子供の引き渡しによる直接強制の執行に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年一月二十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 一月九日付の読売新聞の朝刊記事によると、離婚した夫婦間での紛争が起きた場合に、家庭裁判所の審判に基づき、裁判所の執行官によって子供を離婚した一方の親に引き渡す「直接強制」が全国で年間一二〇件行われていることが明らかになった。

 子供を物と同じように取り扱う、直接強制の執行は、以前は違法と認識されていたが、近年、親権をめぐる紛争が増えていることを背景に急増しているとされる。直接強制の運用や執行状況によっては、子供が傷つき、トラウマになるようなケースも報告されており、運用改善や執行に関するルール作りが必要と考える。

従って、以上を踏まえ、以下質問する。

 

一 以前は、「物と幼児は同一視出来ない」との認識のもと、直接強制を違法とする裁判例もあり、殆んど運用はなされて来なかったが、近年、直接強制の運用が広がってきていると聞く。直接強制の運用が広がった理由と、その背景について政府の認識を示されたい。 

二 直接強制の執行により、執行官と子供の引き渡しを求められた片方の親との間にトラブルがあったケースはどれくらいあるのか、またその主な事例について示されたい。 

三 直接強制に関して、子供に対して執行する場合の具体的なルールが定められていないため、執行官の裁量に偏ってしまい、対応如何によっては、子供の心情に大きな影響を与えてしまう危険性もあることから、執行官の権限や役割を明確にする必要が急務だが見解は如何。 

四 子供への影響が懸念される一方、裁判所の判断に実効性を持たせる手段として必要との声もあるが、政府は子供に対する直接強制は必要だとお考えか見解を示されたい。 

五 直接強制が必要だとしても、子供を物と同等に扱うような考えで、子供の生活環境や心情に配慮をせず、強引に執行することは、子供の人権を無視するような行為であり、一生に残るような深い傷を子供に負わせてしまうことになる。直接強制の執行に関するルール作りについて、立法化を含めた対策を考えているのか、政府の見解を示されたい。 

六 子どもの引き渡しに関する問題を根本的に解決するには、親権をめぐる紛争を未然に防ぐような取り組みが必要である。離婚による子供の引き渡しを求める審判の申し立て件数が十年前の四.五倍の一二〇三件と急増していることからも、子供の最善の利益を考える上で、別居親との面会交流や、親権の決定、養育費の支払い、そして養育のガイダンスを受けさせなければ離婚が出来ないような仕組みも必要ではないか、政府の見解は如何。また、そのことに関する立法化も検討されているのか、示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
子供の引き渡しによる直接強制の執行に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第22号
平成24年 2月 7日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 子供の引き渡しによる直接強制の執行に関する質問 に対する答弁書

一について

 子の引渡しの強制執行に関していわゆる直接強制を行った事例があることは承知しているが、お尋ねの 「直接強制の運用」が広がってきているか否かについては、過去に統計を取っていないため、政府としては承知していない。

二について

 お尋ねの事例については、政府としては把握していない。

三から五までについて

 子の引渡しの強制執行の方法やこれに関する具体的な制度の創設等については、御指摘のような観点等を踏まえた慎重な検討が必要であると考えている。

六について

 現行法下においても離婚の際には子の親権者の決定が必要とされているところ、これに加えて離婚後のいわゆる面会交流や養育費の支払等も適切に取り決められることが望ましいものと考えているが、御指摘のような取決め等がなければ離婚ができないような仕組みを設けることとした場合には、事案によっては、その取決めのための話合い等に時間を要し、その取決め等がないまま事実上の離婚状態となる夫婦が増える可能性もあることなどから、そのような仕組みの立法化については、慎重な検討が必要であると考えている。


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