イラン産原油の禁輸及びホルムズ海峡の封鎖危機に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年一月二十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 イランの核開発問題に対する制裁措置として、EUはイラン産原油の全面禁輸を決定した。米国のイラン制裁措置に同調したものであり、対イランへの国際的な圧力が強まっている。

これに対し、イランは強硬姿勢を崩さず、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖など対抗措置を示唆し、イランを巡る軍事的な緊張関係が一気に高まった。イランから全輸入量の約十%の原油を輸入している日本も足並みを揃えるよう求められており、代替原油の調達等、国際的な協調関係とエネルギー安全保障の狭間で大きな影響を受けることが懸念されている。

以上を踏まえ、以下質問する。

 

一 欧米各国がイランに対する制裁強化を行う中、伝統的な親日国と言われ独自の友好関係もこれまで築いてきたイランとの外交関係について、今後日本としてどのように対応していく考えか、政府の見解を示されたい。 

二 安住財務大臣は、ガイトナー米財務長官との会談で、イラン制裁に協力し、段階的にイランからの原油輸入量を削減していく方針を示したが、これは日本政府としての統一見解で宜しいか、示されたい。 

三 安住財務大臣が示したように、段階的に原油輸入量を削減するならば、最終的にはEUの制裁措置のように全面的な禁輸という方向に持っていくことも必要だと認識しているのか、見解を示されたい。 

四 日本がイラン産原油の輸入量を削減したとしても、イランからの原油輸入量一位の中国や大口のインドが削減措置を行わなければ、制裁効果は薄いとも言われるが、政府はイランを巡る中国の動きについてどのように認識し、対応が必要だとお考えか見解を示されたい。 

五 イランの軍事能力的にホルムズ海峡を封鎖することは可能なのか、また封鎖するのであれば、どのような方法を執るものと認識しているか、政府の見解は如何。 

六 万が一、イランによりホルムズ海峡が閉鎖された場合、日本の原油輸入量全体において、どの様な影響を受けるものとお考えか、またそれにより日本の経済に対してどのような打撃を被ると認識しているか示されたい。 

七 イラン産原油の依存度が高いイタリアやギリシア、スペイン、また報道によれば中国も有事の際の代替原油の確保に向けて、産油国に対する働きかけを始めたとされている。日本は不測の事態や、イラン産原油輸入を削減した場合に備えて、代替調達先を探す等の独自の取り組みは行っているのか見解を伺う。 

八 原子力発電所の停止により、原油需要が増していることから、エネルギーの安定的確保は重要課題であるが、国際情勢に左右され、世界的なエネルギー争奪戦の様相の中、日本にとって今後、国際情勢に関係なく安定的に自前のエネルギーを調達できるような戦略が必要ではないか、政府の見解を示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
イラン産原油の禁輸及びホルムズ海峡の封鎖危機に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第20号
平成24年 2月 7日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 イラン産原油の禁輸及びホルムズ海峡の封鎖危機に関する質問 に対する答弁書

一について

 政府としては、我が国とイランとのこれまでの伝統的な関係に鑑みれば、両国の二国間関係は重要であると認識している。同時に、イランの核問題に対する国際社会の深刻な懸念を共有しており、イランに対して外交的に圧力を加えつつ、国際社会と連携し、同問題の平和的な解決に向けて努力していく考えである。

二について

 お尋ねの安住淳財務大臣の発言は、一についてで述べた考えに基づき、イランの核問題について国際社会が協調して対応していく必要があることや、米国の国防授権法の日本経済への影響を回避すべきであることを踏まえ、我が国のイラン産原油の輸入について、これまでの経緯から今後も削減されていく方向であるとの認識を述べたものである。

三について

 イラン産原油の輸入への対応については、一についてで述べた考えに基づき、国際社会の対応及びこれを受けたイランの情勢を注視しつつ、また、原油市場や我が国の経済に与える影響をできる限り回避することが重要であるという認識の下、適切に対応していく考えである。

四について

 イラン産原油をめぐる中国の対応については、例えば、本年1月19日の中国外交部定例記者会見において、劉為民報道官が、イランの核問題を解決する根本的方法は対話及び協議並びに協力であると考えている、ひたすら制裁や圧力を加え、ひいては武力を用いて威嚇することは、問題を解決することにつながらないばかりでなく、問題を複雑化させるものである旨発言したと承知しているが、今後の対応については予断することはできないと認識している。このため、イランの核問題の平和的な解決に向けて、国際社会が協調して対応していく必要があるとの認識の下、様々な機会を捉えて、中国を含む関係国と議論していく考えである。

五について

 他国の軍事能力に関するものであり、その個別具体的な内容について明らかにすることは、事柄の性質上、差し控えたい。

六について

 御指摘の 「閉鎖」 の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国が輸入する原油の約8割がホルムズ海峡を経由して輸送されていることから、同海峡の航行の安全は、我が国におけるエネルギーの安定供給の確保にとって極めて重要であると認識している。

 このため、一般論としては、ホルムズ海峡を経由した原油の輸入ができなくなる事態が生じた場合、我が国への原油の供給が減少するとともに、世界的に原油価格が上昇するなど、我が国の経済が影響を受ける可能性があると考えている。仮に、そのような事態に至った場合には、国際エネルギー機関加盟国と協調しつつ国内に備蓄している石油を放出するなどの措置を講ずることにより、石油の安定供給の確保を図り、我が国の経済に対する影響が最小限となるよう適切に対応していく考えである。

七について

 エネルギー資源の大部分を輸入に依存する我が国にとって、エネルギーの安定供給は必要不可欠であることから、産油国に対して、相手国の要望に応じた投資促進、技術協力等を行い、良好な二国間関係の構築に努めている。

 例えば、本年1月には、玄葉光一郎外務大臣及び柳澤光美経済産業大臣政務官がそれぞれサウジアラビア等の中東の産油国を訪問し、再生可能エネルギー、省エネルギー等のエネルギー分野における協力等について意見交換を行うとともに、エネルギーの安定供給の確保に向けた働きかけを行ったところである。

八について

 エネルギー政策の見直しに当たっては、国産エネルギーである再生可能エネルギーの導入促進、対外依存度の低下につながる省エネルギーの推進等により'国際情勢の影響を受けにくい安定的なエネルギーの需給構造を構築することが重要であると認識しており、こうしたエネルギー安全保障の観点も踏まえ、本年夏を目途に、「革新的エネルギー・環境戦略」 を策定する予定である。 


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