預金の取引を記録した書面・・・を添付させ、かつ、当該取引が本団体の活動に関するいかなる意思決定に基づくものであるかを明らかにして報告させること」 を義務付ける必要がある旨の意見を記載していたところ、公安審査委員会による審査の結果、平成24年1月23日付け決定においては、お尋ねの 「理由」 についての記載はないが、「被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階」、「被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名、契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名」 及び 「被請求団体 (その支部、分会その他の下部組織を含む。以下、この項において同じ。) の営む収益事業 (いかなる名義をもってするかを問わず、実質的に被請求団体が経営しているものをいう。) の種類及び概要、事業所の名称及びその所在地、当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所 (その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には、当該電磁的記録の保存媒体の保管場所) 」 のみが当該事項とされたものである。

 

二について

 御指摘の「事件を引き起こしたテロ組織」がオウム真理教を指すのであれば、オウム真理教については、その中心として活動する内部組織である「Aleph(アレフ)」の名称を用いる集団(以下単に「Aleph」という。)や「ひかりの輪」の名称を用いる集団(以下単に「ひかりの輪」という。)はもとより、その余の集団や個人の活動実態等についても鋭意解明に努めているところである。

 

三について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。

 

四について

 オウム真理教については、Aleph及びひかりの輪は、無差別大量殺人行為の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)の影響下にあるなど依然として危険性を保持しているところ、Alephについては、松本への回帰を強めながら、また、ひかりの輪については、外形上、松本の影響力を払拭したかのように装いながら、それぞれ勢力拡大に向けた活動等を積極的に展開しているものと認識している。

 

五について

 平成23年12月31日、平田信が警視庁に出頭した際、当初その対応に当たった警察官がこれをいたずらとして処理したことは不適切であったと認識しており、重く受け止めている。警察庁において、都道府県警察に対し、そのような対応が再び行われないようにするための職員の指導等が適切になされるよう指導を行っているところである。

 

六について

 政府としては、団体規制法に基づき、オウム真理教に対する観察処分を適正かつ厳格に実施することによって、その危険性の増大を抑止しており、その結果、国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与しているものと考えている。


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